知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

周知例を技術水準・経験則等で補足した事例

2010-11-20 07:43:36 | Weblog
事件番号 平成22(行ケ)10048
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年11月10日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

(7) 原告の主張について
 以上に対して,原告は,本件周知例には水平方向の力に抵抗できることが記載されていないから,そこに記載された発明が耐力壁ではないし,開口を有するパネルが耐力壁とはなり得ない旨を主張する。

 しかしながら,本件周知例に記載の発明は,主として鉛直方向の力の支持を念頭に置いているとはいえるものの,本件周知例には耐力壁となり得ることや,そのために他の補強材を含んでもよい旨が記載されている
 しかも,前記のとおり,本件の出願当時,枠組に構造用合板を張ったものが耐力壁として用いられることは,一般的な文献にも記載があり,2×4工法における耐力壁に開口を設けることを記載し,その際には強度(水平方向の力に対するものを含む。)に留意すべきことを指摘する特許出願も公開されていたほか,経験則に照らしても,上記の構造を有する耐力壁の強度は,枠組の部材及び構造用合板の材質,厚さ及び使用形態により自由に設定できることは,明らかであるから,本件周知例に記載の発明が水平方向の力に対する強度も確保していることもまた,明らかである。