のら猫の三文小説

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次平の復讐 No.25

2012-11-28 17:23:42 | 次平の復讐

鉄平とお香はの仲は急速に進んだ。



男と女の仲に戻り、お香と鉄平は、定期的に話を続けていた。鉄平は京に出かけていたり中断もあったが、お香の事もあり、直ぐに戻ってきていた。

「じゃ今や あんたはお金持ちなんだ。折角私のひもにしてあげようと思ったのに。」とお香は言った。

鉄平はお香に言った。「所帯を持とう。お前の髪結いは、人を雇ってやらせば、いい。そして 旅に出よう。あれの拘わっている事業はここ江戸だけじゃない。長崎、福岡、萩、松江そして大坂に広がっている。

単に金を儲けるだけで広げたのじゃない。困っている人を助けるのじゃなくて、もはや困る事が無いようにしたい。貧しい人には、当座の金をやるだけではだめなんだ。働き場所を斡旋したり、色々と相談に乗っている事も必要なんだ。病気の人には治療や薬が必要な事は勿論だが、病気している時の食事や家族の問題、そして病後の職や食事なども必要なんだ。」と熱っぽく言った。

お香はいった。「あんたは変わったね。」
鉄平は続けた。「人は変わる。いい方にもわるい方にも。おれは盗賊時分、稼いだ金を色々な所に隠して置いたし、地所や金はあった。ただ身体が悪くなり、金を取り出せないまま ほとんど無一文でのたれ死に寸前に、若い医者であった次平に助けられた。次平は善意が服を着て生きているように、俺には思えた。そこで助けて貰ったお礼に、医院を造り、贈った。ただ次平はそこでも、金がある人やない人を分け隔たり無く治療した。金には無頓着だった。そこで、おれは金を管理して、自分の金も追加したりして、薬種問屋を買い取り、薬を安く、自由に使えるようにした。そうしている内に、病気になっている人の飯や仕事が問題になった。そのため、料理屋や人入れ屋などもやるようになった。

暫くすると、おれが誰を助けているのではなく、俺自身が助けられている事に気づいた。それだけでない。善意の固まりと思っていた次平が、許嫁の復讐のために、人を殺そうと考えている事に気付いた。人を助けている人が、自分の手を血で汚そうとしている。

俺はなんとしてでもそれを防ぎたかった。俺が色々と工作している内に、そいつらは自滅してしまった。因果応報があると思うと同時に、悪い事をしてきた人間が助かる道は狭いが、善意の固まりのような人が、突然地獄に入るもしれない。地獄への道は広いと俺は思い知った。 お香 俺と一緒に狭い道に歩いてくれ。


鉄平とお香、結婚する。



お香は、暫く黙っていたが、「あんたは今は大店の旦那。何も知らない良家の娘を貰った方が得じゃないかい。幻の勝二として名前は知る人も、顔は知らない。お手配になった事もない。、あんたの昔を知っている年増の女じゃ後悔しないかい。私は結構焼き餅焼きかもしれないし、浮気は許さないよ」といった。鉄平は、「俺は焼き餅はすきだよ。じゃいいんだね。お前のひもにも魅力はあるが、髪結いは人に任せてくれ。」と言った。お香は直ぐに言った。「人にやったっていいんだよ。お前に一緒になれるなら。」 と鉄平にしがみついた。その晩はお香と共に過ごした。 



鉄平は、お香をつれて、江戸の店に戻った。番頭は走ってきた。

「旦那探してました。松江藩、長州藩、福岡藩のお留守居役様、田宮先生、御殿医の良庵先生、鴻池のご主人からも直ぐに連絡が欲しいそうです。用向きは旦那様以外には言えないようで、書簡をおいて行きました。次平先生や大坂の源三さんからも飛脚が届いていますし、各店からの連絡が届いています。幸三の所の飛脚屋からは、返事を貰いに今朝早くきましたが、旦那様が戻っていないので、返しました。光次さんから人形が届いています。なんですかあの人形は?連絡先を知らせて貰わなくては、困ります。」と強い口調で言った。鉄平は、言った。

「私の嫁になる人を口説いていた。昔付き合っていた人とばったり会った。多少の事は辛抱してくれ。これが私の嫁のお香だ。仲良くしてやってくれ。」と意ってお香を紹介した。

お香は、「お香です。宜しくお願いします」と言った。番頭は絶句していたが、「こちらこそ宜しくお願いします。」と言ったものの、鉄平に「旦那の婚礼は大変な事です。至急準備しますが、それぞれの店にとっても浮沈に拘わる事ですよ。そんなに簡単な事じゃない。少しは前もって話して下さい。私から各店に連絡して置きます。」と言って、手代に、幸三の飛脚屋の番頭をすぐに呼ぶように言った。 



鉄平は、お香をつれて奥に行き、溜まっていた書簡や手紙を読め始めた。お香は所在なげにしていたが、やがて光次からの人形を見ていた。 


溜まっていた書簡や手紙を読んでいた鉄平は、手代や丁稚を何人か呼んで、それぞれ用事といいつけていた。お香に言った。「鴻池というとあの鴻池なの? そんな人と付き合っているの。」

鉄平は、「人は変わるものだよ。お香。俺達も変わらなくては。 俺は色々と挨拶に行かなくてはならない。俺と一緒について来てくれ。」と言った。 



お香は鉄平の店の丁稚に、お香の店に今日は急用が出来て店に行けない旨連絡を頼んだ。鉄平は、鴻池の別邸に人形を2台届けるようにいいつけてから、番頭に言った。

「松江藩、長州藩、福岡藩の江戸屋敷、田宮先生、良庵先生、鴻池の別邸に行く。帰りは遅い。飛脚屋にはあす午前中に来るようにいってくれ。駕籠は買い切りで2丁用意してくれ。来たら呼んでくれ。奥で返事を書いている。」 





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