のら猫の三文小説

のら猫が書いている、小説です。
質問があれば
gmailのnaosukikan
まで連絡ください

次平の敗北 No.4

2012-12-10 18:29:40 | 次平の敗北

お恵の検討結果




お恵は、結婚当初とは違い、薬種問屋に通い、日中は家になかったので、一平の顔を見るとしようと誘ったり、秘技とかいって、突然一平のものを口に含み、一平を襲うような事はなくなった。お恵の方が帰りが遅く、一平は、女中が作った食事も食べるという事もあった。お恵は自分で料理を作りたがったが、一平は、自分に似合う事がする方がお恵さんらしいと言って、別に気にしないように言ってくれた。





料理屋集団は、料亭に類する高級店と中小規模の給食設備を持った弁当屋を含む料理店に分けて行く事になった。



人入屋は、事業部門が成長するにつれて、吸収されていったが、人入屋としての役割がある限り続けていく事になった。事業部門の事務が増えるに従い、人入屋の仕事が事業部門からの人員要求をこなす比率が増えていった。



事業部門は発展していたが、功一の西洋事情によると、西洋との設備の能力差は大きいものであるが、実際は西洋の設備そのものを今設備する事は出来ない。福岡藩での経験からいずれ 藩とか大きい組織の大量購入とともに、設備投資する事になっていくだろう。



先に見えない段階では、いずれにしても短期間の需要に合致した設備投資をしていった。お香名義の利益分配金内で投資していった。これは鴻池や各両替商との話で、お香が得た結論だった。



物産問屋は幕末の混乱期であったが、事業部門の需要もあり、一部は薬種問屋の人員を借りて営業を行っていった。三之助や京二の依頼で、長州への物資提供もしていた。物産問屋は、大坂と江戸だったが、西日本中心の薬種問屋の組織が役立っていた。



この混乱期に、鉄平とお香が、40代後半から50代前半に掛かっており、情報が入手しやすくなっていた。鉄平が薬種問屋の将来性を危惧して、投資せず。両替商との情報交換が出来やすい事や物産問屋への鴻池の出資と運用がほぼ同様で情報交換がしやすい状況であった事などが、よかった。

薬種問屋の将来と今後の研究をしていたお恵は、鉄平と忠助に向かって考えた事を説明していた。 




お恵「いずれ お父さんが考えているように、薬種そのものは消えていくとは言えないけど、限りなく小さくなるでしょう。今の薬種問屋は薬品問屋に替わらざるを得ません。現に薬種ではなく、処方した薬、医院に納める西洋からの医薬品などが大きくなっています。」

鉄平「それは分かっている。丸薬なども作っているが、それなりに売れている。日持ちもしないし、西洋からの薬が本格的に入ってくると、どうなるか分からない。忠助の言うように江戸近郊でも作っているが、大きな設備投資には危険だけど、少しは投資する事も必要かもしれない。」

忠助「今は先が読めません。両替商なども分からないと言っている。でも今は売れてます。」 


お恵「色々考えて何もしない事も、一つの選択肢です。」

鉄平「それではお前に頼んだ意味がない。」

お恵「いや 何もしない時との比較で、考えた方がよいと思うの。 私は一平さんとも今後の医療を話しているの。 時間がどの程度かかるかは分からないが、漢方医はなくっていくのじゃいかとの意見なの。」

鉄平「やるだけじゃないんだ。」

お恵「茶化さないで しかし時間が読めないし、今の漢方医が突然消えるわけでもない。」

鉄平「それはそうだ。」

お恵「薬種問屋の命は限られてきている。薬屋、薬問屋に看板を書き換える日がくるが、時間が分からない。しかし多くの漢方医が処方する薬は、以前として漢方だし、西洋からの薬も入ってくるという状態がある程度続くと考えているの。」

鉄平「でどうする。」

お恵「薬品問屋への看板を書き換える準備として、次平先生の各医院の近くに小規模の薬品の製造所をつくるの。これは西洋からの薬を中心として、症状に合わせて処方して貰うの。それを薬種問屋が販売するの。 そして江戸と長崎は中規模に拡大するの。 一方 西洋からの薬を、私たちがどのように定期的に入手が可能かどうか、検討するの。 そして最後のこれらの製造所が西洋からの薬が一杯入って、要らなくなった時への転換の研究として西洋の化学を検討する所をつくるの。」

鉄平「それはどの程度の資金がいると思う。」

お恵「今ある施設の拡充だからそんなにいらないの。試算結果では、すべてで1000両程度だと思うの。纏めたものをみてよ。」

鉄平「それくらいなら、今年の分配金でてきるか 忠助」

忠助「出来ると思います。」

お恵「全面的に西洋の薬が入るというより、段階的に少しずつ入り、ある段階で加速すると思うのだけど。」

鉄平「俺もそう思う。今は少しずつの段階だけど。」

お恵「少しつづ売り上げと利益が減ってきて、薬品問屋へ切り替わっていって、西洋薬を販売すると売り上げは上がるが、同じものを売るので利益は下がると考えているの。その間そこで西洋薬を混合した処方薬を医院て考えてもらって、薬種問屋に付随する設備を拡張した設備で作って当分の間でも薬種問屋で売るの。完全に西洋薬が入ってきても、従来の漢方医は直ぐに使用できないから、時間稼ぎはできる。 その後はその拡張した設備を使って何かできるか探すの。薬品問屋になっても西洋の薬は必要けど、先が読めないし、入手できるかどうかは今後だと思うの。

それにこれが重要な事だけど、お父さん怒らないでね。次平先生の医院の問題がある。一平さんにも聞いたけど、一言でいうとあり得ない奇跡の医者なの。何でも直せそうな名医、各藩や禁裏にも受け入れられたお医者様、健康や食事指導や予防にも関心があり実践するお医者様、貧しい人もお金持ちも診察するお医者、優秀な弟子を数多く育てるお医者様、

それぞれに該当するお医者様はいてもこれらをすべて備わるお医者様は、多分次平先生の後は出ないだろうと思うの。しかもお父さんは次平先生の医院には、今後とも協力していくでしょう。次平先生も永遠ではない。亡くなった直後から少しづつ替わり、ある時期分裂すると思う。

これの動きに対応して次平先生の医院から脱却するか分裂した各医院との協力を進めて行くかの選択を迫られると思うの。これはそれまでの時間稼ぎなの。色々な観点から見ると時間稼ぎでもした方が良いというのが私の意見なの。薬草園の転換はお父さんも考えているけど。あまり大したものはできないと思うから料理屋への野菜などを考えても面白いと思うの。 そしてこれは最終段階だけど、薬品問屋への転換で、余剰の人が出れば、お母さんの物産問屋への出店として一部を貸すの。大体こんな事考えたのだけど。 何もしない事との比較で考えてね。」

鉄平「忠助 どう思う。」

忠助「何もしない時と比較すれば、明らかに利益はでます。漢方医が直ぐになくなる訳ではなく、みんなが使いこなせないので、その間がある。時間稼ぎの対策として割り切った対策をする。そうするしかないと思います。」

鉄平 「分かった。大坂の源三や各地の番頭の意見も聞いてみよう。よく考えた。忠助 手紙を書いて、連絡してくれ。次平先生の医院とも連絡を取って。お香とも話してみよう。」



お恵は「もうこんなに遅くなった。今日は、一平さんとする日だ。早く帰ろう」と言って帰っていった。

鉄平「忠助 お前 どう思う。本音の所。」

忠助「お店の跡取りですね。お嬢さんは。 いずれ 一平先生に頼む必要がありますよ。 ただお香様の物産問屋もいずれ見て貰うかもしれませんね。 その上お恵さんは言わなかったが、我々の薬種問屋の各店の問題でも、明確な旦那の跡継ぎが出ないと動揺しますよ。旦那は、識見や見通しで各店を指導してきた。実際は、各店の番頭が運営していても、旦那の識見や見通しを信頼しているからです。

鉄平「鉄一じゃ無理だろうな。お前や源三、順三などと付き合うのは、辛いだろうな。新しい事業部門が大きくなればいいがな。その事もお香と話してみるよ。 ただあいつ お香に似て一平さんとやる事が基本だから、江戸の医院の筆頭は今は石原先生だったか、さりげなく一平さんの事情聞いてみるよ。」

忠助「そんな事言わないで下さい。今の話がお嬢さんから出たと分かれば、各店の番頭も多分 お恵さんなら従うと思いますよ。」



忠助は、各店の番頭に手紙を出した。その一方 鉄平の承諾を取り、お恵を回船問屋などの出入り業者や両替商などの交渉の場に同席させたり、一緒に出かけるようになっていった。薬種問屋の会合にも連れて行った。お恵の評判は悪かった。お恵も薄々知っていたが。「あの顔で男食うか お恵さん。」などと言われているとは思わなかった。お恵の薬種に対する知識や情勢分析などを聞いて、「跳ね返り娘」から「やはり 鉄平さんとお香さんの娘」に変わっていった。忠助は江戸の鴻池の出店にも、お香を連れて挨拶に行った。吉二郎が、息子を連れて江戸に来ていて、会いたがっているので、時間の調整を頼まれた。





コメントを投稿