ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

高い城の男(ドラマ版)

2019-01-10 23:31:27 | 映画
(これは2017年6月21日の記事です)

Amazonプライムでアメリカのドラマ「高い城の男」を見た。

現在シーズン2までだが(シーズン3を制作中)、これがすごく面白いので紹介したいと思う。

原作はフィリップ・K・ディック。あの「ブレードランナー」の原作者。フィリップ・K・ディックの作品はよく映画化されている。

第二次世界大戦が連合国側の勝利ではなく、ドイツ、日本の勝利に終わった世界の物語。舞台は1960年代初頭。
世界はナチスドイツと大日本帝国、そして中立地帯の三つの地域に分割され、ナチスドイツと大日本帝国の独裁政治が世界を席巻している。アメリカも三分割され、西海岸は大日本帝国が、東海岸はナチスドイツが占領し、中央アメリカは中立地帯になっている。その中でアメリカ人のレジスタンスが地下活動を展開する、というのが基本のストーリーだが、ここに一本の16ミリフィルムが関わってくる。

物語は主人公であるジュリアナ・クレインの妹トゥルーディがこのフィルムの為に殺害されるところから始まる。ジュリアナはレジスタンスではなかったが、妹の死を目の当たりにして、なんとかして妹の目的を果たさせてあげようと、彼女が持っていたフィルムを持って中立地帯に向かう。

このフィルムが物語のキーになるわけだが、それはシーズン2に入ってようやく見えてくる。ネタバレは避けたいので、興味ある方はぜひ観て欲しいと思う。何よりすごいと思ったのは、日本太平洋合衆国の憲兵隊隊長である木戸大尉及び貿易担当大臣田上信輔の苦悩する心理が実に見事に描かれていることだ。

第二次大戦中の日本軍の横暴さや冷酷非情さは語り継がれているが、彼らもまた人間で、あるいはこうした苦悩を背負っていたのかもしれない。その背景が実にリアルに想像できる映像になっていて、アメリカ人がこれを作ったかと思うと驚くべき洞察力と言わざるを得ない。

もちろん、ナチスドイツ側の主要人物たちのそれぞれの家族や人間模様、心理も細かく描かれており、戦争がいかに人々から人間性を奪うかがよくわかる。けれどもいつの時代にもそれに抵抗しようと立ち上がる人たちがいて、それは政治に直接関わる幹部にもいるのである。

そして、シーズン2に入って、物語は驚くべき展開を見せ始める。SFならではの展開である。

あり得たかもしれない歴史を想像し、その世界をリアルに作りあげてしまう映像作家たちの想像力もすごいとつくづく思うドラマである。

これを見ていると、世界は実にフレキシブルで、確かなものではなく、様々な可能性を秘めたものであることがよくわかる。しかし、その世界の中で、人々は幻想に捕らわれ、あるいは洗脳され、がんじがらめになっているのかもしれない。

そう思わせてくれるドラマでもある。
シーズン3が楽しみだ。
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