ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

八月に読んだ本

2017-08-30 09:39:52 | 本のレビュー
「蜜蜂と遠雷」恩田陸 著
大分前から、ベストセラーリストのトップであり続けている本。今まで名前は、知っていたものの恩田陸さんの本を読んだことはなかった。この本はクラシック音楽コンクールの世界を描いたもので、音楽の魅力が語りつくされた長編小説(ほんと、分厚い本!)とあって、読みたいなとずっと思い続けていた。
そして、とうとう古本屋で購入し、読む。

クラシック音楽への圧倒的な知識が惜しげもなく、開陳され、音楽に関しては門外漢の私にも「ああ、音楽というものが理解できたら、どんなに素晴らしいだろう」と思わせられるゴージャスな舞台仕立て。 モーツァルト、バッハ、マーラー、シューベルト……文章を読むだけで、音楽というものの魅力が五感に伝わってきて、うっとり。
夢中でページを繰った……のだけど、長い長い小説の三分の一ほど読んだ頃、手がピタリと止まってしまった。
何だろう?  ピアノや音楽の魅力を読み手にもひしひしと感じさせてくれる筆力は素晴らしいのだけど、肝心のコンクールを取り巻く登場人物の人間ドラマに今ひとつ魅力が感じられないのである。

天才というべき才能を備えたピアニストたちが何人も出てくるのだけど、ヒロインにも15歳の少年にも、読者を惹きつける魅力がないというか……だから退屈してしまい、途中で読むのを諦める。 物語が、長すぎるよ。


「満願」米澤穂信 著
 
こちらの作家も名前は聞いたことがあるのだけど、読むのは初めて。
だけど、とーっても面白かった!  ミステリ短編集ということもあってか、上記の「蜜蜂と遠雷」と違って、飽きることなく一気読み。
まず、題材があきれるほど多岐にわたっていて、その料理の仕方が素晴らしい。
巻末の解説には、「松本清張のミステリーを思い出せる」とあって、私も「ああ、そう言われれば、似ている」と思ったのだけど、「暗くて、読んでいる方が気が滅入る」清張ものより、こちらの方がいいな。
舞台も昭和らしきものが多く、中央アジアの僻地へ赴任したビジネスマンの遭遇した異様な出来事から、殺人の罪で出所した女性の予想もつかぬ殺人理由――など、よくこんなストーリーや発想が湧くな……と舌を巻く傑作ぞろい。
愛読できそうな作家に出会えて、うれしいなあ
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