「私が、生きる肌」

2012-06-04 01:49:28 | 映画
よくもまあ、こんな発想ができたもんやな~。

前半と後半で、同じ女性が全くの別人に見える見事なペドロマジックでした。

監督のペドロ・アルモドバルもカンヌ映画祭の常連さんで、毎回奇想天外な脚本に驚かされるんですが、今回もビックリな内容でした。一番ビックリしたのは「バッド・エデュケーション」でしたが、この「私が、~」はそれに次ぐ二番目に驚いた内容でした。

「ボルベール」を踏襲した感じの見せ方や展開でしたが、なんせエログロナンセンスとハイセンスの中間的な内容で、女性も男性もペドロ作品に興味なければご覧にならないことを勧めますね。

ってぐらい内容がエログロい。めちゃめちゃエログロい訳ではないですよ。ハイセンスに近い(そうでもないか…、女優さんは体当たりやった)エログロさなんですが、後半のネタばらしによって前半が全く別の見方になるという脚本が、素晴らしい!とは言いたくはないけども良く計算された内容でした。

ちょっとネタバレすると、同じ女性(本当の女性)が男にしか見えないんだよ。ついつい前半のあの行為は何?って思ってしまうアントニオ・バンデラスの存在感でした。まじビックリ仰天。

ペドロ作品に久々のアントニオ。ペネロペ・クルズもそうやけど、スペイン出身の俳優さんはやはり母国語の方が似合う。当たり前だけど、全く違和感ないもんね。

で、タイトルの「私が、生きる肌」の“私が、”の句読点は要らんで。これじゃ、私=肌、にならないかい?どちらかというと、生きるというより共存の方が意味が近いと思う。あ~可哀想←映画の内容をついつい思い出してしまって…。

でもさ、現実な話、表立っては発表されてないだけで、我々の知らないところではあんな実験やってるんだろね、きっと。

と思わせるくらいのリアリティーも潜んでいて色んな意味で怖くもあった。

「ボルベール」同様、映画だから全然オッケーな結末でしたが、あの人はこれからどうやって生きて行くんだろうね?ホント、私と生きる肌って感じのラストでした。

それにしても、フランスやスペインのベテラン女優さんの演技や声って、なんであんなに魅力的なんやろね。特にペドロ作品に登場する女優さんはいつも超魅力的な存在感を醸し出している。いや~女性のハスキーヴォイスにも弱いんでね~(笑)

オススメはしませんが、なんでTOHOシネマズで上映したんかが不思議でならん。基本、カンヌを含めた国際映画祭の作品ってミニシアター系が多いのにね。個人的にはレイトショー料金で観れたから有難かったけど…。「メランコリア」にせよ「ヒミズ」にせよ、TOHOさんも許容範囲が広くなったもんやね。

今日のまとめ:本当は「ミッドナイト~」をもう一度観たかったのにレイトショーやってなかった(涙)


追記:この映画の日本字幕は、大好きな松浦美奈さんでした。もちろん贔屓目線ではありますが、松浦さんの日本語訳は某有名翻訳家さんと違って、的確に言葉選びをされているので、より深く作品にのめり込めるから好き。あの方の日本語は端折り過ぎに意訳しすぎ。文字数制限があるのは分かるけどさ…。

松浦さんの字幕に当たった時はめちゃラッキー!って思ってしまうのは私だけかな…?