「ジャンヌ」

2013-09-29 00:18:45 | 舞台
なんか、女版半沢直樹やった。色々と興味深いものがあって、そこそこ面白かった。

ジャンヌ・ダルクって、フランスの危機を救ったのに魔女として火炙りの刑に処された悲劇のヒロインだけども、鵜山さんが描く?バーナード・ショーが描くジャンヌ・ダルクは、いわば自由思想の象徴であり、ストーリーはまさに、「半沢直樹」で描かれているような正義感に溢れた熱血銀行マンvs.悪徳上司の闘いのように、神の言葉を信じるジャンヌと彼女を取り巻く社会との争いを描いたそんな内容のように思えました。

どっちかというと、このジャンヌは役が降りてきて演じる…そんな劇的な役でなく、「人形の家」で有名なイプセンや「三文オペラ」で有名なブレヒトの作品に登場するような社会派なイメージの役柄のように感じました。

笹本玲奈さん演じるジャンヌは、それはそれは神の声にクドイくらいにまで従順で、今の社会なら爪弾きにされても仕方ないくらいの傲慢さがあり、その傲慢さが余計彼女を取り巻く社会の矛盾を浮き彫りにさせる役割を担うので、それはそれは見事なジャンヌ像でした。

本当、女版半沢直樹みたいな役で、最終回の直樹の島流しとジャンヌの火炙りに至るまでの流れがよく似てると思いました。言ってること・していることは間違ってはないけど、“出る杭は打たれる”じゃないけど、現社会では通じない歯痒さと矛盾さがどちらにも共通してるように思いました。

イプセンもブレヒトもそうなんだけど、社会の矛盾とか人間の集団深層心理を見事に炙り出した戯曲を書いているので、この時代の劇作家はよく似た思想を持っているな~と思いました。

この「ジャンヌ」のオチなんて、まさにブレヒトの「セチュアンの善人」みたいに皮肉たっぷりで、そのユーモアたっぷりな見せ方にマジ笑えました。

脚本で個人的に関心してしまったのが、ぶっちゃけ私はジャンヌは神から何の言葉を聞いたのかその具体的内容に興味があったんですが、その言葉の内容より、何語で聞いたのかが宗教裁判の審議内容になっていた点が思わず“上手い!”と思ってしまいました。シェークスピア作品みたいにキーポイントなる内容ではないんですが、的を射てる点に感心してしまいました。

そう、観るまでは、この戯曲では神の言葉に非常に関心があったんですよ。「イギリスを倒せ」と言ったのか「イギリス軍をフランスから追い出せ」と言ったのでは意味が全然違うからね。イギリスを倒せなら殺人ありきじゃないですか?でも、追い出せなら平和を主張してるからね。詳しい台詞は忘れましたが、この作品で語られた内容は平和を主張している方でした。

もし、イギリス軍を倒せなら、その神の声は嘘だと思うんですよ。倒せは確実に殺人目的やもん。そんな神の言葉なら私は悪魔の言葉だと思う。

やはりそこは翻訳家さんが上手かったのかどうかは分かりませんが、さすがノーベル文学賞を獲るだけはあると思いました。

戯曲的にも、ジャンヌを魔女か異端者かで審議する点も良かったし、極刑を免れるためのサインの見返りが神の声と反している点も良かったし、本当にジャンヌは神の声を聞いたんだと思わせるくらい、社会の矛盾いわば民主主義の矛盾を浮き彫りにしている点は非常に上手い戯曲だと思いました。

実は、ブレヒトもジャンヌ・ダルクを題材にした戯曲「堵殺場のヨハンナ」を書いていて、これはまさに資本主義経済の実体、労働者の貧困の原因を追及した内容でめちゃ共産主義色が強い内容なんですが、めちゃショーの「ジャンヌ」にも共通するものを感じました。

私にとってブレヒトは、さだまさしさんの♪雨やどり♪の歌詞じゃないですが、私が神様を信じていなかった頃に大好きな劇作家だったんですが、マルクス主義に影響されていたブレヒトもショーも、今は神様の存在を信じている私の視点から考えても二人は間違ったことは書いてないと思いました。私は共産主義じゃないですが、全部読んだ訳じゃないですが、マルクス哲学自体は間違ったことは書いてないと思います。

世の中の仕組みや流れはちゃんと見ないといけないなとつくづく感じました。分かっていて社会に流されるのと分からずに流されるのとでは覚悟の仕方が全然違うからね。

ということで、玲奈さん以外は皆男優という異色の作品ですが…

いや~、エエ声が揃った役者さんばかりでめちゃ耳福でした。舞台はやはり声が命ですね。しかもめちゃ豪華な役者陣!初めての方や懐かしい方々。この役者陣でどうして蜷川さんよりチケット代が安いのか?理由が分からない。

今日は偶然にもトークショー付きだったんですが、舞台の伊礼君を観るのは瞳子さんの「AIDA」以来だったんですが、めちゃくちゃ声も演技も素晴らしかった!でもトークショーで…イメージが…。雰囲気も喋り方も何もかもが竹内力兄やんみたいで「あ゛~↓」状態でした(涙)絶対「ミナミの帝王」の銀ちゃん、伊礼君にピッタリ!だと思う(笑)

ストレートプレイが初めてだという玲奈さんも、初めてだとは思えないくらい、何度も書きますが、ウザイくらいに神の声に従順な見事な役作りでした。その盲信さに迫力があってとても良かったです。

村井國夫さん、中嶋しゅうさん、今井朋彦さん、新井康弘さんに、馬場君など懐かしい方々、初めての大沢健君、浅野雅博さんもとても素晴らしい存在感でした。

トークショーは、客席の後ろで村井さんが見ているという異様な雰囲気の中で、伊礼君が一人ぶっ飛んでました(笑)舞台の伊礼君はそれはそれは格好良かったのに…m(__)m

トークの内容で印象的だったのは…、やはり伊礼君のそれ言っちゃいかんだろトークですかね(笑)内容は書けませんm(__)m

あとは、芝居中に歌いたくなることないか?というテーマで、ストレートプレイ畑の浅野さんに、ミュージカル畑の玲奈さんが振った時は大爆笑でした。歌いたくなるわけないじゃん!?(笑)玲奈さんって意外と天然入ってます???(笑)

神の声を聞いたことあるかというテーマの中で、今井さんがいい事言ったのに、伊礼君の「自慢ですか?」の返しはアウト!!!ダメダメ!(笑)

私はね、閃きは神の声だと思う。あ、守護霊の導きかな…?(笑)

関西は明日までです。特にブレヒト好きな方にオススメします。

今日のまとめ:バーナード・ショーの「ジャンヌ」は意外と社会派心理劇です。私は女半沢直樹だと思ったんだけどね…。どうでしょう…?

「京鹿子娘二人道成寺」&それから…

2013-09-23 21:05:47 | シアターライヴ
本当は今日、花組の千秋楽、みーちゃんの大劇場最後を見届けようと当日券狙いでムラに朝早く出向いたんですよ。

ところが、到着した7時半の時点でもう既に駐車場まで列が並んでいて、立ち見券も買えるかどうかも微妙な位置だったので諦めました(涙)

マジ恐るべし祝日千秋楽。ここ数年、確か千秋楽が祝日なんてなかったんとちゃうかな…?7時半なら大丈夫だと思っていたのが甘かった…。

でも、いくら祝日だからといえども、みーちゃんのサヨナラの日にムラにこんなにたくさんの人が集まっている光景を見ると、敗北感も清々しいものがありました。ヅカファンとしては嬉しい限りです。ということは…、宙組の千秋楽もかなりヤバくなるね。次は悠未さんのサヨナラショーがあるもんな…。

ということで、予定を前倒しして映画館に行って観てきました。

先月観た藤間勘十郎さんの素踊りの「~娘道成寺」と打って変わって、歌舞伎版はやはり色んな意味で別モノでした。しかも一人でなく二人で踊るから余計別の作品って感じがしました。

勘十郎さんの時はイマジネーションを掻き立てる内容でしたが、やはり歌舞伎版は“型”が重要というのがよく分かる内容でした。

歌舞伎の化粧、綺麗な衣装、しかも衣装替えが何回もある。その上で二人で合わせて踊る。踊る役者さんは、玉三郎さんと、私は二代目玉三郎と睨んでいる菊之助丈との共演。ヴィジュアルはもうそれはそれは完璧なお二人でした。

ただ…ぶっちゃけ書いて申し訳ないですが、やはり作品が平成18年度版だけあって、お二人の舞の呼吸に時折粗さが目立ちました。水泳のシンクロ並みにとまでは言わないけど、もう少し息がピッタリだと良かったのにな~とついつい思ってしまいましたm(__)m

ぶっちゃけ、今年歌舞伎座で上演されたのが観たかった…。明らかに写真からでも伝わってくるものが違ってたからね。

それはそうと、お二人の踊りが、静から動への流れていく様は、“型”あってこそ見応えなるものがありました。そう思うと呼吸を完璧に合わせるには長いから、非常に難しい演目なのでしょう。

個人的には、“型”重視の歌舞伎版より、イマジネーションを掻き立たせてくれる素踊りの方が好きですね。そもそも“型”重視だと心が見えない…。

それから、「~娘二人道成寺」…、何故に二人で踊るようにアレンジされたのか観ていて非常に気になった。一人だけで踊るシーンもあって、まるで宝塚の「風共」のスカーレットⅠ・Ⅱのようにも思えました。もちろん生霊にも思えたけども、アレンジの仕方が歌舞伎にしては斬新な発想だと思いました。これって、女形二人ver.だけでなく男女二人ver.もあるんですよね…?元々、能に興味があった作品だったけども歌舞伎版も興味深いものがありますね…。

なんか、歌舞伎通じゃないのに生意気なこと書いてすみませんでした。何気に宝塚も宣伝してしまい、申し訳ありませんでしたm(__)m

今日のまとめ:歌舞伎に限らず、舞台は生に限る。


みーちゃんへ。

本当は今日二回目の観劇をして書きたかったんですが、最初に書いたようにたくさんの方が並んでいたので諦めざるを得ませんでしたm(__)m

みーちゃんは、私は、タカラジェンヌとしてだけではなく、一役者として、間が上手い数少ない役者さんだと思ってます。上級生や専科、ましてや外部でも、お芝居は上手くても間がイマイチな人はたくさんいます。でも、みーちゃんは本当に上手い!

初めてみーちゃんの間の上手さに関心したのが祐飛さんの「ヴァレンチノ」でした。大上級生の祐飛さんと引けも劣らず対等に肩を並べているみーちゃんに大変感動しました。見た目は地味なのに見せ方が本当に上手い!m(__)m

ぶっちゃけ、どんなに演技が下手であっても経験を積めば良くなるもんです。でも、間の上手さは経験だけでは身に付くものではないと思ってます。私が思う“間”とは、いかに観客を退屈にさせない時間を作れるか?保たせられるか?演技で惹き付ける時間だと思ってます。みーちゃんはそれが長けている数少ない役者さんです。

演技巧者な方でも、役の感情の流れに乗せて自然な間を創る人はたくさんいますが、みーちゃんのように計算して間を創ることのできる人は本当に少ないです。やはりこれは大空組で培ったものなのか、元々の素質なのかは分かりませんが、みーちゃんの間の上手さはピカイチです。かつてのトップスターには、スターオーラだけで間を保たせていた方は結構いましたもんね。それを思えば、みーちゃんなんて、トップスターよりトップだと思います。

みーちゃんの演技力や間の上手さは女優さんとしても活きると確信しているので、卒業しても役者人生だけは卒業しないで頂きたいです。

今回のみーちゃんの役は、今まで見たことない超ワル男なので、不条理だけど観ていて気持ち良かった。男役冥利に尽きる役だと思ってます。最後ぐらいは善人役の方が良かったのかもしれないけど、演劇オタクはこういう性悪な役が大好物なんですよ(笑)違和感なく演じてしまうみーちゃんが本当に格好いい!

たまたま、テレビの「Cafebreak」でみーちゃんがゲストだったのを見て、「オーシャンズ11」のポーターからイケメンに変わる瞬間の映像が流れた時は、やはり惚れてまうものがありました(笑)見せ方を良く分かっている素晴らしい瞬間でした!本当に格好良かった!

みーちゃんは花組生として卒業されますが、私にとっては永遠に大空組の一員です。大好きだった大空組が解体され、祐飛さんを支えた方達が次々に卒業していくのは本当に淋しいですが、みーちゃん、大劇場卒業おめでとうございます!(大粒涙)

東宝大千秋楽の日まで、たくさんのお客さんやファンにみーちゃんオーラで威圧感を与えて下さい!

みーちゃんのファン関係なく、東宝で観劇される皆さん、みーちゃんの悪役ぶりを楽しみにしていて下さい!

「UPSIDEdown」

2013-09-17 23:47:19 | 映画
タイトル、私なりに演出してみました(笑)

作品的には嫌いではない。「ムーラン・ルージュ」を思い出す雰囲気があって、実は結構泣けた(笑)ただ、ラブストーリーとしてはピュアさがあって悪くなかったけど、二重引力の演出がイマイチだった…。

ストーリー的には、愛は地球を救うじゃないけど、愛は相対する惑星をも隔たりをなくす…みたいな感じは良かったです。「ロミジュリ」の世界観にも似ていてそれはそれで良かった。

主人公二人の名前が、“アダム”と、イヴでなく“エデン”なのかがラストで分かる内容で、まさに旧約聖書の創世記の始まりまでを描いたようなそんな内容にも思えました。

ただ、脚本演出的に、主人公二人が“賢者の山”にいるシーンは上手に引力の法則に従った演出だったので映像的にも綺麗で良かったんですが、それ以外の場面が引力の法則に明らかに矛盾していると分かる演出になってしまっていて、せっかく主人公二人に感情移入していたのにそれを邪魔する要因にもなってしまったのが残念でなりませんでした。あまりにも不必要に引力や重力に意識し過ぎやったと思う。

映像的には、その重力や引力が見所なのは分かるけど、明らかに矛盾だと気付かせる要因となるものは排除して欲しかった。

ネタバレにならないから書きますが、内臓はどうやねん?ってツッコミたくなった。内臓は引力や重力に従ってないのは明らかにおかしいやろ!って思う演出だったので、ついつい冷めてしまうんですよね…。

ついでに書くと、双子惑星と言いながら、同じ人間同士のように見えても、地球人と宇宙人くらい全く別の人間同士の設定にもそもそも無理があったのかもしれない。ま、そうでないと映像的に面白味に欠けるけど、矛盾があるのはね…。

恋愛というのはそれだけで十分引力の法則に従っているんだけど、お互い実生活上の重力が邪魔して普通の恋愛ができない。それが映像的には面白味なんだけど、脚本的にも明らかな矛盾や説得力に欠けるものがあって、同じ過ちを犯そうとする二人にもイラッときたりで、強引で綿密さのない展開が本当に残念だった。ファンタジーならとことんファンタジーで攻めないとアカンで。現実的要素は極力避けないとね…。

発想は非常に面白いんですが、明らかにこの世では映画のような二重引力は未来においても存在しないって証明する結果になってしまったと思います。ファンタジー作品を創るなら、ひょっとしたら未来にも起きるかも…と想像させるくらいのものがないとね…。と私は思います。ま、基本私はファンタジー作品は苦手ですが…。大人向けなら別ですが…。

エデンを演じたキルスティン・ダンストが「メランコリア」の時も思ったけど、非常にキュートで良かったです。かつて「スパイダーマン」の時は残念な存在だったのに、全く映像の邪魔にならない綺麗さがあってエデン役にピッタリでした。

アダムを演じたジム・スタージェスも、実年齢を疑いたくなるくらいピュアな青年像を作り上げていて、それこそ「ムーラン・~」のユアンを思い出すくらいの好青年ぶりでした。

発想・映像・ヴィジュアル・ラストは本当に良かったのに、ホンマ膨らませ方がイマイチやったな…。じゃあ、何処で泣いてん?って突っ込まれそうですが、それはまさに主人公二人のピュアさにです(笑)実はそれだけじゃなく、脚本はイマイチでも描こうする世界観はやはり泣けるものはありましたね。

今日のまとめ:なんか、同じことばかり書いてすみませんm(__)m

二重引力じゃなく、パラレルワールドとして描いた方が良かったかもね…。「宇宙戦艦ヤマト」じゃないけど、もう一つ地球があるみたいな…。それだとありきたりやな(笑)ま、双子惑星というのがキーワードやからね…。

追記:取って付けたこと書いて申し訳ないですが…、

先日の台風被害に遭われた多くの方々にお見舞い申し上げます。京都の観光地嵐山があんなことになるなんて信じられません。

台風や津波、集中豪雨に限らず、日本で竜巻なんて近年の自然災害の怖さを改めて思い知らされてます。

私が若い頃は台風三十号近くのたくさんの台風が何回かあったのを覚えてます。その頃に比べたら台風の数は少ないですが、あまりの異常気象に驚きが隠せません。いくら温暖化のせいだといえども、私はこれはなんらかの日本の未来に対する警告に思えてなりません。どうか自然を自然のままに、これ以上もう破壊などの自然に歯向かう行為だけはやめてもらいたいです。意味不明なこと書いてすみませんm(__)m

花組「愛と革命の詩」「Mr.Swing!」

2013-09-10 23:54:33 | TAKARAZUKA
このお芝居で景子先生が描こうとする世界観は大好き。めちゃ大好物です!(笑)

フランス革命ものはどの作品にも共通するのか、「スカピン」「ベルばら」「二都物語」のプロットをなぞりつつも、「エリザベート」「シラノ・ド・ベルジュラック」「レ・ミゼラブル」、しいては遠藤周作の「沈黙」、そして「ガラスの仮面」の世界観もあって、まゆさんと蘭ちゃんの役の関係性はまさに北島マヤと紫の薔薇の人でした。めちゃ大好物でした(笑)

まゆさんと蘭ちゃんの役柄に関しては何も文句ないんですが、ただ、みりおの役があまりの中途半端な描かれ方なので、みりおが気の毒でならなかった。同じことがみつる君にも言えるんですが、ファンは、特に私はね、贔屓の出番の多さより、役に懸命に生きる贔屓が見たいんですよ!みりおもみつる君も中途半端な人物像で、これで役作りをしないといけない二人が見ていて可哀想だった。

ぶっちゃけ書くと、みりおの役は、みーちゃんの役と分離させない方が良かったと思う。合致させたら、それこそショーヴランになってしまうけども、分離することで、みーちゃんは美味しい役になったけど、反対にみりおのカルロが“オマエ何がしたいねん!”って言いたくなるくらい中途半端な人物像に見えてならない。

革命派の手先となって、自分の理想とする自由思想がこれで正しいのかどうか自問自答するなら、そこの葛藤を強調して、裁判やマッダレーナに不必要に絡ませないで欲しかった。後半の無駄に出番が多く、無駄に主役二人に絡むからカルロの気持ちの変化に説得力が欠けてしまう。

みつる君のアンドレアの弟も同様に、最後面会に来るのはな…。メルシー伯爵みたいで不自然。あんなに兄と対立した考え方をしていたのに、兄弟だからといって何の説明のない兄弟愛にも説得力が欠ける。そもそも兄が逮捕されることを密告しておいて自分は逮捕されないのか?って思ってしまった。

この二人に関しては出番の数より、役にもう少し肉付けして、ちゃんと心の変化をワンシーンとして見せてくれたら、存在価値が見出だせたと思う。

そういう点で考えると、ダイモンやみーちゃんの役が出番が少なくても単色な役柄だから非常に美味しい役になってしまう。みりおにも二番手としてちゃんと美味しくしてあげないと可哀想。

脚本に関してはそこだけが残念でならなかった。後はもうル・サンク買おうかと悩んだくらい、景子先生が選ぶ言の葉に癒されてました。

まゆさんのアンドレアと蘭ちゃんのマッダレーナ二人とも、景子先生が選ぶその言の葉の葉脈に真の愛の魂が流れるのが見えるくらい素晴らしい演技だったので大変満足してます。正直、今日観る限りでは蘭ちゃんの演技の何処が悪いのか私には分からなかった。

カオスな時代だからこそ必要な真実を視る力。究極な選択をせまられても貫く誠の愛や志。見事に演じてました。そこは脚本的にも丁寧に綺麗に描けていたと思います。

私だけじゃないと思うけど、今生きている自分って、もちろん家族や仲間や身近な人たちのお蔭でもあるけど、全くの他人の言葉で生かされてるって思ったことありませんかね?

私は、もちろん宝塚の存在や演劇も含め、たくさんの他人さんの存在や、それこそドストエフスキーの描く人物像に生かされていると思うことが多々あるんですよ。ドストエフスキーの描く人物像ってまさに本の中の言葉の中にしか存在してないわけだから、いかに言葉が大事かって思うわけですよ。

この作品には、そういったタイトル通り詩を含めた言葉の大切さを改めて教えてくれるものがあったし、大切な人が一人でもいることは生きる糧にもなるし、真の愛は本当に永遠だと思うくらい説得力のある内容だと思いました。

私が言う処世術とは、本音と建前を上手く使い分ければ、喧嘩や争いをしなくて済む方法。自分が少しでも楽に生きるための手段。この作品に描かれているようにズル賢く世の中を渡って生きたり、誰かを陥れたりするための手段じゃないんです。

踏絵のような究極な選択をせまられる時代では、生きていくために誰かを犠牲にしなくてならない状況もあります。アンドレアやマッダレーナのように崇高な愛を貫く自己犠牲の選択は相当な勇気が必要だと思います。だからこそ、戦争のような究極の選択をせまられる状況を何度も繰り返しちゃいけないんですよ。皆その努力をしないといけないんですよ。そのためには真実を視分ける力が不可欠なんです。

景子先生は、本当に、この世の中で大切なことをたくさんこの「愛と革命の詩」に盛り込んでました。メッセージ性豊かな作品だと思います。何度も書くけど、みりおとみつる君の人物描写だけテコ入れしたら完璧なんだけどね…。

大劇場初登場の松井るみさんの美術や大石裕香さんの振付は、私には斬新さみたいなのは感じませんでした。至って宝塚的だと思いました。振付の内容というよりかは世界のレベルに対応出来る生徒がいることが逆に凄いと思った。あの翼は、ラブシーンの時が照明と相まって非常に効果的でした。他のシーンでも照明を工夫すればもっと見所になると思うんだけどね…。

で、ショーは…、

ぶっちゃけ書くと、うるさい。音量上げすぎ!しかも隣に座っていたおばさん二人がショーが始まった途端に喋りまくっていて、注意しても喋るから全く舞台に集中出来なかった。ついつい“いい加減にしろよっ!”って言ってしまった。同じお金払ってるのにマジありえへん!

ということで、ショーをじっくり観るためにまた観に行きます。

一応、みりお贔屓として言わせて頂くと、みりおは十分華は備わっているけど、花組の中では線が細すぎ。もし、花組でトップになるなら、星組の瞳子さんみたいに小柄でも大きく見せられる技を身につけないといけないね。今のままではセンターに立つみりおが想像できない。完全に組子に埋もれてしまっている。みりおも祐飛さんみたいに変革しないといけない時期がきたかもしれないね。頑張れ、みりお!みりおなら出来る!

今日のまとめ:みーちゃんへのメッセージは次回書きます。一言、お芝居のみーちゃんは超性悪です!めちゃ良かったです!

松井るみさんの美術を担当した作品、ウィキペディアで調べたんですが、結構わたくし観ておりました。最近だと「木の上の軍隊」「春琴」「藪原検校」。遡れば「スウィニー・トッド」。「スウィニー~」はめちゃくちゃ金を掛けてる感があって今でも印象深いです。


雪組「春雷」

2013-09-02 23:26:17 | TAKARAZUKA
眼福!眼福!目の保養になるくらいキャストも美術も衣装も照明も大変みめ麗しゅうございました!

内容的には、「若きウェルテルの悩み」というよりかは、「若き(?)シャルロッテの悩み」と言った方がいいくらいシャルロッテの方が精神的にヤバかったですね。

ゲーテ版「ベルサイユのばら」的な展開で、倫ならぬ恋、許されぬ恋、報われぬ恋がテーマになっているんですが、原作ほどの重さはなく、ライトな仕上がりは原作にこだわりのない方なら文句のない展開だと思いました。

ぶっちゃけ書くと、昨日、学生時代以来うん十年ぶりに原作を、最後の3分の1だけ読んで(半日では読み終えられないと思ったから)、今日の観劇に臨んだんですよ。学生の頃は、なんでこんな本で自殺者が出たんだろう?と不思議に思ったくらいつまらなくて内容も全く覚えてなかったんですが、改めて読むとビックリだらけでしたね。

ラスト3分の1だけで十分分かってもらえますが、原作はまさにゲーテの♪愛の讃歌♪なんですよ。学生の頃は恋愛で自殺なんてありえへん!恋愛の悩みなんて幸せな悩みや!と思っていただけに、今なら分かるウェルテルの気持ちにマジ驚きもんでした。

ゲーテは既に「若き~」で宇宙の愛の思想を描いていたんだと分かったら、ぶっちゃけ、ピストルの件(くだり)からウェルテルの自殺の流れは、原作の展開の方が良かったかな…。

原作の、ロッテがピストルを使いに渡してそれがウェルテルに渡るという流れがまさに「エリザベート」の世界観にも通じるものがあるんですよね。

私なら間違いなく原作通り超悲劇にしますけどね(笑)ウェルテルを狂わせるだけ狂わせて、ロッテの手が触れたピストルで、あの世での再会を期して自殺するって展開。ウェルテルの死を知って気絶するロッテ。結局ロッテは自殺の手引きをしてしまったみたいなもんですもんね。

原田先生のウェルテルは狂気の面が少ないのでイマイチ自殺する理由に説得力に欠けるんですが、あれだと、間違いなくロッテの方が自殺すると思う。

でも、全体で考えると、原田先生版の方が後味スッキリなので、宝塚ファン的にはこちらの方が断然いいと思いました。見終えた後、重い気持ちにならなくていいからね。

なんか、書きたい放題書いてますが、ホント、原作にこだわりがなければ目の保養になる作品だと思いました。

今回のメンバーは、フェルゼン編新公で活躍だった主要メンバーが揃っている上に、主役の翔君、大人のせしる嬢がヒロインで、二番手に大ちゃん!そして、りん姐に、ゆうちゃんさんが脇を支えて、もう私には完璧なメンバーです!取れないと思っていたチケットだったので、まさか観れるとは思っていなかっただけに、今日の奇跡の観劇はチケットの神様に感謝感謝です!

視界に入ってくるもの全て本当に美しいと思いました。加えて、声もいいし、演技も上手いし、音楽もいいし、原作にこだわりさえなければ全然文句のない出来だと思います。

主役の翔君は、相手役、敵役が先輩にも関わらず堂々とした見事な演技でした。

相手役のせしる嬢は大人の雰囲気というよりかは、現実と夢、本心と偽りの狭間で揺れ動く女心を指先に至るまできめ細かく表現されていて、久々に宝塚の娘役ではない女優の演技を観させてもらった感覚です。せしるロッテの方が断然精神崩壊寸前だったと思くらい素晴らしかったです。

贔屓発言して申し訳ないですが、大ちゃんのアルベルトは超カッコ良かった!(笑)ヴィジュアルが本当にシメさんにそっくり!それだけでもう眼福もんでした。

原作のアルベルトは、内に秘めたる嫉妬の炎はあってもそれを決して表に見せない静のイメージだったのですが、大ちゃんのアルベルトはラストに向かうにつれて非情さがみるみる現れてきて、めちゃ二番手としては美味しい役だと思いました。二番手はこれくらい性悪の方がいい。自由思想のウェルテルに対して、名誉や身分、法の規制にがんじがらめのアルベルトを巧みに演じていて、怒鳴り声は個人的に耳福でした(笑)大ちゃんと翔君の身長の差がよりアルベルトのステイタスを感じさせるので、アルベルトは大ちゃんにピッタリでした!大ちゃんの本来の居場所がこのアルベルトの中にあって、本当に素晴らしい敵役でした。歌がめちゃ上手くなっていたのが何よりの感動もんでした!ショーのセンターの大ちゃんも眼福もんでした!

これは完全に原田先生の脚本力なんですが、原作にはないロルフとサビーネの許されぬ恋から裁判までの件が、まさにアルベルトの人物像を浮き彫りにさせる要素になっているので、大ちゃんファンとしては本当に有り難い原作の膨らませ方でした。

そうそう、個人的希望としては、ウェルテルが自殺に一抹の希望を託す理由に、原作を活かして、ザビーネに言い寄るロルフ以外の下僕がいて、ロルフがその男を殺すという件でも良かったのでは…と。なんか、下手に原作を読んだもんだからいろいろ想像が働いてしまいました。すみませんm(__)mゲーテの作品に♪愛の讃歌♪要素があって本当に驚いてるんですよ。どうでもいいことですが…。

それはさておき、りん姐が婆や役と聞いた時は、てっきり「仁」のおばあちゃんを思い出したのですが、ロミジュリの乳母に似た役柄ではあるけども、婆やと呼ぶには非常に品があって全く笑いの要素のない見事な化けっぷりでした!

なまはる君も、ほたて君もウェルテルを引き立てる重要な役なのでとても良い存在感でした。処世術は大事だと思うよ(笑)

雪組の下級生の演技も本当に素晴らしかったです。これ東京に行かなくて本当に残念だと思いました。

今日のまとめ:「南太平洋」の時も思いましたが、松井るみさんの美術はシンプルながらも作品を引き立てる魅力があります。菩提樹もそうだけど、葉の見せ方にも独特のセンスがあって、この作品、美術も見所です。