花組「うたかたの恋」「ENCHANTEMENT-華麗なる香水-」

2023-01-24 23:45:58 | TAKARAZUKA
うーん、これがレイちゃんが演りたかったうたかたの恋なのか???

良くも悪くも新しいうたかたの恋でしたね。

ぶっちゃけ、柴田先生のうたかたの恋ではなかった。まるでエリザベートのスピンオフ版ルドルフ篇って感じ。

確かに、エリザベートを意識した美術と衣装であり、舞台美術に関してはめちゃくちゃ荘厳な雰囲気がありました。有村先生の衣装デザインは毎回洗練されていて美しい!

でも、私が知ってるうたかたの恋ではなかったですね。

レイちゃんは、マリーの台詞にあるようにハムレットのような悲しみを背負ったルドルフ像を創り上げようとしていたのかもしれないけど、

マリーと直接出会う前から既に鬱ぽく死を意識した演じ方は、本来は違うと思うんよね。

レイちゃんのルドルフは、マリーに出会う前からトートに操られ死を意識しているように感じた。それだったらマリーに出会わなくてもどの女性とでも自殺していたと思うよ。

ルドルフはマリーに出会うことで、ローマ法王にステファニーとの離婚申請をしたわけやん。それってマリーとの幸せの未来を望んだ前提での行動のはずやん。

マリーとの出会いによって運命の天と地を味わったわけだから、演じ方としても陽と陰のギャップがある方が良かったのでは?

二人の従兄弟ジャンサルバドルとフェルディナンドのそれぞれの恋愛にも羨ましく思ってたわけやん。

最初から死を意識していたら、マリーとの恋も貴婦人との恋も上辺だけにしか見えないんだよね。

しかもヨーロッパ統一の夢もあったわけやん。あの演じ方だと、すでに未来を予見して何も上手く行かないことを最初から悟ってる演技だよね。

骸骨のオブジェやピストルは無意識の象徴だと思うから、それを意識したら伏線にすらならないから面白味も欠けてしまう。

本来のうたかたの恋は、儚くも美しいルドルフとマリーの恋愛物語であって、トート閣下に操られたルドルフの悲劇の物語じゃないだよ。

それに、ハムレットをレイちゃんが演じないならハムレットのシーンは説明台詞だけで十分だったと思うし。ルドルフとハムレットを対比する必要性がない。

フェルディナンドとフリードリヒ侯爵を一緒にしてましたが、フェルディナンドにも焦点をあてて、人物像を膨らませたのはいいけど、ラストのフェルディナンドが唐突だった。

フリードリヒ侯爵がフェルディナンドに次の皇帝は君である的な台詞を言うシーンで、侯爵にもっと悪役風に演じて貰らって、フェルディナンドを洗脳しているように見せた方がラストのフェルディナンドの台詞が生きると思う。あの登場は唐突だな。

やはり、私は、クールなルドルフより、レイちゃん自身本来備わっている情熱を役に投影してもらい、まどかマリーに出会ってひと時でも二人の幸せな未来を感じさせる役作りの方が、ラストの悲劇が引き立つと思うんよね。

マリーとの愛を育む中で幸せな未来を築こうとするが、手のひらに落ちる雪のように温もりで溶けていくが如く、ことごとく希望が覆されていく様を演じて見せてくれる方が、本来のうたかたの恋の骨組みだと思うんよね。

死を意識したルドルフより、無意識に死を予見し情熱的にルドルフを演じてくれた方がレイちゃんらしいと思うし、それでも十分トートが傍にいるようにしか見えないと思うよ。


ということで、大劇場版うたかたの恋を観てきました。

散々、ダメ出しを書いてしまい申し訳ないですが、やはり、大劇場でマリコさんとあやかさん版(当時は珍しく2回も観た)、

直近では宙組のかなめさんとミリオンの全ツ版、映像ではオサさんと彩音ちゃん全ツ版を何度も観ている者と致しましては、言いたいことだらけでした。

最近では、宝塚の名作の1つとして外箱で再演されつづけていますが、大劇場での再演ということで期待値が高かっただけにガッカリな部分が目立ちましたね

小柳先生の潤色演出は、衣装、美術、舞台転換、人海戦術など、元々キャストが少ない作品に生徒たちに出番を増やそうとした見せ方には愛を感じたが、柴田先生の作品のテコ入れは、やはり、思い入れが強い分、残念ながら私は世界観に浸ることができなかった。

本当に衣装、舞台美術、転換、群舞などなど見応えもあったのですが、ルドルフ像と潤色がね…って感じでした。

舞踏会を経てマイヤーリンクのシーンから音楽と共に劇的に展開していくのもなかったし、

オリジナルの赤絨毯だけ踏襲して、あとは…小柳先生版でしたね。

でもね、レイちゃんのルドルフもフランツとの鷹と鷲のシーンからは良かったんだよ、一部の脚色の変更はさておき。

まどかちゃんが、思いの外ピュアにマリーを演じられ、マイティーのサルバドルもオリジナルを踏襲した演じ方だったし、

オリジナルでは悪役だった出番が少なかったフェルディナンドを好感が持てる人物像に演じたヒトコ君も良かったし、

エリザベート役の華雅りりかちゃん(卒業が残念…)がめちゃくちゃ良かった、ステファニーのうららちゃんもオリジナルを踏襲していただけに、残念さが残る内容でした。


ショーは、星空美咲ちゃんがめちゃプッシュされてる感が強い印象を受けました。

いかんせんショーは…。

m(__)m

この公演で専科に異動するマイティーがお芝居でもショーでもめちゃくちゃキラキラしてました。

栄転の専科異動であることを願ってやみません。っていうか、ですよね??美咲ちゃんとトップコンビになって欲しい!

どの組でトップになるか…

それが問題だー。







モリコーネ 映画が恋した音楽家

2023-01-19 03:36:22 | 映画
めちゃくちゃ泣けるゥー!!

エンニオ・モリコーネの人生に泣けたのではなく、彼が作る曲たちがワタクシの琴線に触れる!

ということで、今週ニコールが出演する待ちに待った「ノースマン」が公開するということで、たまたま上映館を検索した時に、コレは観たい!と思ったので観てきました。

私にとってエンニオ・モリコーネは、メロディを聴いただけで無条件で泣けてくる♪ニュー・シネマ・パラダイス♪の作曲家であり、宝塚が縁で観た映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」や、最近観た映画では(といっても2013年ですが…)「鑑定士と顔がない依頼人」や、私のトラウマ映画であるパゾリーニの「ソドムの市」の音楽を担当された作曲家であります。

っていうか、パゾリーニの映画作品のメジャーどころはエンニオが作曲してたことに驚き。「ニュー・シネマ〜」と全く毛色が違う作品なのに!

そして、ご子息のアンドレア・モリコーネは、明菜さんのドラマ「冷たい月」の音楽を担当された方でもあります。

映画館に行く前にYouTubeで♪ニュー・シネマ・パラダイス♪のメインテーマを聴いたらもう泣けて仕方なかった。

映画を観たら一度も観たことも聴いたこともない映画音楽に泣けて泣けて仕方なかった。

エンニオの人生を辿るだけでなく、エピソード作品として彼が作曲した映画作品の音楽と映画のワンシーンが映し出されていて、観たことない映画作品なのに音楽を聴いただけで感情が揺さぶられる。

エンニオの作曲センスは、ストラビンスキー並みにめちゃくちゃ前衛的だったことに驚き。音符で表現できる楽器以外に、音符で表現できない音を作曲に取り入れるセンスがめちゃくちゃ素晴らしい!

今では全く違和感がない音、というか、表現方法や全く意識したことない音の取り入れ方がマジ斬新。分析して聴いたことないから説明してもらうと天才としか言いようがない。

という以前に、エンニオのバラエティーに富んだ表現方法が神業としか言いようがない。

っていうか、そもそも依頼を拒まない精神というか、作品を選ばない姿勢がエンニオの才能を更に伸ばしていたと思う。

一つ一つの映画作品に対して、全編自分が作曲に関わろうとする姿勢や妥協しない姿勢に驚きしかない。じゃないと、魂が揺さぶることはないね。を実感した。

更に作曲して依頼人である監督に聴かせる時は奥様が気に入ったものを、という奥様への愛に感動。

彼の作曲の精神の中に常に奥様がいることがめちゃくちゃ感動した。

まさか、エンニオもまた、レオ様みたいにアカデミー賞に何度もノミネートされていたのにオスカー獲得までに長い年月があったこと、紆余曲折があったことも全然知らなかったから驚き。

「ワンス〜」も「ニュー・シネマ〜」もオスカーを逃してたとは知らなかった。

ぶっちゃけさ、オスカーを貰うために作曲しているわけじゃないけど、自信作で獲れなかったら悔しくて仕方なかったと思う。

現実的な話、欲があると神様はそっぽ向くことは大いにして起こりうる。これこそお試し。精神のお試し。

エンニオは、来る者拒まむ精神で作曲を続けてきたわけだし、良い曲を書き続けてきたから何度もノミネートされてきたわけだから、2015年に念願叶ってオスカーを獲れた時は、人間として更に神格化された存在になっていた時だったと思う。

映画音楽を作曲することは、最初は生活のためだったかもしれないけど、晩年は、音楽が生活の一部とか生きがいとはまた違う、曲のイメージやインスピレーションこそが神の啓示であると私には思えてならない。だって降りてくるんだもんね。

本当にやりたくないことなら、途中で放棄してるよ。

ぶっちゃけ、「ニュー・シネマ・パラダイス」は内容だけならそんな泣ける作品じゃないのに、あの曲が流れただけで泣けてくるというのは、やはり神様がエンニオに降ろした魂の曲だからとしか考えられない。私には全く理由が見つからない。

そして、「ワンス・アポン・ア・タイム〜」もレンタルで観た時は全く泣けなかったのに、この映画で音楽とワンシーンが流れた途端に泣けて仕方なかったのも神様の啓示だからだと思う。

エンニオの音楽には私の魂を揺るがす得体の知れない力がある。それはまさに、全く思い入れはないのに聴いただけで胸が苦しくなるマラーの♪アダージェット♪と同じ力がエンニオの曲にもある。

そしてそして、ご子息のアンドレアが音楽を担当した明菜さんの「冷たい月」の曲にもエンニオの血を感じる。

このドラマは、もちろん明菜さんや永作博美さんの演技の素晴らしさだけでなく脚本もいい。だけども、音楽が更に演技や脚本を際立たせる役目を果たしている。それこそ音楽とワンシーンだけを思い出すだけで泣けてくる。

私の人生において地味にエンニオが関わっていたことが一番の驚き。ま、一番の驚きは、ご子息が明菜さんのドラマに関わっていたこと。ちなみにサントラ購入済み。

いやー、去年、東京でエンニオの映画音楽のコンサートがあり、アンドレアが指揮者だったらしいですが、だったらコンサート前に上映して欲しかったぞ!!

できれば、またやって欲しい!!








坂東玉三郎×鼓童 初春特別公演 幽玄

2023-01-10 23:57:00 | 古典芸能
先ずは、

明けましておめでとうございます。

本年も宜しくお願いいたします。

新年の初観劇に相応しい、というより、新年を迎えたことを忘れさせるような幽玄な世界、宇宙空間にいるような、異次元に迷い込んだような、

能であって能でないような、歌舞伎であって歌舞伎でないような、

歌舞伎の演目としては珍しくホリゾントいっぱい使った、盆をまることを見せる演出もさることながら、鼓童さんの太鼓だけでなく銅鑼やその他の楽器の音色がさらに幽玄な世界に誘う効果を担っていて、

めちゃくちゃ酔いしれました!

めちゃくちゃ素晴らしかったです!!!

道成寺好き、能好きのワタクシには堪らん作品でした。

能の演目である、羽衣、石橋、道成寺を能や歌舞伎の要素を取り入れつつも、鼓童さんが奏でる音色や集団技、舞踊家さんの動き、まるで教会のミサ曲のような男声合唱の謡が、玉三郎さんが紡ぎ出す幽玄な世界を引き立てていて、

松竹座にいること、大阪にいることを忘れさせる素晴らしい玉三郎さんの空間演出でした。

なんてたって道成寺ですよ!

蝋燭の光を使った演出も宇宙次元へと誘うだけでなく、

能では、白拍子が30分かけて360度回る、私には退屈な時間、演じる側は集中力がいる時間の、その一部分も取り入れつつ、歌舞伎の娘道成寺の要素も取り入れつつも、鐘入りから大蛇に化ける玉三郎さんの鬼の形相の化粧が

最高っ!!!

でございました。

いやいやいやいやいやいや、

日本振袖始や信濃路紅葉鬼揃でも玉三郎さんの鬼の形相に十分激萌えだったのに、ここにきて幽玄でも観させてもらえるなんて!

ブロマイドが欲しい!!

歌舞伎座でも上演されたこともあるそうですが、あの広い空間より、断然、半分の広さの松竹座の方が臨場感があると思う。

羽衣では、盆とホリゾントまでの空間を活かし、わざわざ宙釣りしなくても天女が宙を舞っているようにも見えたし、

石橋では、玉三郎さんは出られてませんが、能の独特の小走りな動きを取り入れつつも歌舞伎の毛振りを取り入れてダイナミックな演出になっていたし、

道成寺以外でもめちゃくちゃ堪能できる演出になっていて、めちゃくちゃオススメ!

これは、観る価値アリアリ!

っていうか、もう一回観ます!!!