ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

ファーザー

2021-10-31 15:09:06 | 映画

Netflixで見た映画

「ファーザー」(フロリアン・ゼレール監督 2020年イギリス・フランス合作)

が秀逸だったので紹介したいと思います。

主演はアンソニー・ホプキンス、とくればいい映画に決まっていますが、

なにしろこれ、サスペンスタッチ、ミステリータッチで物語が進行するので、

最初のうちは混乱します。

え、一体どうなってるの??

ぜひ前知識なしでご覧になることをお勧めしますが、

でも、感想を書くにはネタバレがどうしても必要なので、

ここからはネタバレです。
     ・
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     ・

実はこれ、アンソニー・ホプキンス演じるところの父親(アンソニー)の視点で描かれた

認知症の人の世界の話なのです。

登場人物はアンソニーとその娘、娘の夫と介護人の数人のみ。

脚本が秀逸なので、観客はいきなり認知症の父親の視点で周囲を見ることになり、

混乱の連続です。

冒頭、娘のアンに、恋人ができたのでパリに行くことになった、と告げられた父親、

しかし、その直後に、娘が別人に入れ替わり、その娘には夫もいて、彼はここは僕の家だとアンソニーに告げます。

アンソニーは最後まで自分がいるのは自分が所有しているフラットだと言い張るのですが、

そのフラットは、娘のアンのものだったり、入れ替わった娘のものだったりします。

さらに、パリに行くと告げた娘には夫がいて、彼もまたここは自分の家だと主張する、

と言った具合です。

一体、何が真実なのか、何が進行しているのか、娘は一人なのかそれとも二人なのか、

娘は結婚しているのか、それとも独身なのか・・

これらすべてがアンソニーの頭の中でごちゃごちゃになり、時系列もごちゃごちゃになっているので、

見ている側も混乱してきます。

けれども、見ているうちにこの家族に起きたことが次第に明らかになってきます。

娘は二人いて、一人は事故死したようです。

娘と父親の間にある距離感や愛情を、認知症の世界を通すことで切実に表しています。

こういう映画は他にも「明日の記憶」「アリスのままで」などありますが、

この映画では、観客はいきなりアンソニーの世界に引きずり込まれる。

そうか、認知症になると、世界はこういう風に見えてくるのか、これは大変だ、と思わせられます。

何といってもアンソニー・ホプキンスがすごい、もう神がかっている。

すごい役者なのだなあと(今さらですが)思いました。

認知症はまだよそ事よ、と思っている人も、

サスペンス映画だと思って見てみるといいかもしれません。

ある日突然、あなたの周囲の人間が入れ替わったり、時系列がごちゃごちゃになったりしたとき、

きっとこの映画を思い出すことでしょう。

 

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クーの病気

2021-10-27 13:44:44 | 

我家にクーがやってきてから2か月がたちました。

最近では、朝は早くに起こしにくるし、夜は足元にスリスリしてくるようになり、一日に一度は抱っこ(ちょっと無理やりだけど)するようにもなってきて、どんどん家猫らしくなってきていたのですが、

一昨日のこと、

朝から落ち着きがなく、頻繁にトイレに行くようになりました。

土曜日に息子が帰ってきて一晩泊まり日曜日の午後自宅のアパートに戻っていったのですが、

クーは男の人に慣れていないので、その間ずっと私のベッド下に隠れたまま翌朝まで出てきませんでした。

おまけにこの日は寒かった。

その月曜の朝のことです。トイレに頻繁に行くようになったのは。

月曜日、私は仕事があって時間が取れなかった。

火曜日も出かける用事があり、帰宅したのは夕方。

娘にメールしたら、

「膀胱炎かもしれないからすぐに動物病院に連れていったほうがいい」という返事が。

そこで、クーを保護して私に譲ってくれたMさんに連絡し、夜になって車で駆けつけてもらい、

近所の動物病院に駆け込みました。

何しろ、初めてのこと。

私一人だったら、どうやって捕まえてリュックに入れて(ペット用のリュックは買っておいた)、歩いて(あるいはタクシーで?)病院まで連れていったらいいかわからない。

動物病院ていくらかかるのか、いくら用意すればいいのかもわからない。

わからないことだらけで、おろおろするばかりでした。

これじゃ、猫の飼い主失格よね。

Mさんが来てくれて、手早く洗濯用ネットにクーを入れて、洗濯用ネットごとキャリーバッグに入れて、車で病院に駆け込みました。

しかも、近所の動物病院の先生がとてもいい先生で、値段も良心的で助かりました。

膀胱炎とのことで、注射を一本して初診料込みで5200円ほど。

ちなみに病院にいる間、クーは無抵抗で押し黙ってただただ我慢している様子でした。

「借りてきた猫やってるね」とMさん。

怖い思いをすると、クーは「借りてきた猫」になります。

そして、家に帰ってから、爪とぎの段ボール片を散らかし、猫砂を散らかし、ストレス発散します。でも、そういうのを見ると、元気なのねえ、とひと安心。

というわけで、無事病院にも行き、注射もすませ、トイレの回数も今日になって減ってきたので、

やれやれ、

という感じです。

今はベッド下ですやすやお休み中。

いやあ、ペットを飼うのってけっこう大変ですわ。

これからもいろいろあるんだろうなあ・・

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真夜中のミサ

2021-10-22 11:05:19 | 映画

今日は、Netflixのドラマ

「真夜中のミサ」

を紹介したいと思います。

これもすごく面白くて一気見してしまいました。

序盤はゆっくりなのだけど、徐々に盛り上がっていき、最後はもう混乱とカオスに至るという展開で目が離せません。

キリスト教に関わるストーリーですが、どちらかというとアンチキリスト教的な内容なので、熱心なキリスト教徒の方にはあまりお勧めできないかもしれません。

でも、これは人間の心理についての普遍的なストーリーでもあります。

人々がどのように洗脳されるか、洗脳される人とされない人はどこが違うのか、そして洗脳者の頭の中はどうなっているのか、はたまた信仰とは何なのか・・これらが非常に巧みに描かれています。

住民が126人しかいない小さな島に、島から出ていった2人の男が戻ってくるところから物語は始まります。

一人は主人公のライリー。彼は飲酒運転で事故を起こし、少女を死なせてしまった罪で4年間服役した後に島に戻ってきます。

もう一人は島の教会に派遣された新任の神父ポール。前任の神父プルーイットは旅先で病気になり戻ってこれなくなったので、その代わりに派遣されたと紹介されます。

この二人が島にやってきてからというもの、奇妙な事件が相次いで起きます。

海岸に多くの猫の死体が散乱していたり、車椅子の少女が突然立ち上がって歩きだしたり、妊婦のお腹から赤ちゃんが消えたり、太陽の光を浴びると皮膚が燃えたり・・

この太陽の光で皮膚が燃える現象を、島で唯一の診療所の医師であるサラは、ある種の感染症(ポルフィリン症という血液疾患)ではないかと推測し、その感染源を突き止めようとします。

しかし、事態は思わぬ方向に展開していきます。

ネタバレは避けたいので、これ以上は書けませんが、

人々がおりなすストーリーがそれぞれ面白く、

主人公のライリーとエリンの恋愛の行方も気になります。

通奏低音のように流れているのがキリスト教の教義。

熱心な信者であり教会に仕えているべヴァリーは、事あるごとに聖書を引用し、人々に神への信仰を試されているのだと訴えるのですが、

あまりに狂信的、教条主義的でカルトの教祖を彷彿とさせます。

彼女に従う者も反発する者もいる。

そして物語は徐々に終盤に入っていき・・

やがて、混乱とカオスが訪れる・・

という感じですねん。

いやあ、面白かったよお~~

キリスト教をよく知らない人でも十分楽しめると思います。

 

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OLD

2021-10-19 09:48:45 | 映画

九月半ばのある晴れた日、

たまたま一日空いたので、気晴らしに立川に行き、たまたま映画館で上映していたナイト・シャマラン監督の最新作、

「OLD」

を観てきました。

予告編があちこちで流れていたのでご存じの方も多いかと思います。

シャマラン監督といえば「シックス・センス」をはじめ、ちょっと趣向の変わったサスペンスやSFチックな映画が多いですね。

面白いのもあれば、つまらないのもある。

私はけっこう好きです、この監督。

で、この日はたまたま映画でも見ようとふらりと入った映画館。

外はとてもいい天気。

映画が終わって出てきてもまだいい天気。

なんか時間が止まったような一日でした。

この映画、実は時間がテーマです。

休暇を楽しむためリゾート地にやってきた家族が遭遇する奇妙な世界。

ホテルの人に案内されて人里離れたビーチに行った数家族。

ところが、このビーチでは時間の流れが全くちがって、人がみるみるうちに老いていく。

何しろ30分で一年、一日で50年が経過するという恐ろしいビーチ。

6歳だった子供はあっというまに思春期を迎え、やがて成人し、両親は老いを迎え・・

その間に様々な出来事が起きて、ビーチに集まった数家族は時間の流れに翻弄される、というストーリーです。

スリラーでありサスペンスであり、しかも最後に伏線が見事に回収されて、

ああ、そういうことだったのね、

というオチまでついててね、

最後にすべての謎が解けて、ほっとして劇場を出ると、

そこにはあいかわらず晴れた空があったのでした。

こちらでは時間が止まっていたみたい。

時々、時間を巻き戻せたらいいのに、あるいは一日がもっと長かったらいいのに、と思うけど、

この恐ろしいビーチにいるよりはずっとマシだわ、と思えました。

シャマラン監督の映画は、映画館を出ると世界がちょっと違ってみえてくる。

なので、劇場で観たほうがいい。

劇場の中で起きていることと、現実とのギャップが面白い。

私たちはつい今しがたまで物語の世界にいたのに、外に出たらあいかわらずの青い空。

現実ってなんだろうね、

そう思える映画です。

帰りにちょっと高めの夕飯食べて帰りました。

ただそれだけなのに不思議と幸せな一日でした。

幸せってすぐそばにあるのね。

OLDの皆さんにお勧めの映画です。

 

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ヨルガオ殺人事件

2021-10-15 11:35:06 | 

アンソニー・ホロヴィッツの最新刊

「ヨルガオ殺人事件」(創元推理文庫)

を読了したところです。

これ、以前も書いた「カササギ殺人事件」の続編です。

「カササギ殺人事件」と同様、今回も一度で二度楽しめるミステリーの二重構造。

殺人事件の謎解きのヒントとして、アティカス・ピュントと言う風変わりな名前の探偵が登場するミステリー「愚行の代償」(アラン・コンウェイ作)が、全話まるごと挿入されるというもの。

もちろん、アラン・コンウェイも作中人物です。

前回の「カササギ殺人事件」でもアラン・コンウェイ作のミステリー(探偵アティカス・ピュントが登場する)が入れ子構造で挿入されていました。

前回と違うのは、冒頭に登場するのがスーザン・ライランドという編集者(「愚行の代償」の編集者。「カササギ殺人事件」にも登場)で、

今は編集者を辞めて、ギリシャのクレタ島で恋人とホテル経営をしている。そのスーザンのもとに、イギリスから客が訪れ、殺人事件の真相解明と失踪者の捜索を依頼する、というところからストーリーは始まります。

何しろ、上下巻合わせると850ページ!という大部の小説で、しかも複雑に入り組んだ構造と登場人物の多さに上巻の途中で投げ出そうかと思ったほど。

翻訳もので苦労するのが人の名前ですね。

何度出てきても覚えられない。似たような名前がたくさんある上、カタカナで表記するとえらく長くなる。

それでも、我慢して上巻を読了し(挿入されたミステリー「愚行の代償」の途中で上巻が終わる)下巻に突入したわけですが、

下巻はもう本を置く間もなく深夜過ぎまで読み進み、翌朝一気に読了しました。

(今回はあらすじは省略します。知りたい方はネットでどうぞ)

上巻は少々長く感じます。スーザンと恋人の関係は退屈なのでバッサリ切るべし。読者は(特に高齢の読者は)ここで本を投げ出す可能性あり。

でもね、下巻は圧巻でした。

(高齢の方々、途中で投げ出さずに最後まで読むべし)

挿入されたミステリー「愚行の代償」の謎解きも圧巻なら、「ヨルガオ殺人事件」の謎解きも圧巻。伏線が見事に回収される心地よさ。しかも、最後の最後(下巻420ページ中418ページ目)で大きな謎が解明されるという仕掛け。

やるじゃん!

とにかく圧倒されるのは、どの謎も解かれてみると、なるほどそれ以外にないよね、と思えてくるところ。

アンソニー・ホロヴィッツ、恐るべし。

とはいえ、今回は少々苦言も呈したい。

だって、上巻が長すぎる。登場人物が多すぎて、名前が長すぎて、ミスディレクションも多く、途中でかなりいら立つ。

何より、アラン・コンウェイという作家が魅力的じゃないし、彼が創り出した探偵アティカス・ピュントもひどい。

「ヨルガオ殺人事件」で重要なヒントはアナグラムなのですが、この探偵の名前のアナグラムほどひどいアナグラムはない。こんなものを創りだした時点でアラン・コンウェイは失格だし、アンソニー・ホロヴィッツにも、

何考えとんじゃい!

と言いたい。

とはいえ、謎解きの見事さはさすがです。

ちなみに、原題は「Moonflower Murders」ヨルガオってMoonflowerというらしい。

ヨルガオはヒルガオ科の植物で夜になると満月のような白い花を咲かせます。

アサガオ、ヒルガオ、ユウガオ、ヨルガオ、と4種の「カオ」があるけれど、この中で仲間外れはどーれだ?
  ・
  ・
答えは、ユウガオ。これだけウリ科。あとはヒルガオ科の植物です。どれもよく似てるけどね。

私は、このアティカス・ピュントのシリーズより、ダニエル・ホーソーンのシリーズの方が好きだなあ。

ダニエル・ホーソーンもかなりの変人ですが。

「メインテーマは殺人」

「その裁きは死」

早く次が出ないかしら。

 

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