のら猫の三文小説

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新しい子猫たち No.322

2014-12-09 00:00:48 | 新しい子猫たち 

リトルチャ基金の誕生



リトルチャグループの例の銀行、名前を変えてお宝銀行の頭取の彼は、チャタロウランドには大変ショックを受けていた。それにリトルキャット企画やリトルキャット物産社内の雰囲気にもショックを受けいていた。



お宝銀行には、レアメタルの取れる山が借金のカタとして手に入り、莫大な採掘の金が入っていた。それがお宝銀行が、日本でも金持っている銀行、銀行に金貸す銀行になった理由だった。





期間限定と思っていた、レアメタルの鉱脈は、結構深く、香奈オフィスも慎重に採掘計画をしていたので、長期間持続していた。





頭取の彼は、実はこの事を憂いていた。決済銀行としての稼ぎ、銀行間貸付、債券取引などの銀行本来の稼ぎを上回る事すらあった、銀行内部でのレアメタル収入頼みの雰囲気は広がっていた。





それにお宝銀行は、自分が望んだ事だったが、もう一つの大きな銀行の本店と同じような雰囲気にしてしまっていた、小さい銀行なのに、行員の態度はデカク、お客をお客とも思っていない雰囲気がしていた。彼が、もう一つの大きな銀行の頭取になりたかった思いが、それを助長していた。





実は今の香奈特別保証の社長になっている常務が絡んでいた政治献金問題が表ざたになれば、頭取交代まで、正人は考えていて、リトルチャが正人にこっそりと頼んでいた、彼の短期間での頭取就任の目もあった。



この頭取就任は、リトルチャからの彼に対するご褒美にも似たものだったが、彼はリトルチャが元気をなくして、混乱するリトルチャグループを知らん顔して、もう一つの大きな銀行の頭取につく事をせずに、正人にも断りを出した。政治献金問題は、別の理由で陽太が動いて、表ざたにはならなかった。実際その時に頭取になっても、色々な圧力がかかって本当の短期間の頭取になっていただろうと、彼も思った。





その瞬間に彼が、もう一つの大きな銀行に対する束縛感から初めて自由になった。束縛から自由になって、銀行を素直にみれば銀行規模は小さく、行員も少ないのに、利益は驚く程多い銀行となっていた。それはいい事なのだが、法人顧客に対する態度もデカかッたが、個人顧客への態度はなっていなかった、彼も商売人でもなかったが、素直にみれは、銀行の末端行員でさえ、客を客とも思っていなかった。お役所よりも酷かった。





例の彼は、色々と考えた。銀行内部で、お客つまり個人顧客、法人顧客との関係を改善させ、銀行はサービス業でもあると行員に理解させる事はできないだろうかと考えていた。





融資事業は基本的にはしなかったがリトルキャット九州のために作った支店がリトルキャット九州に融資して関連企業にも融資を始めていた。リトルキャット九州が躍進して、九州だけでなく、全国各地に広がっていった。





ただ本来の投資銀行である事は基本的に変わらなかった。しかもこの銀行は本当の自分の自己資本が多い銀行だった。





彼はレアメタルから得る利益にはできるだけ、手をつけず、貯めていた。いつまで続くか変わらないものだと思っていた、ただ銀行間貸付は保有する資金が多いだけに巨額になり、ついには海外の銀行にまで及んでいた。利益も巨額になっていた。そうした銀行間貸付は維持していくのには、使わずに貯めていた筈のレアメタルからの利益が使用され、又それが利益となっていた。





彼は、銀行活動が身の丈以上になり、レアメタルからの収入がなくなった時にこのバブルが破裂して、尊大な態度しか取れない銀行員小さいくせにデカイ態度を取る癖が身に付いた銀行員が、やがてこの銀行を食いつぶしていく可能性を感じていた。





リトルキャット企画やリトルキャット物産は、彼からみれば甘い経営をしていると感じていたが、社内に流れていた家族的な雰囲気、そして会社の持つ問題点も素直にみんなで討議しようとする態度に衝撃を受けていた。





彼は、レアメタルで得た利益の約半分を、リトルチャ基金として、困っている個人に無担保、無保証人で貸付、しかも返済も期限なし、ある時払いの催促なしの制度を考えていた。



勿論永遠には続けられるとは彼も思ってはいなかった。ただ銀行の雰囲気はこれで一変する。豪壮な建物の中に尊大な態度でふんぞりかえっていた銀行員が、困っている人の相談にのって、融資していく事は、金はなくなるかもしれないが、それは結局銀行にとっては長い目でみた時にはいい事かもしれないと思い出した。



それにチャタロウランドを見た時のリトルチャが一瞬寂しそうな表情を見せたのを彼は見逃さなかった。リトルチャの名前の残るナニカを考え出したいと云う思いもあった。





こっそりと香奈特別保証の社長、恵の財団の幹部たち、不動財団の相談室の幹部たちとも協議して、制度設計をしていた。それにリトルチャの名前も残せる、困っている人たちはリトルチャに少しは恩を感じてくれるかもしれないとも感じていた。





ただ、利益はとても望めない事業である事は知っていた。困っている人に金貸して、僅かに残る資産を取り上げる事をしなくては金は儲からない。ゼニゼニといっているリトルチャが納得するだろうかと思っていた





リトルチャはじっと、彼の説明を聞いていたが、損切りつまり事業継続の判断を、損失をレアメタルから得られた利益の半分にすると云ったルールを厳守する事で、この計画を認めた。



リトルチャもやはり自分の名前が入った基金で、人を助ける事には魅力を感じていた。それにレアメタルからの利益はいわば予期しない利益であった。天からもらった利益をみんなにも分配して、彼の云う銀行の悪癖も正す事ができれば、それはそれでいいかもしれないとも思った。



レアメタルからの収入は膨大になって、これを貯めていた金額も膨大だったが、この時点では誰も継続して進められる事業とは思っていなかった。