小学2年生の自閉症のAくんと都道府県のパンフレット作りをしました。
上の写真は、子供たちが駅でもらってきた旅行の
パンフレットを貼ったり、図鑑にある地域の特産品の絵を描いて貼ったりする手作りパンフレットです。
画用紙を半分に折って作っています。
Aくんは家族で富山に行ってきたところで、富山のパンフレットをいくつか持ってきていました。
Aくんは五箇山の合掌作り家と温泉の絵を描きました。
Aくんが虹色教室に来始めたのは3歳の時。
最初の数年は工作とは名ばかりで、
激しく動き回り、材料を散らかしていくAくんといっしょに
心と体を使いきりながら関わっていくだけで時間が過ぎていきました。
いつ頃からか、Aくんは、精力的に絵を描き、立体物を作るようになりました。
最近のAくんの姿を見ていると、「工作」という自分が親しんだことを土台にして、
受け入れるのも理解するのも難しい抽象的な概念と接する時間が
持てるようになったことを感じました。
自閉症の子たちは、自分の関心がないものを、完全に心からシャットダウンしてしまうことがよくあります。
Aくんが都道府県のパンフレット作りをしているのは、高学年になって地理や歴史といった
Aくんにとって「何を学んでいるのか、さっぱりわからない」となってしまいそうな分野に、
「知っている、知っている!」と興味のとっかかりとなるものを作っておいてあげたい、と思うからです。
Aくんは五箇山の合掌作りの家に毛羽だった毛糸を貼り付けたり、
温泉にセロファンを貼ったりする作業を心から楽しんでいました。セロファンがはみ出す時はちょうどいいサイズに切ったり、
セロファンの大きさに合わせて、温泉の大きさを調整したりしていました。
楽しい時間の中で、何度も繰り返してきた工作体験が、Aくんが頭を使った作業をする時に
それをリードする役割をしたり、物の理解の補助をしてくれているのを感じました。
算数の学習でも、コミュニュケーションを取るのがまだかなり難しいAくんにとって、
理解するのは難しいだろうと思われた「記号を使ってまわりの長さを足し合わせて計算する方法」や
「テープを貼り合わせて計算する時に、のりしろ分を引くこと」などが、図を描いて学ぶとちゃんとできるように
なっていました。
富山のパンフレット作りをしている時、こんなことがありました。
富山が日本全体のどこにあるのか見せてあげようと
地図の下敷きを傍らに置いたところ、
Aくんが即座に下敷きをはさみで切ろうとしたのです。
富山を切り抜きたいと思ったようです。
「Aくん、これは切りません。富山はどこにあるのか見るための地図です」と言っても、
少しすると、はさみで下敷きを切ろうとしていました。
次回に続きます。