知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

分割出願の基準明細書等

2008-04-24 06:26:54 | Weblog
事件番号 平成13(行ケ)321
裁判年月日 平成14年12月12日
裁判所名 東京高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 塩月秀平

『第5 当裁判所の判断
 1 分割出願の適否を判断する基準となる「原出願の明細書又は図面」について
 (1)特許法44条1項は、「特許出願人は願書に添付した明細書又は図面について補正をすることができる期間内に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。」と規定する。この規定は、原出願の明細書又は図面に二以上の発明が記載されていること、及び、分割出願の対象とされた発明が上記二以上の発明のいずれかであることを適法な分割出願の要件として定めたものであると解されている。
 そして、二以上の発明を包含する原出願の明細書又は図面とは、本来、「分割直前の原出願の明細書又は図面」であるが、原出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(当初明細書)について補正がされた場合も、当初明細書に記載された発明は補正によりこれを分割直前の原出願に係る発明となし得たものであるから、結局、分割出願の適否は、分割出願に係る発明が当初明細書に記載されていたか否かを基準とすべきことになる。これを本件発明についていえば、平成3年5月16日の本件分割出願の適否は、本件分割出願に係る発明が本件原出願の当初明細書に記載されていたか否かを基準として決すべきである。

 本件分割出願が特許法44条1項の規定に適合する適法な分割出願であるか否かの基準とされるべきが本件原出願の当初明細書であることについては、被告もこれを争っていない。

 (2)ところで、分割出願の目的は、原出願に包含されてはいるが原出願に係る発明とは異なる発明を別の出願として出願することにあるが、もともと、原出願に係る発明と分割出願に係る発明とは、いずれも原出願の当初明細書又は図面に記載された発明なのであるから、両者に共通する構成が存する場合の多いことは容易に理解し得るところである。そうであれば、分割出願を行うに当たり、分割出願に係る発明と原出願に係る発明とが互いに異なる発明であることを明確にするために、原出願の明細書又は図面にも補正を加えて、分割出願に係る発明を排除する記載とすることも大いにあり得ることというべきである。そうすると、分割出願に係る発明が原出願の登録時明細書に記載されていないとしても、そのことから直ちに、分割出願に係る発明が原出願の当初明細書にも記載されていないといえるものではない。』