ローエングリン by METライブビューイング

2023-04-25 21:55:56 | シアターライヴ
この物質社会やSNS時代で真理を見出すのは困難。

ローエングリンは、ルートヴィッヒ2世が愛した作品であり理想かつ憧れの人物像。

ぶっちゃけ、粗筋を読む限り、ルートヴィッヒさん、ローエングリンのどこがいいの???と聞きたくなるような展開である。

愛する人に自分の名前も素性も告げず、聞くことも許されない。

相手には名前で呼ぶのに、相手は名前で呼ぶことも許されない。

どんな辛い過去があったとしても、ちゃんと受け入れる覚悟はあるのに…。

魔女にそそのかされなくても、名前や素性を知りたくなるのは当たり前!

愛する人といる時間は、出会う前よりも我慢しないといけないことなのか…?

私はアナタのなんなのさ!?

なんという自分勝手な主人公や!

と言いたくなる展開。

確かに音楽はいいけどね!演出も美術や装置もいいけどね!

いやいやいやいやいやいや、

実は、そんなご都合主義の、男尊女卑の物語ではなかった!

めちゃくちゃスピリチュアルでもあり、

めちゃくちゃ宇宙の愛がテーマの作品だった。

いやいやいやいやいやいや、

粗筋を書いた人、粗筋を伝えてくれた方、アカンで、ちゃんと説明してくれないと!!

めちゃくちゃ誤解を招いてるやん!!

いやいやいやいやいやいや、

めちゃくちゃ良かった!!!

そりゃ、ルートヴィッヒさん、好きになるわ!

私がルートヴィッヒでも好きになるわ!

ワーグナー、めちゃくちゃええ仕事してるやんかいさー!?


ということで、

ローエングリンは、ルートヴィッヒ2世好き人間は観ておかないといけない大事な作品なのに、実は一度も観たことがなかったため(そもそもオペラは苦手)、たまたまMETライブビューイングで上映してくれるということで、行きたいお寺さんがあったので京都まで観てきました。

10時開始で終わったら15時。急いでお寺さんに行ったよ!は、さておき、

まさかこんなスピリチュアルな内容だとは思わなかった。

どんなヒーロー像が描いているのかと思っていたら、全然ちゃうやん!

粗筋と結末だけは知っていたので、てっきりニコールのドッグヴィルみたいな展開になるのかと思いきや、全然ではないけど、傲慢かつ欲にまみれた作品ではなかった。

世間一般では、騎士道の物語で、ドイツ建国の礎となった登場人物の物語なのかもしれないけど、

私に言わせれば、これは完全に宇宙の愛がテーマの作品です。

そりゃ、名前も素性も言いたくないよ!

2人が愛し合ってさえいれば、名前も素性も年齢も外見も関係ないやん。但し、魂レベルでね。

エルザなら分かってくれると信じていたのに…。

という話だと解釈しました。

これは完全なる魂レベルのラブストーリーでもあり、世界平和を謳った物語でした。

そうなんだよ!エルザが弟殺しの罪を着せられそうになった時、名も知らない騎士に助けを請うて、実際に助けてくれたのに…。

ローエングリンにしたら、なんで今さら名前や素性が必要なんだ…ってことやもんね。

よく練られた脚本やで!

ほんま、そうやねん!魂レベルだったら、肉体を伴わないから、性別も年齢も外見も体型も職業も拘る必要がない。名前や素性なんて以ての外。

真実の愛があれば戦争なんて起こらない。

人が人を愛するのに、どうして諍いや争い、疑いが必要なのか?

本来なら要らない感情なんだよ。これらは物質主義の歪み。

ルートヴィッヒもワーグナー芸術を通して世界平和を訴えたかったんだよ!

めちゃくちゃ分かる!

エルザもさ、確かに魔女にそそのかされたところも大きいけど、愛する人の名前を呼べないって普通に辛いもんな。

ローエングリンは、騎士であると同時に思考は宇宙人でもあるわけだから、根本的に俗世間の人間とは異なるわけだよ。

エルザも最初は約束を守れてはいたけど、やはり宇宙人ではない人間だから俗世間の愛を求めるわけやん。普通の恋人同士のように。

これは男尊女卑になるのかもしれないけど、結果、真実の愛を試されたとも言えるのでラストは辛い別れになるよね。

エルザはあのまま生きていても後悔の念に苛まれて生きていられなかったと思うし、本来そういう真実の愛や宇宙の愛を学びなさい!と観客に訴えている作品ではないから、エルザの突然死は決してツッコミどころだとは思っていない。愛の死だと解釈している。

そうなんだよねー。現代の、この情報社会では、何が真実で何が嘘なのか、情報がごった返すわ、いくらでも捏造できるわで、真実を見極めることすら非常に困難。真実の愛なんて更に難しいよ。宇宙の愛なんてもっと難しいよ。

一人一人が真実の愛、宇宙の愛を学べは世界平和も絵空事にはならないけど、

私みたいにヴィジュアル第一主義なんて言ってる限り、物質主義からは逃れられない。私もまだまだ真実の愛からは遠い存在だよ。

いやー、めちゃくちゃ反省させられました。



本当に、これは、私のオペラに対する偏見と概念を覆す素晴らしい作品でした!

ヒロインが太っていても全く気にならない。見てくれなんてどうでもいい。

大事なのはハート、気持ち、表現力。ちゃんと歌声に気持ちを乗せられるか否か。役のイメージに合っているかどうかだけ。だって、魂の物語やもん。見えるものは大事ではない。

めちゃくちゃオペラの概念を覆されたよ!

っていうか、ローエングリンがめちゃくちゃスピリチュアルで、

ワーグナーがこんなに天賦の才を持った方だとは思わなかった。

ルートヴィッヒもコジマも見る目あるやん。もちろん、前妻のミンナも。

演出もめちゃくちゃ良くて、

まさか舞台が月だとは!

クレーターの中の地下世界が舞台になっていて、クレーターの穴から地球が見える背景になっている。めちゃくちゃ斬新な設定!まるでターン∀ガンダム!藁

ローエングリンは、白鳥に乗って登場するのが本来の物語の趣旨ではあるが、白鳥の模型すら登場しない。100人以上の白い衣装を着たコロス(正確には何パターンの衣装を仕込んでおり、場面によって白や黒、赤や緑にチェンジする)によって表現されている。

決して白鳥には見えないが、コロス全員が白い衣装にチェンジすることで白鳥を見立ている。一人一人が一つ一つの羽根だよね??素晴らしい発想!

クレーターの穴の外からローエングリンが、半分に分かれたコロスの中央から降りてくる演出になっていて、映画館といえどもコーラスもオーケストラの迫力が凄く、圧巻だった!

最初から最後までコロスがめちゃくちゃ良い仕事をしていた。

ライトモチーフという専門用語を学びましたが、ローエングリンが登場する時や、ローエングリンの話をする時にはプロローグの曲が流れ、オルトルートが登場するシーンでは白鳥の湖のライトモチーフ?1小節?が使われているのが印象的だった。わざとなのか偶然なのかは分からないけど。

結婚式の定番の曲もローエングリンだったことに初めて知った。

主要キャストの表現もめちゃくちゃ良くて、何度も書きますが、見てくれは関係ない。役の表現力が素晴らしかったので、ローエングリンの世界観がめちゃくちゃ伝わってきました。

特にオルトルートを演じられた方がめちゃくちゃ良かった!

オルトルートは魔女で、エルザの弟を白鳥に変えた張本人なわけだけど、ただの悪役ではなく俗世間の象徴だと言えるので、人間の内面表現がめちゃくちゃ素晴らしかった!

エルザを演じられた方は、オルトルートの方と違って優しい顔つきの方だったし、ソプラノも美しかったし、疑念がわく表現が素晴らしかった。

ローエングリンを演じられた方も、そのままやん!?って言いたくなるくらい俗世間と一線を画した存在感があって素晴らしかった。

一見、勧善懲悪ものと思わせておいて実はそうでないのがワーグナー天才!としか言いようがない。

やはり、オペラも新作オペラは除き、古典オペラは歌舞伎と同じで、粗筋を知らないと楽しめない芸術だと思った。歌舞伎だとイヤホンガイドですが、オペラは字幕がなかったら何を喋っているのか分からない。メロディーだけでは楽しめない。

昨今の古典オペラは、現代風の美術で上演されるのが主流で、日本とイタリアが古典的衣装を着て上演していると聞いたことがありますが、ローエングリンに関しては現代美術と衣装で正解だと思う。

騎士や白鳥がリアルだったらきっとこんな感想にはならなかったと思う。

舞台設定が月だったことが大きかった。

ローエングリンを観ながら、めちゃくちゃニコールのドッグヴィルがflashbackされたけど、ラースも少なからずともローエングリンに、いや、ワーグナーに影響受けていると思った。メランコリアなんてまさにそうやん。

これで、何がなんでも新国立劇場の「トリスタンとイゾルデ」観ます!



ラビットホール &

2023-04-22 18:50:05 | 舞台
事故は起こるべくして起こる。

ほとんどの事故は未然に防げる。そのために企業等ではヒヤリ・ハット報告書を利用して事故に至らないように未然に対策をとるようにしている。

だが、一般家庭にはヒヤリ・ハット報告書なんてない。日頃の心掛けが大事。

そして、まるで神様のイタズラか、負の連鎖によって予期せぬ事故が生ずるのも、事実起こりうる。


交通事故に限らず、人生にはあの時〇〇していなかったら…、〇〇をしていたら…と、思いもよらぬ結果や最悪な結果が起こると後悔することは多々ある。

この物語のように、様々な要因が重なり、最悪なタイミングで事故死に至ることもある。


誰のせいにも出来ないからこそ、二度と戻ってくることがない命だからこそ悲しみや怒りの矛先を向ける相手がいなくて、主人公夫婦のようにイライラやモヤモヤ感を拭いきれず何ヶ月も何年もその闇から抜けきれずにいる。

子供を失った夫婦の、それぞれの悲しみの癒やし方やベクトルの方向性、前進の仕方が異なっており、あまりにも露骨な価値観の相違。

片や、思い出の品々が悲しみを助長させ苦しみから逃れられないと思っている、片や、思い出の品々や録画を大切にしたいと思っている。

二人の癒やし方は相反する。

なんで私の気持ちをわかってくれないの!?

なんで俺の気持ちがわからないんだ!?

ベッカの母親と妹の言動がさらに二人を追い詰めていく。子供を轢いたジェイソンもまた…。


価値観の相違があるなら離婚すればいいやん。

それならただの実話になってしまう。

そこがやはりピューリッツァー賞を取るだけある展開になっている。


なんだかんだいって、皆相手の気持ちはわかっている。残念ながら、自分第一主義だから、わかって欲しい気持ちが優先されてしまう。

登場人物は皆自分中心型。空気読まない人物ばかり。

ジェイソンの訪問と彼が書いた小説、そして勇気ある告白を切っ掛けにベッカの心に変化が起こる。ハーウイもまた…。

人には人の癒やし方があり、学び方も様々。万人共通の癒やし方はない。

英語の勉強方法もしかり、ダイエット法もしかり、成功方法は人それぞれ。

リスニングラーニングが合っているいる者、英語学習塾が合ってる者、NHKラジオ放送が合ってる者、留学が合っている者、ネイティブスピーカーと一対一が合っている者、外国人がたむろうバーやカフェで酒を飲みながら自然に学習することが合う者、You Tube学習が合う者、

どれが自分に合った学習方法なのかは人それぞれ。絶対はない。

ダイエットだって、〇〇さんのダイエット方法、△△さんのダイエット方法、効果がある方法も人それぞれ。

結局のところ、解決方法は自ら発見するしかない。

万人に有効なセラピーが私に、貴方に合ってるとは限らない。

自分の心を癒やす方法は自ら見つけ出すしかない。


ということで、改装されたばかりのPARCO劇場に行ってきました。

めちゃくちゃ高級感漂う美しい劇場に大変身していてびっくりしました。

フロア面積は以前と変わらないはずなのにめちゃくちゃ広く感じた。

本作は、大阪でも公演あるのは知っていましたが、やはり、あの劇場広すぎませんか?せめて兵芸でやりましょうよ!客席含めて劇場空間だと思っているから、客席数が倍以上あると空間負けすることが多々あるからね。

いやー、それにしても、舞台美術が美しい!新しいPARCO劇場にピッタリなくらい高級感がある美術でそれだけで十分観る価値あり!

まるで、映画版と舞台版がお互い補完するかのような見せ方だったので、舞台版を観るなら映画版も観てほしい。

実際のところ、舞台では表現しきれないシーンがあったり、映画では説明仕切れない設定があったり、舞台版を観るなら先に映画版を観られることを強くオススメします。

一昨年だったか、万里生氏のラビットホールのチケットを取っていたのにコロナで兵庫公演が中止。密かに再演を熱望していたらまさかの藤田版で上演されるという奇跡に感謝感謝。

映画版を観た時はぶっちゃけ面白いとは思わなかったけど、DVDで再度観たら新たな発見があって面白く感じた。

改めて舞台版を観させて貰って、やはり、日本とアメリカの刑法の違いをまざまざと感じる内容ではあったけど、

そんなことより、人それぞれ悩み方が異なるから癒やし方も異なるんよね。

〇〇さんがいいと言ってるからといって、その人に合うとは限らない。

仕事の教え方も、マニュアル通りが絶対正しいことにもならない。マニュアルを読んだら分かるでしょ!は教える側の怠慢だと思うよ。

登場人物は皆、自分第一主義者。

ベッカの妹も母親もなかなかの曲者。ここは映画版と微妙に異なり、圧倒的に舞台版の方が好き。作品の軸を理解しやすい。

実は、映画版を観ていないと、なんで??と思う心理描写があるので映画版もオススメだし見比べても全く問題ないと思う。

映画版ではパラレルワールドがキーワードになっているが、舞台版はむしろ癒やしの手段に過ぎなかったのが意外だった。

人が変わる時って、気付きと学びを得た時なんよね。これでいいと思ったら、そこで成長が止まってしまう。←はい、自分のこと言ってます(汗)


この作品のテーマは、夫妻間の価値観の相違と再生(再出発)だけど、

舞台版では明らかな人格の欠如が描かれていて、どういった過程で穴を埋めていくかが作品の軸になっていると思うんよね。

夫妻円満の秘訣も、それとなしに示唆してる。ま、観てください!としか言えないけどね。

ベッカを演じた宮澤エマさん。おちょやんと鎌倉殿〜の演技しか見たことなくて、癖がある喋り方やな〜と思っていたら、

めちゃくちゃ普通の癖のない自然な台詞回しだったので驚いた。

当たり前だけど、全くニコールが演じたベッカちらつかない役作りであり見せ方でした。感情の起伏もドラマみたいに演技演技してなくて自然だったのが良かった。

ぶっちゃけ、ニコールのベッカの方がもっと自己中だった。エマさんのベッカはめちゃくちゃ共感できるベッカ像だったので、余計、ハーウイとの価値観の相違が切なかった。

そのハーウイを演じた成河君も、ルキーニや私、義経を演じた人だと思えないくらい自然に演じられていてビックリ。やはり感情の起伏や抑えた演技がピカイチだった。

映画を観たときは、ハーウイに同情しまくったが、成河君のハーウイ像には、前に進もうとしているようで実はある一点(過去)に立ち止まっていてベッカよりも悩ましい存在に映った。ハーウイの気持ちも共感できるだけにベッカとの相違が切ない。

ベッカの妹イジー役を演じた土井ケイトさんがめちゃくちゃリアルにクレイジー系な役を演じられていて上手かった!

映画版より登場シーンが多いし、癖も強いし、でも、この妹にしてこの姉みたいな、ベッカの内面を浮き彫りにさせたり、物語を動かす重要役割を担っていたので、本当に上手かった!

ベッカもハーウイも一見地味な存在なんだけど、イジーとの会話によって隠されていた内面が浮き彫りにされちゃうんよね。

ベッカとイジーの母親役のシルビア・グラブさんがめちゃくちゃ面白い。映画版と全然違うキャラクターでした。

結構口が過ぎるので、イライラさせる人物だった。

でもね、母親もまた長年、息子を失った悲しみの闇から抜け出されずにいたことが分かる役柄だったのでそのギャップの演技が上手かった。

ジェイソンを演じた阿部顕嵐君も、一見イラッとさせる人物像ではありましたが、これは明らかに日米文化の違いですが、その発言、おかしくないかい?ヤバくないかい?的なことを言うので、映画より共感出来なかったな…。演技が悪かったという意味ではないです。むしろ、イラッとさせることはそれだけリアルな演技だった証。

完璧な人間なんていない。だからこそ、夫婦関係に限らず補い合わないとね。

とっても上質な空間で上質なお芝居が観れて良かった!

迷われている方はオススメ!


やはり、この日は、せっかく東京に行くなら…ということで、歌舞伎座午後の部を観てきました。

仁左衛門さんと玉三郎さんの与話情浮名横櫛は観ておかないといけない作品なので楽しみにしていましたが、スミマセン、途中寝てしまいました…。目が覚めたら、河原崎権三郎さんがいらっしゃってました。

松緑さんと左近君の親子共演の連獅子は、白鸚さんと松っちゃんのラ・マンチャを観た後だけに何度もウルウルさせられました。

以前、松緑さんと左近君のインタビューを見て、松緑さん自身、お父様とお祖父様を早くに亡くされ親子で連獅子が出来なかったから、左近君には親子共演をしたかったことを言われており、左近君もしっかり松緑さんについていきますと謙虚に話されており、他の親子関係にはない優しさや愛情、敬意を感じる内容だったので、

実際に拝見した連獅子は、あの謙虚な左近君がめちゃくちゃ立派に力強く子獅子を演じられており、めちゃくちゃ感動しました。

リアル親獅子と子獅子の連獅子だったので、まさに子を滝から落とす親獅子の心境と被り、本当にリアルに素晴らしかった。

連獅子って舞踊なのに、めちゃくちゃストーリー性を感じる内容であり、松緑さんと左近君の親子関係を象徴しており、こんなに感動した連獅子は初めてでした。

客席も物凄い拍手が湧いていました。




ラ・マンチャの男

2023-04-19 23:31:57 | ミュージカル
台詞は人を選ぶ。

どんなに美しく、どんなに哲学的で、どんなに素晴らしい台詞であっても、語る人の血と肉が伴ってこそ生きてくる。

ただ語るだけなら、それはただの意味のない言葉。

世界中で愛されたラ・マンチャの男、ドン・キホーテの数々の名台詞たち。

どんなに気高い台詞であっても、今の白鸚さんの生き様には勝てなかったようだ。

白鸚さんの生き様こそ生きたメッセージ。

この俺の生き様を見ろ!

そんなちっぽけなことで悩むな!

与えられた役目があるなら全うしろ!

挑戦したいことがあるなら怯むな!

生かされた命、その命ある限り挑戦し続けろ!

そして、

生き抜け!



白鸚さんとドン・キホーテが心身共に一体化されこれ以上のリアリティーを伴ったラ・マンチの男はない。

私の想像を遥かに超える力強い歌声だった、ラ・マンチャの男と見果てぬ夢。

最初から最後まで涙涙涙。

私の両隣りの方も涙涙涙。

たくさんの勇気を頂きました。

白鸚さん、ありがとうございます。


念願の松っちゃんのアルドンサ。今までの松っちゃんの演技からは想像しえない、見たことがないほどの荒々しく激しいアルドンサ。レイプシーンの、もはやミュージカルの域を越えた表現に胸を打たれました。

そして、まるでマグダラのマリアのようにドン・キホーテに寄り添う姿に、そこには父と娘の関係性はなかった。最初から最後までドン・キホーテとアルドンサだった。

役者魂を感じる素晴らしいアルドンサでした。

白鸚さんと同士でもある上條恒彦さんにも、その生き様にも胸を打たれました。

最初、誰だか分からなかったくらい痩せられており、それなのに力強い台詞と力強い歌声は以前のまま。

荒井洸子さんもまた長年作品に携わられており、白鸚さんも上條さんも荒井さんも、その生き様こそメッセージです。これ以上のメッセージはない。

ドン・キホーテの相棒サンチョを演じた駒田一さん。最初から最後まで、カーテンコールで袖にはけるまで白鸚さんを支え寄り添われている姿に、これ以上のリアルドン・キホーテとリアルサンチョは存在しない。

團十郎襲名の口上で、休演された白鸚さんに代わり口上を務められた左團次さんが、まるで初日が開くのを待つかのように翌日に旅立たれました。

白鸚さんの背中には、吉右衛門も含めたくさんの方の想いを背負われている。これ以上のお役目はありません。

吉右衛門さんと左團次さんのご冥福をお祈りすると共に、お二人の分も無事に大千秋楽を迎えられることを心から祈っています。

白鸚さん、本当にありがとうございました。








笑の大学

2023-04-16 00:07:44 | 舞台
めちゃくちゃ素晴らしかった!めちゃくちゃ愛おしい時間だった!

ということで、実は、三谷さんの舞台生観劇お初でございます。

映画はたまに、舞台は映像では観たことことありますが、なんせ、初めて観た三谷さんの舞台「抜け目のない未亡人」が、ぶっちゃけ書いて申し訳ないですが、お笑いのセンスが私には全く合わなく世間の評判も良かったので、私には三谷さんの舞台は性に合わないんだ〜と思っていました。それ以来、生観劇はめちゃくちゃ躊躇してました。

それがたまたま映像で観た浦井氏が出演していた「ベッジ・パードン」が結構良くて、っていうかかなり良くて…、でも月日は流れ…、

今作においては、

Myブロガーさんがめちゃくちゃ感動されていたので、チケットが取れたら観てみようと思ったら、もちろん完売。

そしたら、たまたま戻りチケットが販売されていたので急いでポチッとして観てきました。
11月からしか観てない大河「鎌倉殿の十三人」がめちゃくちゃ面白かったから、本作も観れたら観たいとは思っていたが、いやー、めちゃくちゃ面白かった!めちゃくちゃ笑わされて、ラストはウルッときた。

プロットは、「ブロードウェイと銃弾」に似てるかなと思った。演劇関係者じゃない人間が脚本に難癖つけることで脚本が徐々に面白くなっていく展開は、ウディ・アレンの「ブロードウェイ〜」と同じだね。もちろん、設定もラストも違うけど全く遠からずだったと思うよ。

いずれにせよ、ウッチーと瀬戸康史君との掛け合いや間がめちゃくちゃ良くてめちゃめちゃ笑わせてもらった。こんなに笑ったの久しぶり。途中ウッチーのギャグに拍手が湧いたり、劇場空間もめちゃくちゃ良かった!

ラストはどういうオチなのか予想がつかないというか、予想したくないくらい2人の掛け合いにめちゃくちゃ和まさせられ、大笑いさせられ、このまま楽しく終わってくれるといいな〜と期待したが、やはり時代が戦時中ということで切なくなる展開だったのでめちゃくちゃウルウルさせられた。

浦井氏の「THE BIG FELLAH」以来のウッチーの舞台。いやー、さすが元祖カメレオン俳優!

「きのう何食べた」のケンジとは全く違う役柄で、全くケンジがちらつかない役作りとアプローチだったので、改めてウッチーの役者魂に感動しました!めちゃくちゃ素晴らしかった!

厳しく堅物の検閲官役だけど、時折垣間見える内面のユーモアさというか、表情がほころぶ瞬間の演技がめちゃくちゃ上手くて、ラストの笑い泣きの演技もピカイチ!

厳格な検閲官なのに、途中、瀬戸君演じる作家が書いた脚本の役を演じる時の表現がめちゃくちゃ上手い!めちゃくちゃ笑わせらせた。絶妙な間でした。

対する瀬戸君もめちゃくちゃ上手かった!実は、普段見ない仮面ライダーシリーズで唯一キバだけは見てたんですよ!藁

ぶっちゃけ、キバの時は中性的なイメージだったので、まさか同じ人物だと思ってなかったよ。全く印象が異なっていた。

今回初めて瀬戸君の舞台を拝見させてもらいましたが、ドラマを見る限り真面目で優等生なお芝居をされる方かと思いきや、めちゃくちゃ吹っ切れた演技をされて、わざとなのかマジなのか分からないが、声が裏返ったり、

イメージ的には、間違いなくカメレオン俳優ウッチーに食われてウッチーのワンマンショーになるのかと思いきや、ウッチーと互角に演技バトルしていてめちゃくちゃ間合いも掛け合いも互角で本当に素晴らしかった!

あー、やっぱ、ケラさんの「世界は笑う」観たかった!

ウッチーも瀬戸君も完全に役と同化していて、もはや演技ではなく本気だったね。

本当に本当に素晴らしい作品と表現力でした。

本当に本当に楽しく、もっと2人の掛け合いが観たくなるくらい愛おしい時間でしたね。

完成度の高い作品でした!

完売だったのにたまたまチケットが取れて、めちゃくちゃ楽しませてもらい、チケットの神様に感謝感謝!

想定外の散財になってしまったが、その分頑張って働いたらエエねん!藁




ロストケア

2023-04-12 14:29:52 | 映画
私なら、作品賞!

長澤まさみさんにも女優賞!松山ケンイチ氏にも男優賞あげる!

柄本明さんもめちゃくちゃ素晴らしかった!エゴイストと同じ俳優さんとは思えないくらいリアルに上手かった!私なら助演男優賞!

そして、綾戸智恵さんもめちゃくちゃリアリティーがあった。エゴイストの阿川佐和子さんもそうだけど、俳優畑じゃないのに演技がリアルって…。絶妙なキャスティングやね!

いやー、めちゃくちゃ良かった!めちゃくちゃ泣かされた!

ということで、予告編を見て、長澤まさみさんの間瞬きしない緊張感がある目の動きと泣きの演技に魅了されて観てきました。

まるで私のために制作して下さったと言わんばかりに、親父と過ごした最期の2年間がオーバーラップされまくってめちゃくちゃ泣かされた。

作品のテーマは、介護する側と介護される側の救済としつつも、日本に限らず全世界共通でもあろう高齢化社会における老人介護に対する社会の闇を露呈する内容でもあったので、

格差社会の歪みが介護社会にまで及んでいる日本社会の闇を浮き彫りにした本当に素晴らしい作品でした。

誰もが思うように、知的障害者を19人も殺害した相模原障害者施設殺傷事件を題材にした作品だと思ったら、原作は事件前に発表されていたので、未来を予見する内容でもあったということですよね。

予告編を見た時から、マタイ福音書の一節 

「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」( マタイによる福音書 7章12節)

を語られていて、てっきり宗教的救済を行おうとしたオカルト要素が強い内容なのかな…と思っていましたが、

いやいやいやいやいやいや、完全に日本社会の闇を露呈する内容でしたね。

はっきり書きますが、安倍元首相が殺害された時、殺害理由が、犯人の母親が行った宗教への高額献金に対する逆恨みだったわけじゃないですか?

国はその後、すぐに宗教に対する高額献金や霊感商法に対する規制を取り決めましたよね?なのに、昔から高額献金は行われていたし、政治家どの癒着だって今に始まったことではないのに、いくら元首相といえどもたった一人の人間なのに、

そのたった一人の人間ために国が動いたんですよ。

ストーカー規制法もそうですが、犠牲者が何人出たら国は動いてくれるんですか?という問題が孕んでいるんですよ。

実際に例の殺傷事件では、45人が犠牲者となり、犯人は死刑確定。これで問題は解決したんですか?他の知的障害と高齢者は関係ないんですか?

昔から施設による介護者の虐待が取り上げらてますが、現実は自宅での家族の虐待が多いんですよ。強制的に施設に入所させて会わないようにさせたら問題解決になるんですか?クビにしたら問題解決になるんですか?

介護疲れによる殺人事件や自殺も昔からあります。何か良くなる対策をとってるんですか?

スタッフの再教育、介護者のレスパイトケアだけでは問題解決しないんですよ。休息と教育だけで人間が簡単に人格者になれると思うんですか?

一体、何人犠牲者を出したら根本的問題を改善するよう取り組んでくれるんですか?

というのが、この映画の核心だと思うんですよ。

お金があったら施設入所できます。お金がなくて24時間のケアが必要な自宅要介護者はどうなんですか?

疲弊した家族以外で、24時間ヘルパーさんが付きっきりで介護してもらえるんですか?介護保険じゃ単位が足りなくなるから1週間も無理だね。そうなると1ヶ月だとほぼ自費だね。結構な額になるよ。お金がないのに。

生活保護の問題も昔から取り沙汰されていますが、映画のように同居して誰かが働く能力があると申請受理されないんですよ。ということは別居すれば不正も可能なんですよ。それっておかしくない?

一体、どれだけ問題が露顕されないと国は動かないの?という話になってくるんですよ。

警察だって同じ。犠牲者が出る前に取り締まってほしくて相談に行ってるのに、事件にならなければ動かないってどういうこと?

根本的におかしくないか?セキュリティを強化したけりゃ自費でボディーガードを雇えってことですか?それもまた格差社会の弊害ですよね?

めちゃくちゃおかしくないですか???

映画の出來事はあくまでフィクションではありますが、伝えているメッセージはめちゃくちゃ社会批判です。問題提起だらけ。そういう意味も含めて素晴らしい作品だと思った。

話を映画にもどすと、

長澤まさみさん演じる検事(母親は施設入所中)とケンイチ氏演じる自称救済者(犯人)の対比の仕方がめちゃくちゃ素晴らしい。

片や裕福、片や貧乏。片や介護の苦しみが分からない、片や苦しみを知っている。

検事も自称救済者も見事に対比されているようで、検事もまた母親を施設に送った(厳密には母親自ら希望した)という意味では、ただ闇を経験していないだけで自分も救済されているんですよね。

殺した殺してないかの違いなだけで、やってることは同じ。


国は、高齢者への尊厳を謳っているが、それも足枷になっているのも事実。要介護者が虐待されるケースもあれば、介護者側が性的虐待をうけているケースもある。

日本では、昔からお客様は神様思想が蔓延してますが、その思想自体が歪みの元なんですよ。勘違いさせる原因だから良くない。お客様も人間です。神様じゃありません!

クレーム言ってくる人間にヘイコラしないといけないのか私には分からない。こちらのミスなら平謝りですが、そうじやない身勝手なクレームに対して謝る必要ありますか?あなたから給料もらってませんから!と言い返したくなる。

介護の問題だけでない日本社会の問題を露顕してる!

結局話が逸れまくりですが、

やはり、ケンイチ氏はカメレオン俳優やね。心優しい介護者と自称救済者の裏の顔の見せ方が上手い!全く別人格ではなく、自称救済者の内面にも優しさが見え隠れする演技がお見事!

予告編の時から魅了された長澤まさみさんの演技もリアル過ぎて、演技の枠を超えてその役の人物そのものだった。

ぶっちゃけ、演技ってね、どんなに上手い役者さんでもリアルな感情には勝てないんよ。まさみさんは、まさにリアルな感情を剥き出しにしてた。間違いなく女優賞!

もうさ、柄本明さんが、めちゃくちゃリアルな存在感があってラストは涙なくして見れなかった。ぶっちゃけ、私自身が柄本さんに救済された。

親父との2年間。まさかの親父との2年間。母親が先に亡くなるとは思ってなかったからね。私の親父は、ずっと入院暮しで最初は転院をくり返した。最期は宝塚の花火が見える療養型の病院で、2回屋上から花火を見たね。その病院で亡くなったので施設入所と変わらない。

その頃は、兄貴が遠くに住んでいたので洗濯物や着替え、オムツを病院に持っていったり、他病院への送迎は私がしていた。

母親が亡くなった時には既に親父は入院生活だった。母親が亡くなるまで母親が面倒をみていた。私は全くお見舞いに行かないくらい毛嫌いしていたから親父との交流がほとんどなかった。

それが、まさか母親が先に亡くなり、親父の面倒をみるなんて思ってもみなかった。

兄貴の結婚式の時は、車の中でオムツの交換したり、他病院に行く時はドライブしてケーキを食べさせたり、親父でなくて自分の子供を養ってる感覚だった。

兄貴と話合って、親父には母親の死を長いこと伝えていなかった。面会に行くたびに「おかあさんは?おかあさんは?」と聞くから正直に話せなかった。

でもね、ずっと黙っていても本人も薄々分かっていると思ったから、外出の時に兄貴に黙って実家に連れて帰ってお仏壇を見せた。親父は涙も見せず手を合わせてたね。一緒にケーキ食べたね。これは完全に私のエゴですが、糖尿病の親父にケーキを食べさせた。美味しそうに食べるんからね。たまの外出だからちょっと贅沢させた。

親父が入院中は、宝塚をほとんど観てなかったので、いつも大劇場を車で素通りして病院に行っていましたが、花火は2回見れたね。看護師さんが気を利かせてくれて私も一緒に花火を見た。いまでもポケモンの花火が忘れなれない。

2回急変があって今日がヤマかもと言われ、兄貴と兄嫁さんの3人で24時間交代でそばにいましたが、一回目は奇跡の復活で人口呼吸をつけることなくそこから1年生きた。

2回目は、兄貴と一緒に看取ることができた。実は、その時には既に強制的休職中だったから、火葬されるまで2日以上あったのでずっと棺桶のそばで折り紙折ってた。

なんの因果か、10代20代の頃は親父に反抗しまっくてほとんど関係を断ち切っていたのに、まさか親父と濃密な時間を過ごす日がくるなんて思ってもみなかった。

亡くなる数週間は全身に管が通されていて呼吸も苦しそうで見てるのも辛かったけど、親父の生き様を見て過去に抱えていた憎しみが雪のように溶けていった。

親父も親父で苦労して生きていたんやもん。酒を飲むと豹変する暴力親父ではあったけど、酒を飲まなかったら優しいとこもあったしね。

若い頃は、親ガチャだと思っていたけど、今は子ガチャやなって思う。こんなワガママ息子にたくさんお金を使ってくれたと思うと感謝の言葉しかない。

長くなりましたが、柄本さんの演技にはその想いを引き起こす力があって、ラストは本当に号泣に近いものがあった。

本当にあの折り鶴と手紙が私を救済してくれた。
 
柄本明さんに助演男優賞、作品賞も上げたい!

人殺しは良くないのは当たり前。検事の台詞も真理。

だからこそ、格差社会の歪みを正していかないと、もっともっと犠牲者が増える。

明日は我が身。今度は自分たちが高齢者、介護される側に回るんだから、子供たちを犯罪者にさせない、我々も犯罪者にさせない世作りが必要。

そのために今、何が出来るか?

真剣に考える時がきたのではないのでしょうか?