2023-11-26 14:54:01 | 映画
賛否両論あるみたいだけど、日本史オンチの私には、めちゃくちゃ面白く観させてもらった!

これが世界の北野武監督作品なん?って疑いたくなるくらい、滑稽シーンや台詞にめちゃ笑ってもうた。

そりゃ、「アウトレイジ」の戦国版だと思って観た方にはそりゃ納得いかなかったとは思うよ。

笑い要素満載だが、今はVFXの技術が進んでいるから引きの合戦シーンがめちゃくちゃ迫力があった。私が知る限りでは、黒澤明作品や同じKADOKAWA制作の「天と地と」を彷彿させる合戦シーンがフラッシュバックされた。

合戦シーンはリアルなのに、登場人物の会話が、従来の時代劇の会話や台詞回しではない、どこにでもいる社長と社員の酒の場の会話のような他愛もなく、戦時中の緊張感が全く伝わってこない会話だった。しかもBL要素もあり逆にウケた。

遠藤憲一さんなんて海老名教授のまんまのキャラ。そこに勝村政信さんと岸辺一徳さんが加わったら完全に「ドクターX」やん!?

たけしさん演じる秀吉と大森南朋さん演じる弟秀長の会話なんて、まさに兄弟の他愛もない会話。2人とも完全に観客を笑わせにきてるしね。その2人に並ばさせられている浅野忠信さんは、イメージそのままだったので完全に蚊帳の外。めっちゃ狙いにきてるやん!

まるで、小さい頃に見ていたたけしさんのバラエティー番組の風雲!たけし城をリアルで見てる感覚だった。

コメディーなのかシリアスなのかBLなのか、はたまたホラーなのか、スピリチュアルなのか、なんでもありのバラエティー作品だと思ったら真面目な能舞台の演出もあり、これぞ究極のエンターテイメント!

そうそう、首切りや切腹など血まみれのシーンも多かったが、正直思ったほどグロくは感じなかった。ま、口に刀が一番リアルだった。


NHKの「どうする家康」も斬新な切り口で家康像を描いているけど、こちらもまさに、北野武版戦国時代を斬新な切り口で表現した作品だと思った。

そう、戦争も人殺しも政界トップや金持ちのゲーム感覚で行われている。影武者なんて正にゲームの残機そのものやん。ゲームしないから残機って言葉も知らなかったけど。

武士と農民、武士とそれ以外の者の生活状況や貧富の差もしっかり見せていて、無理矢理年貢を釣り上げたり、殺したり、そりゃ落武者狩りも誕生するわけだよ!と思った。

武士と対照的な存在として、キム兄こと木村祐一さんや中村獅童さんのキャラが登場しているわけだけど、この作品の中でめちゃくちゃ活きている。めちゃくちゃ重要人物。滑稽の象徴でもあり、下層民の象徴でもある。命に対する扱い方を対照的に描いていたのも良かった。

ラストは、まるでウディ・アレンみたいなアイロニーで締めくくるあたりが最高だった。

加瀬亮さん演じる織田信長も、たけしさん演じる羽柴秀吉も、西島秀俊さん演じる明智光秀も、小林薫さん演じる徳川家康もアイロニーの象徴的人物、いや登場人物全てがアイロニーの象徴だった。

そこにきてラストの、あのアイロニーしかない演出は、

たけし節が際立っていた!

定説では、織田信長は本能寺の変で自害、明智光秀は山崎の戦いで藪の中で落武者狩りにあって死んだとされているけど、信長の首も光秀の首も現実として見つからなかったんでしょ?

そもそも、光秀が信長を、秀吉が光秀を斬ったわけではないことは事実なわけだから、

っていうことは、これは映画では描かれていない、私の勝手な想像だけど、本当に死んだかどうか確認できてないってことは、ひょっとしたら落ち延びて復讐してくる可能性もあったってことやん。光秀も秀吉もおちおち眠れなかったかもしれないわけやん。

戦争が終わらない理由も、やはり恐怖心からくると思うんよね。政権や支配権が奪われるかもしれない恐怖。常に勝ち続けていないといけないプレッシャーとかね。

メッセージ性のない作品だと思って観てたけど、実は隠れメッセージがあったのかな?と思った。

ということで、今年のカンヌでも話題だったし、何より、予告で見た、加瀬亮さん演じる織田信長の演技が、これまで歴代の俳優さんが演じてこられたような信長像を優に超えてくるアプローチと、映像からも伝わってくるリアルにグロそうな雰囲気、怖いから観たくない恐怖心と怖いけど観てみたい好奇心がずっと私の中でせめぎ合ってたのですが、

映画を観られた方のレビューを読ませてもらったら、西島秀俊さんと遠藤憲一さんのBLシーンがあると書かれていて、これは観ないわけにはいかない!と腐女子ならぬ腐男子心が優ってしまい(笑)

本当は先に「翔んで埼玉!」を観る予定でいましたが、こっちを観てきました。

BLシーンに関していうと、遠藤憲一さんが「ドクターX」とまんまのアプローチだったから、正直、西島さんが不憫でならなかった(笑)

まださ、武将としての威厳があるアプローチだったらまだマシかと思ったけど、海老名教授と同じキャラだったから2人のシーンはコメディーでしかなかった。西島さん自身、いくら役といえども、やはり抵抗感を隠しきれてなかったご様子(笑)

どっちかというと、加瀬さん演じる信長の方がBL色が強く、設定としても役としても不思議なことに説得力があった。

ていうか、作品としてもLGBT色が強かった。

たしかに、明治維新までは、衆道は普通にあったわけだから男同士のイチャイチャはあったとは思うが、今作では完全にLGBT作品として表現されている。ちょこっとBLではなく、ガッツリBL表現されていた。

信長も光秀も正妻や側室だっていたはずなのに、彼女らは一切登場しない。今や世界の通念となっているLGBT問題を、ぶっちゃけ書いて申し訳ないが、わざと世界の反応を意識したやらしさが見えてきた。まだ、正室や側室との関係性を見せつつ、衆道も見せていたら作品としての見方も変わっていたと思うよ。

それを踏まえても、加瀬さんの信長像のアプローチは、私的にはめちゃくちゃ素晴らしかった!実際の信長もこんな暴君だったのではないか?と思えるくらい説得力がある今まで見たことない斬新な信長像だった。

名古屋弁というか三河弁というか、いずれにせよそちらの方言を巧みに使っていて、あの信長だったら、男も女も蛇に睨まれた蛙状態になって骨抜きにされるだろうなと思った。

西島さんと遠藤さんのBLは、ぶっちゃけ笑い要素でしかなかったけど、加瀬さん演じるあの信長だったら、さもありなん!と思えるくらい暴君さもエロさもめちゃくちゃ説得力あり魅力的でもあった。私なら、助演男優賞あげる!少なくともノミネートさせる。

ワタクシ、本当に日本史オンチなので、戦国武将の関係性はよく分かっていないのですが、この北野武版戦国時代は、登場人物のキャラが際立ち過ぎていてめちゃくちゃ分かりやすかった。

織田信長は、愛すべき君主なのか殺すべき君主なのかも含め、武将たちの腹の探りあい。昨日の友は今日の敵を象徴する登場人物の関係性。ゲーム感覚のように雑に扱われる命。見方を変えたら、本当に皮肉たっぷりの作品だと思った。


今だから書きます。

実は、北野武監督作品、初監督の「その男凶暴につき」以来観たことありませんでした。

なぜならめちゃくちゃリアルだから。

バラエティー番組に出るたけしさんはユーモアに溢れていて好きだけど、映画に出てるたけしさんは、どれも、これが素じゃないの?と思わせるくらいリアルな狂気さがある。北野武監督作品ではないが、「血と骨」のたけしさんなんて、まるで自分の親父を見てるかのようで、演技の枠を越えたそのリアルな狂気さが超苦手だった。

北野武監督のどの作品の予告をみても、たけしさんの怖さが映し出されているから、どんなに世界の評価が高くても観てこなかった。

今回ばかりは、加瀬亮さんの演技とBL要素で完全に釣られてしまった!(笑)

でも、釣られて良かった。本当に面白かったから。

たけしさんの秀吉像には、外面に全く狂気さがないので安堵したくらい。むしろ、内面に狂気さが滲み出ていた。

キャスト陣は、加瀬亮さん筆頭に、本当に一人ひとりのキャラが際立っていた。

ほとんど台詞がない森蘭丸役の寛一郎君ですら光輝いていた。

弥助役の副島淳君なんて、彼の存在もこの作品のアイロニーを象徴する人物だった。賛否両論あるキャスティングだと思うかもしれないけど、アイロニーがテーマなら見事なキャスティングといえよう。

キム兄の、そのまんまやんっ!?的な存在。

中村獅童さんの、憎めないおバカキャラに徹底した役作り。

小林薫さんの見事なタヌキぶり。

完全チョイ役の柴田理恵さんと六平直政さんの圧倒的なキャラと存在感。

役柄的には悲劇のヒーローなのに、荒川良々さんが演じたらなぜか滑稽に見えてしまうアイロニーぶり。

津田寛治さんのスピリチュアル的存在感。今村昌平監督の「うなぎ」がフラッシュバックされた。

上記の方々と、たけしさん、大森さん、遠藤さんがコメディー要素の住人であるなら、シリアス要素の住人の

西島秀俊さん、浅野忠信さん、桐谷健太君、岸辺一徳さん、大竹まことさん、寺島進さん、勝村政信さんの方々は、作品を締める役割を担ってました。

144分全く飽きることなく楽しめた。

だからといって、これからも北野武監督作品を観るかどうかは分からないけど…。


レディマクベス

2023-11-24 18:39:40 | 舞台
めちゃくちゃ難解なストーリーだった。最初から何を喋っているのか理解出来なかった。

を前提に、いつものごとく感じたことを書いていきます。

途中から見えてきたのは、マハーバーラタ戦記と同じく、どうやったら戦争を終わらせることができるか?をテーマにしていること。

武力によって敵を完全制覇するか?慈悲の精神で鎮めるか?

現王ダンカンもマクベス夫人も、頭の中は完全制覇しか考えていない。あれっ…?肝心のマクベスは??

そう、本作は、シェークスピアの「マクベス」のプロットだけ拝借して、登場人物の関係性は、少ない登場人物に合わせて再構築されている。

明らかにシェークスピア版にはないマクベス夫人の出自が語られたり、娘までいる設定。

シェークスピア版とは名前が同じでも性別が逆であったり、マクベス夫人はダンカン王とは血縁関係ではないが、精神的な父娘の関係設定になっている。

それぞれの登場人物は、しっかりシェークスピア版の誰かやプロットに当てはまっている。

そして、時代背景がまるで現代社会にタイムワープしたと言わんばかりに、現代社会で使われる用語やアイテム、シチュエーションで語られる。ワンルーム?紐のついたペン?書類?事務処理?具体的な単語は忘れたが、明らかにシェークスピア版には出てこない単語やシチュエーションの数々。

シェークスピア版の時代でもあり、現代でもあったり…、摩訶不思議な時代設定。

粗筋を読んで見えてくるように、ユリちゃん演じるマクベス夫人は、元軍人設定ではあるが、明らかに現代社会を象徴した人物でもある。

出世欲があるキャリアウーマンが結婚と出産を機に第一線から去就せざるをえず、復職したくてももう第一線では働けない女性の象徴。

アダム・クーパー演じる夫のマクベスは、まるで戦争によってPTSDで精神を病んでいるかのごとく軍人としての勇ましさの微塵もかけらもない。これは、現代社会のストレスで鬱症状に苛まれている者の象徴ともいえる。


魔女の予言、正確な台詞は忘れたが、

女から生まれた者でお前に敵う者はいない。

親を殺した者は眠れない。

といった予言を受けるのは、マクベスではなくマクベス夫人のほうである。

ダンカン王を殺すのはマクベスではなくマクベス夫人。そして、マクベスは…。

そして、物語は、シェークスピア版と同じように予言を覆していく。

最終的に投げかけられる問いは、

あなたならどうする?

ここには、どうやって戦争を終わらせる?どうやって社会を平穏にさせる?という問題提起がある。

この物語の主人公は、もちろん、ユリちゃん演じるマクベス夫人ではあるが、作品としてのキーパーソンは娘。

娘こそ、まさに現代社会の我々の象徴。未来を変えるのは首相でも大統領でもない、我々国民一人ひとりというメッセージがビンビン伝わってくるようだった。


ということで、ユリちゃんとユリちゃんが敬愛するアダム・クーパー競演の舞台を観てきました。

色々書きましたが、本当に状況把握するのが大変な作品だった。

時代はいつ?あなたは誰?何を喋っているの?理解に苦しむものがあった。

おそらくこういうことかな…?と思いながら観てましたが、間違いなく、シェークスピアのマクベスを拝借して、現代社会の問題点を浮き彫りにした作品だと思いました。

いくら雇用均等法で女性の社会進出が認められていていても、まだまだ出産によるキャリア断念や社会復帰の困難といった課題が残っている。

女性の社会問題だけでなく、繰り返される戦争や現代社会における不穏な状況も描いた作品でもあると解釈した。

ユリちゃん演じるマクベス夫人は、まさにMr.マクベス夫人とも言うべき上昇志向の強い女性である。出産によりキャリアアップを断念し、夫マクベスに思いを託すが当てにならない。もちろん、夫を軽蔑、蔑ろにしているわけではないが、台詞にはないが、もし私が男だったら…という強い思いが見えてくるのは役どころ。

アダム・クーパーは、やはり、日本語ペラペラではないことを最大限に活かした役どころでした。精神を病んでいる時は、心に秘めた想いは簡単には口に出来ない。マクベス夫人に訴えても理解してもらえない恐れ。男はかくあるべしという抑圧に苛まれているのが見えてくる表現でした。実は、マクベス自身が平和の象徴の鍵を握る人物だったのではないか?と思えるくらいアダム・クーパー本人の優しさが溢れでている役どころでもありました。

2人の娘役の吉川愛ちゃんがめちゃくちゃ自然で上手かった。発声が素晴らしいかった。わざわざ娘設定にした理由がラストで明白になるわけだけども、ストーリーテラーの役割もあり、また観客の代表的存在でもあるので、表現がお見事でした。

マクダフ役の鈴木保奈美さんも、芸能界復帰してまだ間もないのに、めちゃくちゃ貫禄と安定感があって素晴らしかった。発声も良かった。シェークスピア版では、魔女の予言を覆してマクダフを殺すマクダフを、女性に置き換えた役どころではあり、シェークスピア版を踏襲した役柄ではないが、ユリちゃんと敵意剥き出しなのが観ていて心地良かった。女性同士のプチバトルは演劇の醍醐味でもある。

マクベス夫人の幼馴染役のバンクォー役の要潤さんの安定感。

マクベスの指揮下の女軍人のレノックス役で、何度も死んでは生き返る不思議な役どころ(出番が少ないのと、人手が足りないからと思われる)の宮下今日子さんの勇ましさ。

マクベス夫人に殺されるダンカン役の栗原英雄さんの威厳さ。

たった7人で、シェークスピアのオリジナルマクベスの世界観と新たに脚色されたレディマクベスの世界観を融合した、理解困難な台詞の数々と、まさに実験的な作風の本作を作り上げていて、アダム・クーパーに至っては母国語でない役どころ。英語で喋るシーンはあったが…。

作品のテーマは、女性の自立というより、それも含めて、どうやったら社会をよく出来るのか?生きやすい世の中にできるのか?を問うた作品だと思った。

演じる側も観る側も本当に大変な作品だと思いました。


マハーバーラタ戦記

2023-11-16 01:03:00 | 古典芸能
芝のぶさんの圧倒的な存在感!見事な○○落ち!

丑之助くんの、とても子役の演技とは言い難いくらい、めちゃくちゃ役者魂を感じる見事な台詞回し!

そして、何と言っても、菊様と隼人氏の圧倒的なイケメンぶり!眼福眼福!

名前は世界史で学んだけど、内容は全く知らないインドの大叙事詩マハーバーラタの歌舞伎化。

粗筋も予習せず、筋書も購入しなくてちゃんと理解できるのか不安はありましたが、なんとなしに太王四神記に似た登場人物の設定だったのでまだ分かりやすかった。

王位継承権を巡って2つの血族の対立を軸に、神様の駆け引き、太陽神と人間の子供の菊様演じるカルナと隼人氏演じる異母兄弟のアルジュラの、それぞれ異なる使命を持って世に生まれ、そして運命の戦いが待っている。

どうやったら戦争を終わらせることができるのか?といった戦争に対する強いメッセージ性があり、三幕目はウルウルしまくってしまった。

大叙事詩の歌舞伎化。菊様の想いが伝わってきて感服してます。

ぶっちゃけさ、神様が登場するんだけど、それがまぁ〜身勝手な神様なんだよ。

世界が戦争で滅びるのを止めるために慈悲の心を持つカルナを産ませ、武力で決着つけることを使命としたアルジュナを産ませる。神様なんだから、人間をロボットみたいに扱うなよ!天界で黙って見とけや!と言いたくなる設定なのと、

慈悲vs.武力の戦いで、果たして2つの血族の王位継承権はどちらの手に?といった設定が実に良く出来てる。

一幕二幕が少し間延びするが、三幕目が見せ場だらけで、もう涙涙。

同じ血族同士が血で血を洗う戦に対する矛盾。慈悲深いカルナのために邪魔者を抹殺したいという身勝手な想い、父親を助けるために子供が犠牲になったり、

ここで描かれている諍いは、人間の身勝手だけでなく、冷静に観たら神様の身勝手さでもあるんよ。結構無慈悲な神様。

別に、脚本が悪い!と言いたいんじゃなくて、神様を社長や国のトップに置き換えたら、リアル世界情勢であり現代社会だと思うんよね。

その戦争、誰のための戦いやねん!?いったい誰得やねん!?って言いたくなる。

そういう意味でも、マハーバーラタの歌舞伎化や舞台化は、とても意義あることだと思った。


神様の衣装の絢爛豪華さ。と対照的に国民は着物といったコントラストが歌舞伎らしくて良かった。この前の「水滸伝」みたいにオール中国風衣装ではなく和テイストな感じが、衣装だけでなくシーンにも取り入れられていて、まるで鳴神?黒塚?みないなシーンがあった。盆も多様し、スペクタクルな作品だった。

神様の駆け引きがあったり、神様が人間に身籠らせたり、我が子を川流したり、身内の陰謀など、最後は人間に任せて神様は寝て過ごす…など、

人間だけでなく神様まで身勝手な振る舞いに、ギリシャ悲劇と変わらんし、古事記も旧約聖書教も一緒なのが、それぞれ違う国の宗教なのに、どこの神様も傲慢やん!?そんなに人間に試練を与えて楽しいか?って言いたくなった。

ま、神様ではなく人間が書いた本ではあるが、神様の扱われ方が、ブレヒトの「セツァンの善人」に出てくる神様と一緒なのが、ある意味というかそこが面白い。

異父兄弟の運命の決闘シーン。妖怪?の女と人間の男との間に生まれた子供が13年後に父親を助けようとしてカルナに殺されるシーンとか、芝のぶさんが敵に倒され呪いの言葉を吐いて勢いよく階段落ちするシーンとか、第三幕は見どころいっぱい見せ場いっぱいで感動しまくった!


ということで、本来観る予定にしてなかったのですが、浦井氏のトークショーの日、実は飛行機を予約していたのですが、新国立劇場から成田空港までの時間しか計算してなくて、チェックイン受付終了時刻を時間に入れるの完全に忘れていたんですよ。トークショーが16時40分までに終わらないと19時のチェックインまでに間に合わないことが判明。31日の岡本さん参加のトークショーでは17時近くまでかかったということで、トークショーを取るか飛行機を取るかの選択で、はいトークショーを優先にし、その日は新幹線で帰ったわけであります。

飛行機は、キャンセルしても払い戻しされないので、だったら、追加料金払ってでも日にちを変更して飛行機を乗ることにし、はい、歌舞伎を観るために東京に来たわけであります。結局、東京にいく方がお金がかかったけどね…。

でも、全く後悔してません。観る価値ありました。

菊様の立ち役は様になる。女形は立ち役を微塵も感じさせないくらい美しいのに、立ち役も違和感なく舞台に立てる方は今の歌舞伎界では菊様くらいじゃないかい?稀有な存在だと思う。

カルナと対照的な人物のアルジュナ役の隼人氏も血気盛んではあるが、同じ血を分けた従兄弟姉弟同士が戦い合うことに違和感を感じる役どころでもある。この気付きを描いているのが良い。見た目のイケメンぶりに加えて、的確な表現力が素晴らしい。

芝のぶさん演じる鶴妖朶王女は、敵に領土奪回されんがために戦をふっかける。鶴妖朶王女は、カルナには戦に加わらせまいと黙っていたのに、カルナは戦争を察知して戦に加わる。そして…。

芝のぶさんの存在感が断トツで圧巻!内心恨みたっぷりなんだけども、カルナに対しては慈悲深さがあるのに、敵に対する恨みが勝ってしまうそのさじ加減が絶妙だった。カルナに対する慈悲深さを敵に対しても持つことができたら素晴らしい女性になのに…と思わせる演技が素晴らしかった。

丑之助くんの台詞回しがめちゃくちゃ上手い!妖怪?と人間との間に生まれた男の子の役なんだけど、台詞回しだけでなく、父親を助けるためにカルナとの立廻りシーンが、もはや実の親子の立ち廻り表現ではなく、父親を慕う役として敵の菊様カルナと対決する様に、ここでもウルウルさせられた。

久々の彦三郎さんの声が、まじイケボ!めちゃくちゃ声が通る!悪役チックな役柄にピッタリな声でした。

カルナとアルジュナの母親役の米吉君もまだまだ若いのにめちゃくちゃ貫禄があった!声の出し方がイイ!壱太郎君とめちゃエエ勝負やな。

弥十郎さんの太陽神も都合がいい神様でしたが、ええキャラでした。

菊五郎さんは最初と最後しか出られていませんが、菊様と丑之助君と共演できてさぞかし嬉しかったことでしょう。丑之助君の成長ぶりに感激していることでしょう。

この作品には、戦の虚しさだけでなく、血族同士が戦い合うことの虚しさ、呪いの怖さなど、インドの昔ばなしではない、現代要素がある内容になっていて、

菊様と隼人氏の立ち廻りだけでなく、芝のぶさんと丑之助君の圧巻の演技を観れただけでも東京に来た甲斐がありました。









正欲

2023-11-15 00:25:10 | 映画
全然期待してなかったし、ただ時間つぶしで観ただけなのに…、

めちゃくちゃ良かった!

134分があっという間だった。まだ続きがあると思っていたらエンドロールになったから余計時間を短く感じた。

いや〜、まるで10代と20代の時の自分自身を見てる感覚だった。

今の時代みたいに宇宙人の発想とか宇宙からの転生という概念がない時代の、自分は同級生とも同世代の人間とも違う、もちろん、世間の大人達とも違う、世間の常識は俺の常識じゃない!自分は日本人じゃないんだ!と強く思うことでしか生きられなかった時代の自分自身を見てるようだった。

吾郎ちゃん演じる役柄は、まさにひと昔の兄貴を見てる感覚だった。今でこそ、考え方も丸くなったけど、両親もそうだったけど、比較的兄貴のほうがその傾向が強かったが、世間の常識を押し付けてくる人間だった。お前は非常識な人間だと何度何度言われてきたか。

その都度、そんな世間の常識なんてクソッたれ!と思って生きた10代20代。

外国に行ったら必ず自分の居場所があると信じて、震災の年にバッグパッカーで西ヨーロッパとモロッコを旅し、翌年、ドイツに行った。

ドイツの生活も色々紆余曲折ありましたが、外国人とも日本人とも喧嘩してた。カッとなると不思議なことにドイツ語が流暢に出てくる不思議体験があった。でも、一度もホームシックにかからなかったので充実してた。だってドイツの学生証があればマールブルグからフランクフルトまで電車がタダ。親知らずの抜歯もタダ。もちろん、当時は学費ただ。大学付属語学学校はめちゃくちゃ安い。

でもね、やはり、留学している外国人や日本の大学生と知り合ううちに、現実問題として、お金の問題もそうだけど、ドイツに居続ける理由が私にはないことを思い知らされるだけだった。

私はただ親元から、日本から脱出したかっただけに過ぎない。頑張ってドイツに行けば新しい出会いによってドイツに居続けられるかもしれないといった安易な希望しかなかった。

他国の留学生みたいに、ドイツで学んだ知識を母国で活かすといった大いなる情熱を私は持ち合わせていなかった。

だから、本当に自分の惨めさを思い知らされるだけだった。目的がないならドイツ滞在は無意味でつらいだけ。

お金の切れ目が縁の切れ目。

金欠になり、親に催促する気にはなれなかったので1年半で帰国した。結局、就職もドイツに全く関係ない仕事だったし。ホンマ、何しに行ったんや!?

まだ帰国当初は、ドイツ留学なんて言ったら、少しは箔が付いたけど、今は本当にドイツに行ったなんて話すと逆に恥でしかない。相手から、今は???と聞かれたらもう返す言葉がない。

10代20代は本当に生きづらかった。今思えば自ら生きにくい人生を選んでいた。っていうか、世間に馴染めないから仕方ない。人と同じ事ができない。今はめちゃ右に倣え状態だけどね。



30代に入ってからは、諦めることを学び、今の職場に転職してからは、世間の常識に縛られる必要もなく居られる場所にやっとたどり着いた感じ。なぜ結婚しないの?と聞かれて、“したくないから” と答えたとして、理解してもらえる人達に恵まれてらるから。ま、理解してもらえるというより、誰も私に関心がないと言った方が正しいね。藁

正直、出世欲はないから後輩や年下に抜かされても、その人たちが相応しいと思ったから昇格するわけだし、向いているならそれでいいじゃん。私は完全に脱落者。それこそ、部下からの信頼度はあっても甘やかすばかりだから、その分自分の首を締めるだけだった。イライラもマックスになり、なんど上司に楯突いてきたか。よく首にならなかったな〜って感じ。自分の精神状態のためにも管理者は私には向いていない。

そして、このブログを始めて、スピの世界に導かれた。結婚願望が全くなかったのに、この人と結婚するというメッセージを受け取り、人生初大嫉妬魔人間にななった。嫉妬とは無縁だったのにね。妄想と現実の境い目が分からなくなり精神がおかしくなった。

職場では仕事のストレスで気が変になったと思われてたけど。実際は会って話すことすらなかった相手に大恋愛しただけ。だから、東野絢香ちゃん演じる役の気持ちは痛いほどよくわかる。本当に想ってるだけで幸せだったから。嫉妬も人一倍だったけど。藁

だから私もどちらかというと社会不適合者に近い存在。それでも、今も生きている。

磯村君の台詞じゃないけど、不謹慎だけど、早くに両親が亡くなって良かったと思ってる。今の人生は自分の選択だから、親のせいにも出来ないからね。今は本当に両親に感謝しかない。

スピの世界を信じているのに、まだ産んでくれてありがとうとは素直な気持ちにはなれないけど、育ててくれてありがとうとは素直な気持ちで感謝できる。

ということをついつい書いてしまうくらい昔の自分を見てるような作品だった。

新垣結衣ちゃんと磯村勇斗君カップルがめちゃくちゃ羨ましく思ったよ。一番大事な共通の秘めごとによって夫婦になり、喜びの沸点も同じだから、同じ喜びを分かち合えることができる。喜べる時間を持ち続けられることが最大の幸せ。

そうなんだよ、私の場合は、同類と思っても、いざ付き合うと、違うことに気付かされて去ること度々だったな。マジ酷い人間。

今は、ひとりの生活が長くて、人との付き合い方を忘れてしまった。どう告白してどう付き合うのかサッパリ分からん。っていうか、そもそも付き合うことすら面倒くさい。

と思うと、結衣ちゃんと磯村君カップルは羨ましい限り。魂で結びついてるとは言い難いが、一緒にて居心地がよく、言葉を交わさなくても、理由を聞かなくても、写真を見るとだけで相手の気持ちが分かる関係性って、私からしたら理想の関係性。

地球に留学してる感覚とか、めちゃくちゃ良く分かる!素晴らしい台詞やわ!

今なら、宇宙人ですから!と言っても通用するよ。そういう意味では、ひと昔に比べたらいい時代になってるよ。でもまだまだ生きづらいのは、周知の事実だけどね。

っていうか、内容がリアルにタイムリーすぎて、今上映して大丈夫だったのか?心配になったよ。

これは本当に、今生きづらい人達に対するエールになる作品でもあるので、自分は宇宙人かも?宇宙人と思わないと生きていけない方々には絶対勇気もらえる作品だと言える。

ほんま、吾郎ちゃんの役柄が、何に対してとは書かないが、最後までステレオタイプな役柄で、マジ苛つく。ホンマひと昔の兄貴を見てる感覚だった。

結衣ちゃんと磯村君との関係性とは対照的な位置づけの吾郎ちゃんの存在。あんな人がいたら直接、あかんで!と言ってるよ。

映画作品の登場人物として本当に素晴らしい存在感と役割だった。

ぶっちゃけ、どの登場人物も極端な設定ではあるが、メッセージを伝えるにはこれぐらい極端なのがいい。

結衣ちゃんも磯村君もいい役だった。信じられる人に出会うだけで、セックスする関係性でなくてもそれだけで人生は潤う!待ち続けられる信頼関係。生きていてほしい。生きているだけでいいと思える関係性。

個人的には、「おちょやん」に出ていた東野絢香ちゃんの演技がめちゃくちゃ素晴らしかった!神経をすり減らしてる感がリアル過ぎて、撮影中私生活は大丈夫だったのか心配になるくらい、見ていてウルウルしてしまった。私も激ヤセしたからね。激ヤセ理由は同じじゃないけど。

吾郎ちゃんの奥さん役の山田真歩さんもリアルに表現されてました。

この夫婦役の息子役くんがめちゃくちゃカワイイ!演技演技してたのが逆に、お父さんに向ける最後の台詞がピカ一だった!

この作品、問題提起もあり、明確なメッセージを伝えているし、今生きづらい方、孤立感で苛まれている方は観て損はないと思う。

あ、ダンサーの男の子?大学生くんも良かった。

自分の居場所じゃない場所に居続けないといけない事ほど辛いことはない。漂って漂って漂って、漂ってでも生きてさえいれば、必ず自分の居場所がある。(←タカコさん&花ちゃんコンビのお披露目公演「望郷は海を越えて」より。1000days劇場で観たこの作品に、私は救われた。)

私の場所は、その都度異性の友人いて心の支えになってくれた。いつも、相手は既婚者だったけど、恋愛に発展しなくていいから私にはその存在がありがたかった。

ネット社会で出会いも様々あっていいと思う。結衣ちゃんと磯村君の出会いがや関係性が理想だけども、まさに運命の再会でありお導きである。

登場人物には、本当に幸せになってほしいな!私は、テレパシーだけで信頼関係が築かれていたらそれだけで十分生きていける。たとえ相手が幸せな結婚していても応援しますよ。略奪なんてさらさらない。嫌だよ、慰謝料払うなんて。←そっちかい!

ラストはいい終わり方だった。無駄がなくて良かった。

今年は、映画豊作やな!

時間つぶしで観ただけなのに、なかなかの傑作でした。賞レースに絡んでほしい!  


雪組 pre100th Anniversary『Greatest Dream』大千秋楽

2023-11-14 23:14:00 | TAKARAZUKA
さすがターコさん、もはや、いや、既にレジェンド。

今日はカリンチョさんがやってくれました。今日も公演ありますね!(笑)

すみませんm(__)m

ということで、大千秋楽に行ってきました。まさかチケットが取れるとは思ってなかったから、新国立のチケットは10月に取らざるを得なかった。

それにしても、ターコさんもイーチャンも凄いオーラ!トークも面白すぎ!ターコさんのカリンチョさんイジリが最高だった。当時の雪組の仲の良さがが伝わってくる。

そうなんだよ、カリンチョさんは新人公演はターコさんの役ばかりしてた。今、ウィキペディアを見たらターコさんの役全部やん!凄っ!

当時は2組に分かれて新人公演があったから主役をするチャンスはいっぱいあったからね。

そうそう、以前、とんちゃんが公演時に誕生日を迎えた時、組子からターコさんかキスの嵐を受けたエピソードを聞いたことがあるので本当に仲が良かったんだと思った。ターコさんととんちゃんと一緒に卒業された草笛雅子さん(「はばたけ黄金の翼」のロドミア役が有名)のYouTubeでとんちゃんとのエピソード話を聞いても仲の良さが伝わってきた。っていうか、ターコさん自身がおおらかな方だったのが想像できる。

ターコさんの、今回出演されなかった汀夏子さんへの想いが凄く温かった。2人には学年差があって、ターコさんは若くして2番手に抜擢され、ジュンコさんは完璧主義者だったからたくさん苦労があったと思うんよ。その苦労があったから、究極の男役像を創り出すことが出来たと思うんよね。「はばたけ〜」のヴィットリオの色気は、ホンマ半端ない。そりゃ、いっちゃんもウットリするよ。藁

いっちゃんのターコさんを見る目が完全に下級生。この前の男役ぶりと全然違う。藁

イーチャンは、やはり♪彷徨のレクイエム♪歌ってくれましたね。

この作品は、三部作でアナスタシア伝説を基にしており、第一部がこの作品で卒業されるイーチャンが主演されました。ターコさんのお蔭で主演出来たこと、主題歌の持ち歌が出来たことを感謝されていました。

また、ターコさんの失敗談も披露されめちゃくちゃ面白かった。自分が汗をかくからと前もってターコさんにハンカチを渡されており、燕尾姿のターコさんから、厚いハンカチをポケットに入れたら盛り上がるから男役の美学に反するのよ、みたいなことを言われ、慌てふためくイーチャンの姿が、というか、お二人のやり取りが幾つになっても上級生と下級生の関係性にとてもほっこりさせられました。

ターコさんは、♪うたかたの恋♪と♪君はマグノリアの花の如く♪を独特の歌い方で貫禄たっぷりで歌われてました。

レジェンドと呼ばれる方々は、宝塚100周年イベントのスータンさんもそうでしたが、歳を重ねるにつれて表現が個性的になって、レジェンド感オーラが凄まじい!ターコさんも完全に歴代レジェンドの仲間入りですね。


そして、大千秋楽の選曲は、11日に出演されていない方、千秋楽に出演されていない方の曲以外はセトリは同じでした。

11日にいらっしゃらなかった方だと、瞳子さん、水さん、ゆみこさん、トナミさん。  

瞳子さんは♪ローズ♪を、水さんとトナミさんは「カラマーゾフの兄弟」を、その後、水さんとみなこちゃんでデュエットされてました。おそらく「ロシアンブルー」かな?

ゆみこさんは…タイトル不明m(__)m

カリンチョさん&ともちゃん、いっちゃん&とんちゃん、コムちゃん&まーちゃん、水さん&トナミさん、水さん&みなこちゃん、壮さん&あゆっち…の元コンビのデュエットは雪組祭りでしか見られないので、本当に貴重。

トドちゃんも花ちゃんも出演してデュエットしてほしかったな。

カリンチョさんといっちゃんと鮎ちゃんの雪組ベルばらを旧大劇場で、しかも生で観てなかったら、これは自信を持って断言しますが、絶対に宝塚にハマることはなかったので、だって嫌いだったから…m(__)m

を思うと不思議な縁としか思えない。そもそも、オカンが阪急グループで働いていなかったら取れなかったチケットだからね。

これも断言できますが、宝塚にはまってなかったら、生きていたかも分からない。これ、マジの話。間違いなく世界観や視野も広がった。消えてなくなることより、世界に飛び立つことしか考えなくなったし。高校では、世界史を選択したからね。日本史全く興味なかったし。

ほんと、宝塚と雪組様々。ま、ドイツ語を勉強するきっかけは星組さんでしたけどね…。

そう、客席が、私みたいな中年以上の男性客が多かったことが意外だった。私が宝塚を観始めていた時なんて男性客なんてほとんど見かけなかったよ。ま、観光バスを使った団体の中に男性客がいたくらいの印象しかない。

今は、大劇場の男性客の多さには驚く。なんてたって、ファンクラブの列や白服に男性ファンがいることがもう奇跡!めちゃくちゃ素晴らしい!

またこの話をして申し訳ないですが、清く正しく美しく、の理念ってめちゃくちゃ大事だと思うんよ。これは宝塚に限らず、世間でもよく言われることだけど、どこの会社でも理念って大事で、社内が乱れる時は、もう一度この理念を振り返るべきだと思うんよ。

理念こそ会社の顔で、細胞が社員なんだからね。

いつまでもイメージダウンの報道ばかりされるのもファンとしては悲しいので、もう一度原点に帰るべきだと思うよ。