BAD LANDS

2023-10-31 13:47:30 | 映画
わー、西成のマドンナ、満州けい子さんこと、坂田佳子さんが出てるやん!?

それだけでもう掴みオッケー!

全く長く感じることなく、あっという間の143分だった。

マジ、めちゃくちゃ面白かった!

ぶっちゃけさ、私が映画を観る時は、基本メッセージ性がありそうな作品を選ぶんだけども、本作はメッセージ性皆無。

ただただスリリングな展開と飽きさせないカット割りの連続で、最後まで面白く観させてもらいました。


ということで、本来は全く観る予定になかったのですが、たしかに、「怪物」でも素晴らしい演技だった安藤サクラさんには興味があったけど、内容が反社でしょ…なのでチョイスしていなかったのですが、

ネットニュースで、サリngROCKさんと山田蟲男さんがでられているという情報を知り、サリngに至っては、このカッコいい女性は誰??とSNS上で話題ということで、以前大変お世話になった身としては観ないわけにはいかないので、ラスト上映週間際でギリギリ観ることができました。

いやいやいやいやいやいや、サリngさんも山田さんもハマり過ぎ!で、怪し過ぎ!めちゃくちゃカッコ良かった!めっちゃ美味しい役やん!そりゃ、SNSで沸くわ!

サリngさんも山田さん以外にも関西出身のあんな方こんな方まで出演されていて、ミュージシャンに演歌歌手の方まで、もう内容云々以前に脇役の方ばっかり目がいって仕方なかった。

生瀬さんや江口さんは当然のこと、宇崎竜童さんも関西は京都の出身やったんやね!最初誰だか分からなかった。

天童よしみさんも貫禄あるわ!

ミュージカル俳優の吉原光夫さんも関西出身の方だと思ったら東京出身やん。めちゃくちゃ関西弁がリアルに上手い。

名前はよく見かけるが初めて拝見する鴨鈴女さん。良い味出してた。

前田航基君も出てたんやな。弟君の旺志郎君は良く見かけるが、お兄ちゃんは漫才をしていた小さい頃とあまりにも変わり過ぎて本人とは気づかなかった。どの役かは後で分かったけどね。

なによりさ、初っ端から坂田佳子さんが現れた時には、もう目が釘付け!大興奮!今ではYouTube界の西成マドンナなので、ミーハーには堪らん存在!

坂田佳子さんとキングマンさんは、関西のYouTube界では、関西が誇る大スターだからね。難波駅でキングマンさんを見かけた時はマジ萌た。スターオーラが半端なかった。

まだ坂田佳子さんにはお目にかかったことがないので、坂田佳子さんのナマ歌を聞くのが夢。

それはさておき、

撮影場所も天王寺界隈を中心に難波近辺、一部梅田であったりと、つい半年前に、難波で財布を失くした時に、天王寺の警察署まで取りに行ったからね。

天王寺界隈の独特の景色は忘れられない。

最近は、梅田界隈より難波に行くことが多くなったので、めちゃくちゃ楽しく拝見しました。あ、住吉大社の前も撮影されてたね。大阪人じゃない兵庫人の私でもめちゃくちゃ楽しめるロケ地だった。

まるで関西版「踊る!埼玉」を観てるような関西人のための映画だった。ま、内容が反社なのは…ではあるが、関西人には堪らん、そして、主役から脇役までキャラの個性が強すぎてミーハー心をくすぐる本当に面白い作品だった。

そして、肝心の主役お二人の安藤サクラさんと私には初お目見えの山田涼介君も、お二人とも東京出身の方なのに関西弁をマスターされていて、歪んだ?姉弟愛を体当たりで自然体で演じられていて大変素晴らしかった。

ほんま、柄本佑君といい安藤サクラさんといい、何このバケモノ夫婦は!夫婦して怪優って…、最高過ぎるわ!藁

山田涼介君もキレイな顔なのにチャラくて軟弱で、でも姉ちゃんへの愛を感じる素晴らしい役作りでした。


予告で観た時は、反社の闇社会を描いたバイオレンス風な内容だと思ったけども、ロケ地やキャスティングも含め、監督の関西愛しか伝わってこない作品だった。「BAD LANDS-踊る!大阪」でも良かったかもね。ウソウソm(__)m

肩肘張らず、難しいことも考える必要もない最後まで飽きずに楽しめる作品でした。

ラスト上映週だから上映館数も上映時間も限られている中、ギリギリ観れて本当に良かった!

そうそう、本作でもドストエフスキーが台詞にあった。「虐げられた人々」。シベリアに流刑された話だったか忘れたが…。これは「死の家の記録」だった。「虐げられた人々」は読んでないな…。

これってやはり、いつもの

お導き!




宇宙探索編集部

2023-10-31 00:07:30 | 映画
見せ方云々さておき、台湾でも香港でもない、社会主義国家の中華人民共和国の人がこういう作品を作ってくれたことが素晴らしい!

ちなみに、私にとって香港は通貨も含め別世界なので悪しからず。

そもそも社会主義国家では、映像で見せないであろうものを映し出している時点でもうヴンダバー!

正直、ラストまでか長いプロローグって感じで、ラストで完全にカウンターパンチを食らった感覚に陥った。

ぶっちゃけ、チラシに載っているような笑えるシーンなんてほとんどない。私にはね。チラシのデザインがめちゃ良い!

かといって、めちゃくちゃシリアスなわけでも、バカバカしいものでもない。その長いプロローグにおいては。

ラストで、それまで感じた感情が一転されて素晴らしい作品に昇華された。たくさんの賞を取るに相応しいだけでなく、この作品に賞を与えた方々のハートが尚一層素晴らしい。


主人公が、ひたすら、ナニモノかに取り憑かれたかのように病的なまでに宇宙人を探し、遭遇交信出来る場所を探し求め、広大な中国の土地に佇む田舎の集落や奥深い森の中を探し歩く?物語。

主人公にとって宇宙人とは、人間よりも知能が高い、道徳的にも人間力ならぬ宇宙人力が優れた生命体であり、戦争をしない生命体だと信じ込んでいる。最初の方で主人公が発言している。

主人公タンは、病的なまでに宇宙人探しにのめり込んでいる。まるでツインソウルやツインレイに引き寄せられるがごとく。


これは、私自身も以前から思っていたことだけども、精神疾患や高齢者の認知症って、神様との交信であったり、それこそ宇宙人との交信だと思うことがある。

ま、私自身が、今だから書くけど、精神を病んだ時に、宇宙ステーションにいる人とテレパシーでリアルに交信し合っていると完全に信じ込んでいたことがあったから、精神疾患者の独り言や認知症の独り言は神様や宇宙人との交信だと思ってる。

まさに主人公は、そんな精神疾患を抱えている一人にしか見えてならない。その主人公が精神病棟の患者に対して講演するのは確かに滑稽ではあったが、決して笑えたものではない。もちろん、そこには怒りなない。ただ笑えないだけ。

宇宙人探知機?を持って、出版者員?らと一緒に宇宙人探しの旅に出るわけだが、前半はひたすら珍事件ならね珍出来事に遭遇し、いかにも胡散臭い宇宙人の骨を高額な値段で買ったり、宇宙人と交信できる?鍋を被った不思議青年に出会い、彼の導きで宇宙人と交信出来る場所を山の奥深くまでひたすら探し歩き回る。

途中、その不思議青年が消え、仲間達もしびれを切らして下山しようとする中、主人公はたとえ1人でも宇宙人と交信出来る場所を山の奥へ探しに行く。

ただひたすら、ただひたすら、主人公は宇宙人と交信出来る場所を探している。病的なまでに。その病的なまでに宇宙人と交信したい理由がラストで明確になるんだけど、

その理由がめちゃ泣けるねん!

しょうもないと思っていたアイテムや人物がラストで…。ただ、宇宙人力がある宇宙人に会いたいだけじゃないのが、マジやられた!って感じになった。秀逸だった。

章に区切られてはいるけど、私にとっては長いプロローグにおいて、タンはただひたすら病的に宇宙人探しをしてるんよ。病的に。演技の枠を超えたリアルな病的さ。

タンが病的になってまでも宇宙人を探さなくてならない理由がラストに明かされるわけですが、そりゃ病的になるよっていう理由なので、そこが良かった!

タンが探さないといけない理由はあえて書きませんが、それは、世の中に、いや、全世界に問いたいメッセージでもあるんよね。答えも、明確な答えはない。宇宙人でも答えられないかもしれない。

ただ私も言わせて欲しい。

地球なんて、無限の宇宙の中で、数多ある銀河系のほんの一つに存在するほんの一つの惑星にすぎないねん。

宇宙目線だと、地球の存在なんてちっぽけなもの。ましてや人間の存在なんてミジンコにもアメーバにも及ばへんねん。それに、人生の長さなんて蝉の一生よりも遥かに短い。一瞬の命や。

なのによ、お前ら何してくれとんねんっ!一瞬の命を更に一瞬で消し合うなよ!

タンの言う通り、人間は宇宙人より劣った邪悪な生命体や!もっと慈しみ合えよ!分かっとんかっ!

というメッセージがビンビン伝わってくるようだった。

長い長い、私はいったい何を観させられてるんだろうプロローグだったけども、ラストは本当に素晴らしかった!作品としても素晴らしかった! 


ということで、最近ハマっているユーチューバーさんのオススメだったので観てきたわけでが、オススメできる内容です。

それにしても、タン役の役者さんがリアル過ぎる!本当にドキュメンタリーを観てる感覚になった。それくらいリアルな人物にしか見えなかった。

ドキュメンタリータッチで描いていて、映像を撮っているカメラマンも登場人物の一人、仲間の一人として扱われていたのに、いつの間にか、カメラマンはタンの同伴者でも登場人物でもなく被写体を映すだけの役割になっていたのが、その見せ方がまた上手かった。

本当に胡散臭い登場人物であったり設定であったり、途中何度も眠たくなったりしたのに、ラストはマジ泣かされた。

物語の運び方もメッセージ性も見せ方もめちゃくちゃ上手い!

とても大学の卒業製作だとは思えないくらい完成度が高かった。

それよりも、私の知らない中国の現状や生活や風景を垣間見ることが出来る映像群でもあったので、そういう意味でもドキュメンタリータッチで良かった。

この社会主義国家の中国映画で、まさか映し出されるとは思ってなかったものが見れたことが一番の感激。

こういう作品を観ると、たとえ社会主義国家の監督作品であっても、政治家と国民は別人格者だということをまざまざと感じざるをえない。

本当にいい映画だった。






愛にイナズマ

2023-10-27 21:36:57 | 映画
あれっ?コレ、ケラさんとコラボしてました?

って言いたくなるくらい、主人公が置かれている状況や社会が「眠くなっちゃった」と同じでビックリした。

それから、まさかの北村有起哉さんが登場した時には、昨日の今日だけに

これって、いつもの…、

お導きやん!?

と思ってしまった。

(笑)

いやー、

めちゃくちゃ泣けた!めちゃくちゃ良かった!

私、石井監督の脚本好き!←なんの告白や!

(笑)

「月」と同じ脚本監督作と同じとは思えないくらい、どちらかというと「茜色に焼かれる」に近いテイストはあったが、それでも、コミックテイストが強い可笑しみとストレートなメッセージ性に完全ノックアウトされてしまった。

「月」のパンフレットを読んだ時に、ドストエフスキーという単語が出てきたていたので、石井監督もドストエフスキーが好きなのかな?と思っていましたが、

本作を観終えたあと、これは、間違いなく石井監督のカラマーゾフの兄弟だと思った。もちろん、状況設定もカラマーゾフの悲劇性とは異なるが、三人兄妹と父親との関係性や、母親がいない設定、兄弟の中に聖職者がいる、三人兄弟と父親の関係性に他人?部外者?関係者?が強く関わっている様は、カラマーゾフの兄弟と同じだと思った。たまたまだとは思うが、石井監督の無意識下にはカラマーゾフの兄弟が影響されていたことは間違いないと思った。

いや、とてもたまたまだとは思えないな、聖職者がいたからな…。

社会の綺麗事、上司の理不尽な命令に逆らえない状況、他者を相容れない人間性、本音が言えない社会、嘘で固められた社会、反社…に対する果たし状ともとれる内容だったし、何より愛に溢れた作品であったこと、

本作は、個人だけでなく家族愛にスポットを当てた脚本にもなっていて、泣ける要素しかない。

一見相容れない父親と兄と妹間の関係性の中に、なんだかんだ言って親子なんだよな〜的なエピソードが盛り込まれていて上手い見せ方だった。

前半で、主人公があれほど助監督から理由がないことを責められまくり、そりゃ世の中には理由がない出来事があったりするよ!と訴えているのかと思いきや、後半では、逆に理由を責める立場になっていて、どっちが本心なんだ?と思わせておいて、

言葉ではなく映像で理由を表現している様に、石井監督のこだわりを感じた。

なんで、花子は赤色が好きなのか?池松君演じるお兄ちゃんは青い車に乗っているのか?など観客に疑問符を投げかけておいて、あとで理由を回収する様とか、

物事にはちゃんと理由はあるんだよ!言葉で表現すると陳腐になるんだよ!お前らに一言一句納得させる言葉なんてないんだよ!空気読めよ!って言ってるオメェらだってちゃんと空気を読んでくれよ!

っていうメッセージがビンビン伝わってくるようだった。

泣ける要素だけでなく、可笑しみのある要素もいっぱい散りばめられていて、改めて石井監督の優しさや愛しか伝わってこない作品でした。


ということで、「月」に関係なく、松岡茉優ちゃんと窪田正孝君のやり取りが魅力的だった予告を見た時から絶対観る!と決めていたので、早速初日に観てきました。

前半の、茉優ちゃんと窪田君の、理不尽な社会に押し潰されていく様や閉塞感が、ある出来事を機に爆発し、本音で生きる人生を選択する様にめちゃくちゃ泣けた。

茉優ちゃん演じる花子の閉塞感からの開放ぶりはお見事でした。自分の家族の前では変貌すり様など、茉優ちゃんの表現力にめちゃくちゃカタルシスを味わった。

窪田君演じる正夫の始終変わらないオットリ感。花子に出会いイナズマが落ちる様。まるで花子の守護天使のように佇んでいる様。政府支給マスクをつけている様だとか、めちゃくちゃ癒やされる存在だった。

花子と正男の似た者同士なのかそうじゃないのか分からないやり取りや間を含め、キャラ設定がめちゃくちゃ良い。

後半の花子の家族ターンになってからは、佐藤浩市さん演じるお父さん、池松壮亮君と若葉竜也君演じる花の兄たちが、めちゃくちゃ良い味を出していて、ラストに向けて涙エピソードが倍増する。

佐藤浩市さんが、当たり前っちゃ当たり前なんだけど、お父様にそっくり過ぎて、三國連太郎さんを見てるかのようだった。

社会悪の象徴的な役を、MEGUMIさんと三浦貴大君が演じていて、めちゃくちゃリアルだった。

まさかの実の親子共演の中野英雄さんと太賀君には驚いた!中野パパはまるで息子愛を代弁するかのような台詞を貰っていて、さぞかし中野パパは大喜びだったことでしょう。ま、残念なことに、2人の絡みはなかったけどね。

太賀君の役は、出番は少ないが、花子と正夫に大きなうねりをもたらす重要な人物で、社会の犠牲者の代表的存在を真面目に演じていた。

趣里ちゃんや高良健吾君のチョイ役での登場で良い味を出してた。

出演者が豪華で最後まで見飽きることなく観させてもらいました。

本当にめちゃくちゃ良かった!

まじオススメします!

ケムリ研究室「眠くなっちゃった」

2023-10-27 17:06:27 | 舞台
いやいやいやいや、

ラスト、めちゃくちゃ余韻棚引くゥ〜

最初のほうでタイトル回収されていたから完全に油断してたわ!

いやいやいやいやいやいやいやいや、

ケラさん、どないしたんですか!?と聞きたくなるくらい。

めちゃくちゃ良かった!!

ワタクシ、ケラ作品を全て観劇したわけではないので偉そうには書けないのですが、それでも偉そうに書きますが、

ケラ作品の特徴として女性同士の友情であったり、姉妹愛がテーマの作品が多いと思うんよね。

今回は、マジでラブストーリーだったので、ラストシーンが、思い返すと胸を締め付けられるような余韻にずっと引きずられてしまう。

まるで、松尾スズキさん脚本演出の大人計画の舞台「ゴーゴーボーイズ、ゴーゴーヘブン」を観終えた時と同じ切なさがあり、

ちゃんとは見たことないフランス映画「天井棧敷の人々」や、これはちゃんと見たフェリーニの「道」やタルコフスキー作品のような白黒映画時代独特のノスタルジックな雰囲気もあり、あ、白塗り表現は、寺山修司さんの劇団天井棧敷の雰囲気もあり、

ケラさん、

めちゃくちゃええやんかいさー!!!

確かに、前回の「砂の女」も一種のラブストーリーではあったけど、

今回マジ、近未来設定の演出で脚本に関して油断してました…、

本当にピュアなラブストーリーでした。

ぶっちゃけ、設定やストーリー展開が良く分かってなかったんよね。

顔が白塗りで、たまきさんや水野美紀姐さん、音尾琢真さん、野間口徹さんや篠井英介さん、そして犬山イヌコさんは声や容姿が特徴的なのですぐ見分けがつくけど、それ以外の方が、めちゃくちゃ上手いねんけど誰が演じているのか分からず、誰?誰?状態で観ていたので、

ストーリーがややこしくて頭が追い付いていかなかった分、役者の演技やプロジェクトマッピングの演出に気が取られてしまってた。

1幕目から置いてけぼり感はあったが、2幕目も想像しえない展開とワケワカメ状態でもうっすら見えてくる、たまきさん演じるノーラと北村有起哉さん演じるリュリュの関係性が、まさかのラストで心臓に矢を射ぬかれた感覚に陥りました。


ラストまで観ないと分からないケラさんの脚本演出の良さ。今作は、それくらいめちゃくちゃ手の込んだ脚本と演出プランだったと思いました。

ケラ作品って、いつもラストが予測できないんよね。ハッピーエンディングなのかパッドエンディングなのか、どっちとも言えないニュートラルエンディング?アンビバレントエンディングなのか…。

ウディ・アレンみたいにトンデモエンディングだったりすることもあるからね。

今作は、完全にアンビバレントエンディングでした。最近、アンビバレントという単語を知ったんだけどね。藁

切なさと喜びが背中合わせでせめぎ合ってる感覚。あ、アンビバレントとは切なさと喜びの意味ではないです。ま、皆さんの方がご存知だとは重いますが…。

この作品に関しては、ケラさんが、松尾スズキさん同様こんなピュアで切ないラブストーリーを書いてくれたことが一番の感動。

ケラ版「ロミオとジュリエット」「ウエスト・サイド・ストーリー」と言っても過言じゃないね。

観るまでは、タイトルが「眠くなっちゃった」だったから「はい、どうぞご自由におやすみ下さい!」と言いたくなるようなコメディー作品かと思っていたのに、まさかの内容や展開、タイトル回収の仕方がマジ秀逸でした。

近未来設定だけども、決して2023年視点の近未来ではなく、それこそ、キューブリックの「2001年宇宙の旅」が公開された年、1960年代や1970年、はたまた、それよりもずっとずっと前の、それこそフェリーニが活躍していた時代の人たちが思い描くような近未来設定に感じました。ノスタルジックな郷愁を感じる近未来。銀河鉄道999の雰囲気もあったな。


今ならAIが人間を支配する未来を想像しえるけど、うん十年前ならロボットだもんね。

かといって、郷愁しかない近未来ではなく、今現在を揶揄するような、見えない誰かに社会が牛耳られている今の世の中であったり、貧富の差などの格差社会や差別社会であったり、高齢者や若年者の認知症症状である、記憶の欠如やコミュニケーションがスムーズに図れない関係性であったり、コロナ禍によって当たり前のことが当たり前でなくなった日常をも描いていたように感じました。

そんな不条理な世の中でも、もっとも大切なものをメッセージとして描いていたと思います。

本当に良かったです!


ということで、ケラさんとたまきさんご夫婦のユニット「ケムリ研究室」第三弾作品を兵芸(私は芸文とは書きませんので悪しからず)初日に観てきました。

ナイロン100℃作品自体御無沙汰だったので、ケムリ研究室作品というより、まるでナイロン100℃作品を観ているような豪華なキャスティングでした。

作品の内容自体がケラさんらしからぬテーマというか、初めて感じたことだらけだったので、

プロジェクトマッピングを使った演出は他の作品でも効果的に使用されていますが、

たまきさんが主演の異色ラブストーリーであることがこの「ケムリ研究室」のコンセプトかな?と思いました。ま、第一弾作品「ベイジルタウンの女神」は未見なので断言はできませんが…。

訂正:そういえば、「グッド・バイ」も異色ラブストーリーだったの忘れてました!m(__)m

それにしても、ケラさんもたまきさんも攻めてくるね!

「砂の女」もかなり攻めていたけど、たまきさんの表現力がまさに、今の私が演じたい役はこれだ!を思う存分演じられていて、今回もたまきさんの覚悟を感じました。本当に素晴らしかったです!

あ、今更ですが、読売演劇大賞おめでとうございます!素晴らしいスピーチでした!

罪深い過去を背負い、夢を見ることが怖くて眠られない娼婦の主人公ノーラ。壊れかけているロボットの夫とのささやかな戯れに幸せを感じて生きていたのに、差別社会の渦に飲まれて餌食になっていく。北村有起哉さん演じるリュリュとの出会いによってささやかな夢を抱くが…。

もう、切なすぎる!でも素晴らしかった!

やはり、同じケラ作品でも主演と端役では演じ方が明らかに異なってくるし、そもそも自分たちのユニットの作品だから、誰にも束縛されない自由さがあるね。

今回、たまきさんの相手役が北村有起哉さんが務められていて、見た目をいじられていましたが、今まで私が見た有起哉さんの演技の中でもっとも地味でもっともピュアな役でした。キャラが濃い役のイメージが強かったから、今回の役は予想を裏切る良い役でしたね。

今作は、主役2人を除いてほとんどの演者さんが何役もされていて、演じ分けがお見事でした。完全なるキャラ変の方がおられたり、声のトーンは変わらず衣装でキャラ変されたり、役者さんの表現力に釘付けでした。

一番心を奪われたのは、自殺願望の女性役の松永玲子さんとその相手役の山内圭哉さん。最初誰が演じているのかわからなかったし、誰が演じているのか知りたかったので、休憩時間にパンフレット買ってしまいました。独特のダーク感が堪らない!

特に山内圭哉さんは更に何役も演じられていて、完全にキャラ変していたのでめちゃくちゃ良かった!それに間が良いので、何度も笑わせてもらいました。

この作品、ダークファンタジーもので、重い表現だけだと観ていて苦しくなってくる。山内さんの間は一種の清涼剤的に和みを与えてくれるので、集中して観続けることができた。

水野美紀姐さんの、ドラマほど狂気さはないが、それなりに狂気さがある役だった。サーカスの団長役も兼ねた音尾琢真さん山西惇さんにしか見えなかった。

いまではすっかりドラマには欠かせない存在の野間口徹さん、女役も演じられた篠井英介さん、ドラマでも大活躍の奈緒さん、各々に見せ場がありケラさんの愛を感じる役柄でもありましたね。

サーカスの道化師役のマイムの方々も本領発揮で、サーカスというより、見世物小屋風の雰囲気がり、後半の毒毒しさを際立てる存在でもありましたね。

他のキャストさんも本当に素晴らしかったです。

今回のケラさんのマッピングは更に凝った演出になっていて、さぞかしオペレーターの方々や大道具の方々は大変だったことでしょう。お蔭で全く見飽きることがなかった。

「祈りと怪物」のギッチョダも聞けて、個人的には大満足な作品でした。


休憩入れなくても3時間超えの大作ではありますが、演者さんもスタッフさんもお身体に気を付けて大千秋楽まで頑張って下さい!

アリスとテレスのまぼろし工場

2023-10-22 18:07:37 | 映画
本日最後の投稿。

本当は雪組100周年のチケットが取れたら東京泊まりにしようと思ってましたが、取れるかもしれない前提で新国立のチケットを取ったのに結局希望叶わずだったので、さっさと夜行バスで帰ってきた次第であります。

財布を失くしたことも知らず、観劇前の時間つぶしに悠々と有楽町の映画館で観ていたのがこの作品でした。

鑑賞後、さあ、初台に行こうと鞄から財布を取ろうとしたら財布がないことに気付いたわけであります…。


では、ここから本題。

ずっと前に予告を観たときに、「お前もオスか!?」(?)っていう台詞が私のハートを鷲掴みにしたので興味津津ではありましたが、結局関西では見る機会を失い、

たまたま新国立劇場に行くまでに時間があったので、時間つぶしにここぞとばかりに観たら、結構良かった。

ぶっちゃけ、感想が書けそうになかったらそのままスルーするつもりでいたんだけどね(汗)

ぶっちゃけ、「すずめの戸締まり」の二番煎じ感はあったが、メッセージ性は明らかにこちらの方が明瞭だったので、ウルウルしまくった。

まだたくさん席が空いている中で、わざわざ私の隣の席のチケットを買わなくてもいいのに、ちなみに私の方が前日にネット購入していた、私の隣に座っていたおじさんは、泣いて拍手してたよ。私は頷きオッサンでしたが(笑)


観終えた直後に感じたことは、極端な言い方だけど、世界の終わりの世紀末を描いた作品だと思った。

ここで描かれているのは、簡単に言うと過去と現実。決して過去にタイムスリップしているわけじゃなく、どちらも未来へと時を刻んでいる世界。

だが、過去の世界は、単純に過去ではなく、あの世の世界ともとれるし、時間が一分一秒進むごとに失われていくように、失った過去の一瞬を剥ぎ取った時間空間ともとれる。

パラレルワールドとかメタバースとは違う失われた時間。

私的に言うと、一秒は一瞬で過ぎ去るが、時間空間は永遠に止まったまま。カチコチに固まった石のように身動きすることなく時間が止まっているんじゃなくて、その時間空間にも世界が広がっている。ちょうどExcelの1マスのセルを拡張してWordのように使用し何某の世界を描いているのと同じ。

その時間空間には、セルと同じくベルリンやパレスチナ自治政府区のように現実社会とのを隔てる壁(見えないバリア)があり、痛みも雪の冷たさも寒さも暑さも感じない世界。そこに住む住民は幽霊的な存在。だが私は幽霊だとは思わない。

その壁を乗り越えることは現実社会で生きることを意味するのではなく、神隠しのように消えてなくなることを意味する…。 

そのExcelの1マスのセル世界に1人の女の子が迷い込んでいた。ここからはあえてセル世界とかきますね。

セル世界にも教祖的存在の人間がいて、工場にその女の子を隠していた。その女の子を神の子だと崇め(?)、この子を失うことはこのセル世界を崩壊させると信じ込み、誰の目にも触れないように自分の娘に世話役をさせていた。

誰かの心の崩壊が、この現実との見えないバリアに亀裂が入りセル世界が崩壊することが分かってくる。

当たり前だが、このセル世界の住民は、この社会、この今の世界が消えてなくなることを恐れる。

好きな男の子にやっとの想いで告白しオッケーもらったのに、その幸せを明日失いたいか?

亡くなった兄の嫁に恋心を寄せているのに、成就しないまま終わらせたいか?

セル世界の住民もこの狭い世界で必死に生きている。必死に世界が消えてなくなることを防御したいと思ってる。

彼らの意思に反して、主人公の男の子・正宗と世話役の女の子・睦実は、五実(いつみ)と名付けた謎の少女(工場に隠されている)を現実空間に送り返そうとする。

この主人公の正宗と睦実と五実にはある共通点があり、そこは映画でご覧下さい。

全体的なメッセージとしては、明日消えてなくなるかもしれない今の世界で、今を一生懸命に生きること、今の幸せを守るために一生懸命でいること、

それは、過去であろうと未来であろうと生きている今を精一杯生きること。これが最大のメッセージだと思った。


設定をややこしくしてるだけであってメッセージは非常にシンプルだと思った。実際の監督の意図は分からないけど。

予告で見た「お前もオスか!?」って台詞がどこで出てくるのかと思いきや、めちゃくちゃ強い言葉だから、重いシーンで使われるのかと重いきや、意外とシンプルなシーンで使われていたのでちとガッカリしたけどね。っていうか、予告でこの台詞を聞かなかったら絶対観てないけど…。藁

それは良しとしても、作品としてはアニメじゃないと作れない世界観ではあるので、ラスト上映前に観れて良かった。