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虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

『メタ認知についての記事』にいただいた質問へのへのお返事 1

2012-08-20 07:52:08 | 教育論 読者の方からのQ&A

お正月の読書三昧(『メタ認知』など)5

の記事に次のような質問をいただきました。

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過去記事に失礼します。『情報を伝え合って体験する際には、

大人の側がそうしたことを把握していることと、

かなりの柔軟性が必要だと思うのよね』とは、具体的にどういうことですか?

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これはわたしと息子の会話のなかで、わたしが息子に言った

「最適化……そうなのよ。
最近、幼い子を育てている方々と接していると、経験の前に、
わが子に与えたい経験を最適な状態でセッティングするための情報を得ようと、常に情報集めをしているように感じるときがあるの。

そこには、子どもに最高に合理的で価値があり、濃度の濃い体験を与え続けたいという気持ちが見え隠れするのだけれど……。

たとえば、私がトルコのアイスを買いました。トルコの方の国民性や、屋台の雰囲気を体験しました……とブログで紹介したとすると、

それはどこにありますか?
とたずねられて、一直線にそこへ向かい、帰宅後、トルコの地図や図鑑を確かめるという方がいたとすると……とてもそういう方は多いのだけど、

その体験に、~へ行こうとすると思ったより遠くて、疲れたところで、偶然、おもしろい店を見つけた、という

見つけたとか、疲れたとか、甘い物食べていると疲れも我慢できてしまったとか、目的以外の道草のおもしろさとか、自分や子どもの持っている感性やアンテナを初めてみる環境に投げかけるとか、不確定要素との出会いを楽しむ

といった自分独自の体験がなくて、

最適化され、意味や言葉で切り取られた体験のみが子どもに与えられている……それは、ブラックボックスとなりつつある現代の世界を
さらに奇妙なものにしているように感じるのよ。
だから、情報を伝え合って体験する際には、大人の側がそうしたことを把握していることと、かなりの柔軟性が必要だと思うのよね」


のなかで話したことです。

『情報を伝え合って体験する際には、

大人の側がそうしたことを把握していることと、

かなりの柔軟性が必要だと思うのよね』とは、情報を頼りにして、

まるでマニュアルでも実行するように

子どもに体験を与えるとすれば、それはブラックボックスとなって素のままの生のありのまま姿が見えなくなりつつある

現代の世界を、よけいわけがわからないものにしてしまうかもしれない、

という危惧について言っています。

 

それを情報発信する側も受信する側も

理解していること、意識していることが大事、ということです。

 

情報をそのまま与えるのではなくて、

参考にしつつも、自分や子ども独自の視線でそれを捉えなおしたり、

オリジナルの興味や価値を見出したり、

得た情報から全く新しい何かを生み出していくような創造性を常に持っておくような

柔軟性が必要だと感じているのです。

 

 

今の時代、出かけるにしろ、子どもにおもちゃを与えるにしろ、教育するにしろ、

情報を見比べて、一番、自分にヒットするものや、「うちの子に最適」と思うものを

選らんでから体験する、

体験させる、のがあたり前になっていますよね。

 

「これこれしたら、こんな感動を味わえますよ」

「これこれしたら、こんな効果がありますよ」

「これこれすると、こんなお得な体験ができますよ」と、いう情報はちまたに溢れています。

 

自分がその体験をどのように感じ、

どんな効果やお得感を得るかといったことまで、

あらかじめ最適な組み合わせをパックして、「さぁ、いざ体験!」

という方は少なくありません。

 

でも誰かが「すばらしかった!」「こんな効果があった」という体験は、

「良かった」と思う以外のその人の体験の流れのなかでの

すばらしさであり効果であって、

「よかった」という話を聞いて、良かった部分にフォーカスして体験しようとすると、

映画の感動シーンだけを見たり、本のラストシーンだけ読んだりするのと変わらないものになってしまう

のではないでしょうか。

 

もし子どもにそうした体験ばかり与えていれば、

ある面で、鈍い感性を育んでしまうように思うのです。

 

たとえば、「理科の好きな子になってもらおう」「科学に興味を持ってもらおう」

と思って、科学の実験ショーのようなものや、

小さな実験をさせてくれるイベントに子どもをたびたび連れて行くとします。

 

それ自体は悪いことではないけれど、

実際にはそういう刺激的な体験が多い子は

「コップに冷たい水を入れたら、コップのまわりに水滴がついてたんだけどどうして?」とか、

「自分の影の濃さって、日によって違うのかな?」とか、

雨の日にコップを外に出しておいたら、どれくらいの時間で水がいっぱいになるんだろう?」

なんて話には、

「そんなの科学じゃない」「くだらない」「つまんない」「それがどうしたの?えっ?」

と鼻もひっかけないことが多々あるのです。

 

もともと子どもは大人が気にもとめないようなささやかな不思議に心を動かされて、

「どうして?」「なぜ?」と問いかけたり、

輪ゴム1つ、磁石1個であらゆることを試してみるような

探求心を持っています。

 

でも食前にお菓子を食べすぎたら、ご飯がおいしく食べられなくなるのと同じように

最適化された最初から効果を約束されたような体験ばかり与えられたら、

そうした子どもらしい感性が鈍磨していっても仕方がないのです。

 

もちろんそれは「科学のショーや実験ができるイベントに

子どもを連れて行ったらよくない」という話ではありません。

 

 そうした体験を与える大人が、それがその子独自の生の体験となるように、

その子独自の視点、その子独自の感じ方や興味を大事する柔軟性を持っている必要があるな、と思っているのです。

それから

あくまでも、自分が期待している情報通りの効果を子どもに求めたらいけないですよね。

 

お家に帰って、工作やごっこ遊びで再現するなどして、その子サイズの理解を助けることも

大事だと思います。

 

教室で子どもたちとお出かけする際は、「何を子どもたちに教えたいか、与えたいか」ではなく、

「その子が何に惹かれていたか」「その子がどんな感性で展示物と関わっていたか」などを

よく観察して、教室に帰ってきたから後の活動の方を体験のメインにしています。

 

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3 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (ももかん)
2012-08-20 11:50:22
先日はコメントを取り上げて頂きありがとうございました。

2年生の凹凸息子は、保育園時代からネットで科学実験の番組を見るのが好きでした。
普段の生活の中でも「なんで?どうして?」が多い子で、
時々自宅でスライム作りや石鹸作りなど楽しんでいましたが、
そんなに好きならと地元の大手塾の、小学生向け科学実験教室に入会したのでした。

ところは息子は一度行ったきり行きたがりません。
チケット制で2年間有効なので、無理にいかせることも
せず4ヶ月が過ぎました。

好きそうだと思ったのに、なんでかな?と思いつつ
先日行った花火大会では、花火のきれいさに見入りながらも
「なんで色が変わるのか」とか、「なんで時間差で爆発するのか」などずっと主人に質問していました。

それを見て、息子にはああいう整えられた、予め準備され尽くしたものは合わなかったのかもしれないと感じていました。

今の息子には、行きたいところに行き、遊び、そんなことに時間を割く事のほうが大切なんだろうなぁと思いました。

そんな中で不思議に思ったり感動したりすること。
たとえそれが何かに結びつかなくても、単なる疑問で終わっても、それはそれで子供の時間なんて本来そんなものなんだと思えるようになってきた今日この頃です。
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Unknown (ゆいみゆママ)
2012-08-20 15:22:35
先日2年生の娘が寝室の窓からたくさん風が入ってきているのを見て、『この涼しい風を寝る時までとっておこう!』と言って嬉しそうにドアをしめていました。

そこで部屋の中に入り、窓を開けたままドアを閉めてみるとビュービュー吹き込んでいた風が全く入ってこなくなることを見せると、驚いていました。すっごく不思議で面白かったようで、何回も「ドアを開けて!」「閉めて!」と言って風がやんでしまうのを体験していました。

わざわざ科学の実験をしようと意気込まなくても、こんな簡単な日常の出来事でも不思議に思ってたのしめるんだってやっぱり子供の素直な心は素晴らしいなと思う出来事でした。
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Unknown (かちゃくちゃねー)
2012-08-21 12:53:39
お返事ありがとうございます。
とっても分かり易かったです。またコメントされてる方々からも素敵なお話伺えました。ありがとうございました。
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