のら猫の三文小説

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次平の復讐 No.20

2012-11-26 10:37:56 | 次平の復讐

次平と鉄平、京に着く




時折、患者たちが、宿に次平を訪ねてきたし、次平や中山は診察機会が減っている事の反動から丁寧に応対して遅れがちであったものの、大きな遅れはなく、次平らの一行は、京に入った。

幸三が指定した宿は大きな宿であった。次平を訪ねて、若い女が待っていると言われ、次平は会った。どこか見かけた風貌のある面影であった。おゆきであった。あれから3年近くが過ぎておゆきは17才になっていた。

時次郎は、色々な情けを知り、食って掛かるような態度がすっかり影を潜め、色々な目配りが出来るようになり、再び網元に復帰し、下関の各料亭に魚を納めて、順調にいっている。三之助は長州内の視察に訪れた時に、おゆきは、三之助から次平らの旅を聞き、時次郎を説得して、急いできたのだという。時次郎が最後に「結局 お前はさらわれた。先生は心をさらっていった。」と言った事は言わなかった。 


おゆき、次平の世話をする。



その晩には、三之助から手紙が来ていた。時次郎からの手紙も同封されていた。「長州での京二と三之助の状況が詳しく説明されており、京二は結局従来の御殿医では治まらず、長州一体の保健や栄養などに目配りをするようになり、活躍している。最後に時次郎とおゆきの事が触れていた。時次郎は今や 大網元になっており、かなりの漁場を差配している。そして嬉しい事に単に網元だけではなく付近一帯の民生にも尽力してもらっている。

おゆきは身体はすっかり良くなったが最近ぼんやりする事が多くなり、先生の旅について詳しく聞いていた。」、同封する時次郎の手紙には、「おゆきだけでなく、私も先生に治療してもらった。生まれ変わったつもりで、人を支えられる存在になっていきたい。

ただおゆきは身体はすっかり良くなったが、心は先生が持っていってしまった。ここにおいておくと、おゆきは心のない人形になってしまう。おゆきに心を返してください。おゆきを先生の近くにおいてやって欲しい。」と書かれていた。 



その日から、次平の世話をおゆきが細々と面倒をみる事になった。おゆきに邪魔者扱いされて、鉄平らは京を散策する事が多かった。

そこで鉄平は、散策中に見付けた反物、焼き物、薬らを江戸、福岡、萩、長崎の各店に送る事とした。それぞれ人入れ屋とも相談して今後の参考にするようにとの手紙を別に出した。

宿に帰ると大坂の両替商の河内屋が鉄平に会いに来ていた。「私はさる大店に勤めておりました。今は名前を申し上げられませんが、その方も鉄平さんにお会いしたいと言っております。取り合えず、大坂に薬種問屋と物産問屋をもたれませんか? 萩に居られる源三さんにも相談したのですが、鉄平旦那とよく話をしてみると言われています。」、

鉄平は今朝 源三からの手紙が届いているのを、思い出した。源三からの手紙には、「河内屋の口上に加え、順三や三之助との相談した結果が書かれていた。河内屋の後ろに、鴻池がいる事と鴻池の隠居が、鴻池の幹部会で、鉄平を誉め、人を豊かにするのが、本当の商売だと誉めていた、今鴻池の当主は江戸に向かっており、江戸に半年程度滞在する予定である事などが書かれていた。

但し鴻池もどのまで信用していいのか、大坂に店を出すのはいいが、今我々が無理せずに出せる金額は、江戸の店の内情は詳しく分からないので、江戸の店が言ってきた千両を半分として、二千両程度です。その範囲で話を進める事が必要です。

萩の店は安定しており、気の利いたものを育っており、私が大坂へ行く事は可能です。鉄平旦那の判断に従います」との手紙と色々な情報や試算結果などが付けられていた。 

鉄平は待たせていた河内屋に言った。大坂に店を出したいとは、前から思っていました。但し、手前どもは、各地で店を立ち上げ、まだしっかり安定しているとは言い難い。いきなり大きな店はつくる事は難しい。」 

河内屋は言った。「萩の源三さんからのお手紙を読めば、手前が誰の意向で動いているのかもご承知でしょう。資金的なご心配は不要です。手前どもは五千両まで出せます。鉄平さんには、大坂である方に合って頂きたい。細かい話は、手前と源三さんで詰めて行きたい。多分源三さんは大坂に出てこられるのでしょう。」

鉄平はさすがに鴻池、油断ならないと思ったが、変に駆け引きしても適う相手ではないと思い、「手前は江戸に向かう次平先生のお供でついてきています。もうすぐ京を出立する事に思います。大坂往復するまでの時間はないかと思います。」

河内屋は、笑いながら言った。「次平先生の事は手前も聞いております。禁裏からの使者が今日、明日にも到着されると思います。次平先生は、心の病では有名なお方です。さる尊きお方は、心の病で苦しんで居られます。どうして京を素通りできるでしょうか。手前はもう一度参ります。」



この出会いが鉄平の飛躍の切っ掛けとなり、さる尊きお方との出会いは次平の将来を大きく変えた。





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