のら猫の三文小説

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次平の復讐 No.27

2012-11-29 18:28:22 | 次平の復讐

お香、藤一に会う。



鉄平は、お香をつれて、向島の料亭に入った。奥まった離れに座敷が設けられていた。「鉄平さん お香さんでしたね おめでとう御座います」と言って、光次が現れた。「鉄平さんあの人形どうですか。」鉄平と光次はカラクリ人形について話をし、光次は下がっていった。 



料理が運ばれ、料理を食べながらお香は言った。「光次さんと言うのはもしや開かずの藤一では?」

鉄平は言った。「勝二も藤一はもういない。人は変わる。いい様にも悪い様にも。」 



お香は、「物産問屋の話は、何なの? 丹波屋の件とは何なの?」と聞いた。

鉄平は言った。「医院を次平のために作った。薬については、次平が指定する薬を探すのは、大変だし、薬種問屋では混ぜ物や良質でないものもあり、薬代も高かった。それで薬種問屋をやりだした。各地での薬種問屋は、次平の使う薬には、珍しい薬もあるし、今の段階では秘密にしておきたい薬もあり、次平が治療する時には必要だった。

食事が適切でなかったり、又激しい仕事をして、再び病気になる人がいたので、料理屋と口入れ屋などもやり始めた。ただそれでも限界がある事に気づいてきた。

それは仕事の調整だけであって仕事そのものを作りだす必要があると気が付いた。

大坂や江戸での物産問屋をやれば、長崎、福岡、萩、松江など各地での仕事を作り出す事が出来るかも知れない。大坂でやり始めたばかりで、まだどうすればいいのか分からない。

しかしやがて江戸での物産問屋も必要となるだろう。大坂で鴻池と協力して、異なる見方や情報が大切な事もよく分かった。お香の目を役立ててくれないか? 」と言い、丹波屋の件については説明した。「そんな大変な事を私が出来るかしら。光次さんのカラクリ人形はどうなの?」とお香はいった。

カラクリ人形はまだ道楽でしかないが、あんな細工物も今後何か役立つかもしれない。色々な人の経験や意見を纏めてやっていけばいい。善意の人、才能のある人や努力する人と付き合うと自分も少しつづ変わっていく。俺はそれを強く感じている。 

お香 江戸の番頭の忠助は、他の江戸の薬種問屋で働いていた。俺がはじめ送り込んだ長崎の五平は、江戸に馴染めず、忠助を引き抜き、さっさと長崎に帰ってしまった。 各店間の融通や利益配分については、以前からしていた事だが、これほど緻密ではなかったのが、忠助が考え、得意先や店の主立ったものからも出資金を出してもらい、江戸の店は大きくなった

もっとも忠助の取り分はかなり多いが、多くの人から出資してもらっているので、今の店の状況についても誰にでも説明できるようになった。それでみんな頑張れるし、色々と意見も出てくるようになった。江戸がうまくいけば、俺の出資金への利益配分金の一部を使って各店や江戸の医院への出資金とし、それを江戸の店へ出資金とすれば、各店や江戸の医院の経営が安定できると言ってきた。」

お香「でもあんたの取り分は減るんだよ。悪く考えればあんたへの払いを減らすだけかもしれないと考えないの?」
鉄平「厳しく追及しても意味はない。ある程度は仕方ない。それに松江や萩や福岡などの店では、今後はその利益配分で助かる事が出来るし、江戸の医院も安定してきた。江戸はまったく忠助に任していたのに、こんなに大きくなっている。任せる時はみんな任せないと、うまくいかないよ。」
お香「ふーん。あんたも本当に変わったね。あんたの薬種問屋は良質で他より安い事も有名だが、店のものがよく働き、薬屋や医者がよく使うのは、そうした利益配分も効いているのかもしれないね。それに店の状況がはっきりわかる事は良いことだね。次平先生の医院もいいお医者がいるし、薬も良く効くし、貧乏人も治療してくれると評判だよ。もっとも次平先生やあんたの事は知らなかったけど。」

鉄平とお香は、光次の店で何度も話し合った。これからの自分の苦労を思うと、一度決意したが、逃げだそうと思う気持ちを押さえるように、鉄平を求めた。鉄平が自分の中に入っている時の満足感が、鉄平と歩く決意を固めさせた。鉄平は、そんなお香の気持ちを汲み、光次に暫く離れを借りる事を頼み、光次は、黙って離れを貸してくれていた。鉄平を自分の中に入れ、淫らな自分を見せて、自分で動いて、あえでいた。お香は、鉄平に言った。「私は、こんな女だよ。それでもいいんだね。下品な女だよ。それでもいいんだね。」

鉄平は、「そんなお香が好きだよ。」お香は、鉄平に抱きつき、自分の中の鉄平が、お香の身体が、お香の決意を固めさせた。お香は思っていた。「こいつと離れている間に、何人の男と寝た。技を持っている男もいた。だがこんな充実感はなかった。 もうこいつとは離れられない。」 



江戸の店に帰ると、番頭の忠助が待っていた。「旦那 奥の座敷を見てください。松江藩、長州藩、福岡藩、防府藩の江戸屋敷と田宮先生と次平先生の江戸医院と良庵先生から婚礼のお祝いが、届いて居ます。私もちゃんと説明して出来ないし、きちんとした応対が出来ないと店の者には責められるし、薬種問屋のご同業からも問い合わせが続いて、大変でした。良庵先生からは、御殿医筆頭には連絡しておいた。婚礼の日がきまったら直ぐに連絡して欲しいと脅されています。各店には飛脚を出していますが、案内しないと大騒ぎになりますよ。」 

鉄平はお香に言った。「明日でも式をあげようか」、お香「あいよ。」と返した。番頭が慌てて「そんな馬鹿な事を言っては困ります。でも早急にした方がよいかもしれません。一番早い日はいつになるか明日から検討させます。式の出席者についてはあたしに任せてください。一々旦那の確認はとりませんよ。次平先生には早急に連絡してください。」お香は言った。

「この貸衣装 いつ取りにきますか?」番頭は即答した。「既に買い取りました。奥様のお見回りの品は既に運び込みました。」 



「どちらにしても次平先生には、もう一度江戸に来て貰わなければならない。次平先生は今は京に滞在している。早急に手紙を出そう。」と鉄平は言った。 



鉄平は次平宛に手紙を出して、各藩や幕府からの意向や良庵との会談結果などを伝えた後、お香と婚礼を上げるので、江戸に出るように依頼した。その後各店からの連絡を読み、短い返書とお香を嫁として、各店に行き、ゆっくり滞在したい旨を付け加えた。 



結局 鉄平の婚礼は、1カ月ほど後になった。次平は、禁裏の近従にも医事方相談役の就任について内諾をとり、1週間前に江戸に着き、幕府からの屋敷と医事方相談役についてお礼を述べた。松江、長州、福岡各藩については、医事方相談役については、了解し、各城下での屋敷には医学生を置く事の了解を得た。 





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