ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

ティグ・ノタロの「ワン・ミシシッピ」

2019-01-18 10:16:00 | 映画
(これは2017年10月14日の記事です)

Amazonプライムで面白いドラマを見つけた。

「ワン・ミシシッピ」

コメディアンのティグ・ノタロの自伝的作品だといわれている。

ティグ・ノタロって誰?

というわけで、ネットで調べたら、モノタロウ・・が出てきたりして、日本じゃあまり有名じゃないってことがわかった。

ティグ・ノタロはアメリカでは有名なコメディアンで、「レズビアン界のトム・クルーズ」といわれてるんだって。たしかに似てる。横顔なんか特に。

「ワン・ミシシッピ」は、彼女の自伝的ドラマで、現在シーズン1(全6話)がAmazonプライムで配信されている。私は全部見終えてすぐに二回目を見た。

何しろ彼女の身の上に起きたことといったら尋常じゃない。乳ガンで両乳房を切除した直後に、母親が事故で危篤になる。まだ病み上がりでよれよれのティグがLAのラジオ局(ここでDJをやっている)から故郷のニューオーリンズに戻るところからドラマは始まる。

空港で何度もトイレに駆け込まないといけないほどお腹の調子もよくない。実家には母親の同居相手のビルと兄のレミーが住んでいるが、ビルとティグたちの相性もよくない。

ビルは潔癖この上なく、しかも神経質で口うるさい男なのだ。レミーは実家の屋根裏に家賃を払って同居させてもらっている。

というわけで、ティグが母親の死を見届け、葬儀を終えて再びLAのラジオ局に戻るまでが描かれているのだけど、

この尋常ならざる状況にも関わらず、随所に笑いが散りばめられていて、時々お腹を抱えて笑い転げてしまう。

ビルの潔癖で硬直した性格、レミーの少しネジのゆるんだ性格、ティグのすべてを諦観した感じ、それらがあいまって実に微妙でおかしい家族関係を作りあげている。

母親の死に対しても、彼女は泣いたり嘆いたりしない。どこまでも淡々と身にふりかかる災いをブラックジョークと共にやりすごす。

しかも、所々に差し挟まれる母親との思い出には、美しいものもあれば苦いものもあって、とてもリアル。

やがて、母親が隠し通してきた秘密も白日の下に晒され、兄妹二人でやるせない気持に襲われる場面もあり、また、ティグの幼少期に起きた出来事も関わってきており、なかなか波乱万丈の人生なのだが、ティグはそれらを彼女独特のやり方で見事に切り抜けるのだ。

キュブラー・ロスの「死の受容の五段階説」に従うなら、ティグは最初から「受容」しているようにも見える。実際ドラマの中でティグとガールフレンドのブルックのこんな会話がある。

ブルック「(ビルの行動について)キーブラーの『死の否定』でしょ・・」
ティグ「キュブラーね。キーブラーは木に住む妖精で、クッキーを焼く・・クラッカーなんかも焼くよ」

冷血漢に見えたビルが実際は深く母親を愛していたことも次第にわかってきて、人間というのは見かけでは判断のつかないことが多いんだなあと実感させられる。

ティグはLAのラジオ局に戻るのだが、ここでも新人に取って代わられようとしており、結局最後のエピソードでは、ニューオーリンズの実家に戻り、地元のラジオ局でDJをすることになる、というところで終わっている。

シーズン2が日本に上陸するのはまだ先の話だが、とても楽しみだ。

人生の苦境に際しての対処のし方、やり過ごし方は人様々で、ティグのような受容の仕方もあるのだと、教えられるところが大きい。

ティグ・ノタロの作品はあまり多くない上に、日本ではまだ上映されていないようだが、今後もっと見られるようになるといいと思う。こうしたコメディは好きだなあ。

コメント
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