ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

「大河への道」

2024-07-06 10:15:19 | 映画

天地明察」の安井算哲に続き、同じく江戸時代に天文学を修め、日本の地図を作った伊能忠敬、

その伊能忠敬にまつわる映画がこれです(「天地明察」については2023年12月26日の記事参照)。

「大河への道」(中西健二監督 2022年 松竹

伊能忠敬については日本地図を作った人、ということくらいしか知らなかったのですが、

この映画を観て、当時の測量のやり方や地図製作に関わった人たちのことなど詳しく知る事ができました。

「天地明察」同様、この時代の日本人て凄かったんだなあ、というのが率直な感想です。

当時は、カメラや印刷機はおろか、鉛筆や消しゴムさえない。すべてを正確に筆で書いて汚さぬように編纂しなくてはいけないのですから、細心の注意と技術が必要なわけです。この時代の人々(多くの名もない人々)の英知と技術はすごいと改めて思いました。

それはさておき、

映画はまず伊能忠敬が亡くなるシーンから始まります。

伊能忠敬の映画なのに。

そして突然場面は現代に変わり、

千葉県香取市の観光課の池本という人物が登場します。

彼は地元の有名人である「ちゅうけいさん」こと伊能忠敬をNHKの大河ドラマに起用してもらいたいと考えている。

え、大河への道って、NHKの大河ドラマへの道、だったのね、とここで気づくわけ。

大河ドラマを実現させようと奔走する池本を中心に、コミカルな笑いを誘いつつ映画は進行します。

ところが、

伊能忠敬は日本の地図を完成する前に亡くなっていた、という事実が判明し、伊能忠敬を大河ドラマにするのは無理だという話になっていきます。

場面は再び伊能忠敬の時代。

伊能の遺志を継いだ弟子たちは、伊能がまだ生きていると偽装工作をして幕府を手計り、伊能の偉業を達成すべく協力しあって、実際に伊能忠敬が思い描いていたとおりの地図を完成させる、というのが全体のストーリーです。

伊能忠敬の遺志を継ぐ人々の伊能忠敬への尊敬の念、そして地図にかける想いが痛切に伝わってきて、最後はもう感動の嵐という展開になります。

ここで伊能忠敬の生涯について少しだけ触れておきます。

伊能忠敬は1745年に生まれ、1818年に死去。

50歳の時に当時幕府の天文方であった高橋至時(よしとき)に師事し、天文学や暦学を学ぶ。

56歳から17年かけて全国を測量し、73歳の時に道半ばで死去。忠敬の遺志を継いだ弟子たちが彼の偉業を達成すべく、その後3年かけて未測量の地を測量して、1821年に「大日本沿海興地全図」を完成させた。

(実測図とほぼ変わらない伊能忠敬の日本地図。これが200年前に完成されていたという驚愕の事実)

50歳で31歳の高橋至時に師事し(!)天文学と暦学を修め(!)56歳から17年(!)もかけて日本全国を歩き回って測量したのですよ!!!

シニアの星☆☆☆と命名したい!! 一番星と!

一体、200年も前にどうやって日本地図を完成させたのか?

答えはシンプル。一歩一歩、歩いて測ったのです。

それがどれほどの偉業だったか、言葉ではとうてい表すことはできません。

そういう人物が日本にはかつて存在し、それが今の日本を支えていることだけは間違いのない事実です。

いやあ、これは鳥肌もので、日本人であることに誇りを感じますね。

伊能忠敬、もっと知られていい人物です。

興味ある方はぜひ映画をご覧になってください。Netflixで見られます。

 

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関心領域

2024-06-13 18:14:18 | 映画

たまたま一日空いたので、映画を観に行きました。

「猿の惑星」か「関心領域」か迷ったのだけど、賞をいっぱい取っている「関心領域」にしました。

これ、冒頭で画面が白いまま不気味な音だけがしばらく続くのですよ。

機械故障したのか?と思うほど。

それからようやく小鳥の声が聞こえ、夏の川で一家が川遊びをしている平和な光景が見えてきます。

この一家、あのナチスの悪名高いルドルフ・ヘスの一家なのでした。

ヘスの一家はアウシュビッツの収容所の隣に住んでいます。

一戸建ての大きな家と広い庭にはプールや温室まである。

子どもは5人、一番下の子はまだ赤ん坊。

一家は実にのんびりと休日を楽しみ、友人たちを呼んでパーティをやったりするのですが、

塀の向こうにはアウシュビッツの収容所の建物が見え、煙突からは煙がもくもく立ち昇り、

時折銃声や悲鳴や怒声が聞こえてきます。

でも、ヘス一家は何喰わぬ顔で日常を送っている、その不気味さ。

何より通奏低音のように流れる焼却炉のゴーッという音。

臭いだってすさまじいだろうに、よくあんなところで平気で暮らしていけるもんだ、

と観ている側は思うわけです。

いやあ、気持ち悪い映画だった。

もうずっと吐き気のようなものを感じていました。それでも途中で寝落ちしそうになったくらい起伏の少ない、平坦なドキュメンタリーのような映画でした。

でも、お腹に堪える気味悪さでした。

しばらく何も食べられない感じ。

最後にヘスが、焼却炉の代わりにガス室にすれば一度に大量に処分できると提案し、上層部がそれを受け入れるというシーンがあります。

その帰り、ヘスは階段を下りて行くのですが、突然吐き気に襲われるのですね。

以前ここでも紹介したハンナ・アーレントは「全体主義の起源」の中で(2020年11月20日の記事参)、

「全体主義運動は一貫性をそなえた嘘の世界をつくりだす」

と言っているのですが、ヘスの家族はまさにこの嘘の世界の中で、自分たちだけは特権階級で豊かな暮らしを享受する資格があるのだと思い込み、隣で何が起きているかには全く無関心で生きている。

しかし、ある時ヘスの妻の母親が訪ねてきて、この家の異様さに気づいてさっさと逃げだすというシーンもありました。

彼らは全く無関心なのかというと、そうでもないのではないか。実は無関心を装ってはいるけれど、ちゃんと気づいていて、しかしそれを感じないように心を閉ざし、これでいいのだと自らに言い聞かせながら、毎日を過ごしているのではないか、という気がしました。

屠殺場(今は食肉処理場と言わなくてはいけないようですが)で働いている人がいちいち牛や豚の気持ちを感じていては仕事にならない。それと同じような心理なのではないか。人間と牛や豚は違う、と言われるかもしれないけれど、ユダヤ人は悪である、とレッテルを貼ったらもう牛や豚と一緒なのです。あな恐ろしや。

そして、実は私たちも同じようなことをしているのかもしれない。

私とお前は違う、と境界線を引いたとたん、何をしてもかまわなくなる。

愛は統合する力であり、悪は分断である、と何かで読んだのですが、だとすると境界線を引いた瞬間に悪は生まれるのかもしれない。

いやあ、それにしても、気味の悪い映画でした。

若い人たちは見たほうがいいです。世界で何が起きていたのかを知るために。

でも、私の年だともうちょっと楽しい映画のほうがいいかな。

やっぱり「猿の惑星」見ればよかったかも・・

 

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古畑任三郎が帰ってきた!

2024-06-08 13:47:22 | 映画

フジテレビで「古畑任三郎」30周年記念一挙放送が始まりましたね!

あれからもう30年も経つのか・・というのが正直な感想です。

当時は古畑任三郎が待ちきれなくて、TVにしがみついて観たものです。

名探偵コロンボや名探偵ポワロも好きだけど、古畑任三郎の比ではない。

やっぱり田村正和の存在感が半端なくてね。視聴者の(特に熟年女性の)心をわしづかみにしたものです。

あれから30年も経つのかあ・・

人生の成熟期だったのに、気が付けばあれよあれよと過ぎ去っていった感があります。

何してたんだろ、あの頃・・

ともかく、こうしてまた古畑任三郎に出会えるのは本当にうれしい。

もちろんDVDを購入するという手もあったけど高くてね。

今回も午後の2時間をTVの前で過ごすのはもったいないので、Tverに登録して後でまとめて見ています。

いやあ、本当に面白い。

キムタクの回(これはTVで見た)、明石家さんまの回、最高です。

俳優たちの皆若いこと!

まだまだ続くので、スマップの回、津川雅彦の回、NYへ行くバスの回(鈴木保奈美)、松島菜々子の回等々が見れるとうれしい。

私的には鈴木保奈美のバスの回が面白かったなあ。ラジオドラマみたいで。

もうね、頭の中でテーマ曲が鳴り響いていて止めらんないのですよ。

お茶碗洗いながら、洗濯物干しながら、私の頭ん中じゃ、古畑任三郎のテーマ曲が盛大に鳴り響いているのです!

というわけで、私には、蚕、カイコ、解雇じゃなくて、懐古趣味や回顧癖はないのだけど、

今回はもう嬉しくてルンルン気分の毎日です(ていう言葉も古いなあ・・)

30年かあ・・・・

 

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MAY THE 4th BE WITH YOU!

2024-05-04 11:40:35 | 映画

5月4日は「スター・ウォーズ」の日です。

私が最初に「スター・ウォーズ」を観たのは、仙台の映画館でした。

仙台に住む友人を訪ねて行き、そこで「スター・ウォーズ EP4」(1977年公開)を観たのですが、

映画館を出たときは、もう自分がどこにいるのかわからない状態で、しばらくショックが続きました。

世の中にこんな映画があったなんて!!!!!

という驚きと感動と興奮です。

ところが、一緒に行った友人たちは口をそろえて「なんかつまんない映画だったね」と言ったのです。

私のショックはさらに大きくなりました。

え、なんで、なんで、あれがつまんない映画なの???

それ以来「スター・ウォーズ」に共感する人とそうでない人との落差に何度も愕然としたものですが、まあ、当然といえば当然ですね。人の好みはそれぞれなので。

ともかく、あの日以来、私は「スター・ウォーズ」の虜になったのでした。

フォースと共にあらんことを!!

Meow The Force Be With You!!

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「哀れなるものたち」&「バービー」

2024-04-29 10:27:52 | 映画

今年のハリウッドのアカデミー賞で主演女優賞などを受賞した映画、

「哀れなるものたち」

を見ました。

歌曲賞のみの受賞だった「バービー」も見てみました。

やはり「哀れなるものたち」の方が圧倒的に面白い。

ただし、2本の映画には共通点もあります。

リアルとファンタジーの境界があいまいになり、双方が交わり交錯する世界、というのがそれです。

これって、もしかすると実際にアメリカで起きていることなのかもしれません。映画や文学作品はその時代が反映されるので。

バーチャル世界に代表されるような想像(妄想)の世界と現実との融合、同化、混在化。

ストーリーは両者ともシンプルです。女性の成長物語。

「バービー」の方は少々フェミニズム色が強く、これを言いたくて作ったのね、というのがあからさまでイマイチ面白くない。主要な賞を取れなかったのも仕方ないと思います。

一方「哀れなるものたち」はフランケンシュタイン映画です。

死んだ女性の脳味噌を入れ替えて生き返らせ、別人に仕立て上げる。赤ん坊の脳を入れられた女性は赤ん坊時代から成長しなおす。そして、成長と共に欠かせない性の問題がからんできます。

でも少々Too muchかなあ・・あからさまなセックス描写が多すぎてとても子どもには見せられない。

フランケンシュタインの物語といえば、以前ここでも紹介した、

「メアリーの総て」がとてもよかった(2019年10月2日の記事参照)。

「フランケンシュタイン」を世に生み出した作家メアリー・シェリーの物語です。

今回の「哀れなるものたち」も、マッドサイエンティストにより再創造されたベラという主人公(エマ・ストーン)の成長物語であり、なおかつ父子愛の物語、という感じかな。

映像が独特で、不気味で美しい。

でもね、観てから思ったのは、こういう発想ってやっぱり西欧の人間中心主義だなあということ。

人間のもつ想像力、創造力、技術を使えば、何だってコントロールできる、という思い上がった思想のこと。

そして、その思想の来歴もまた、人間ならではのもの。

マッドサイエンティストがなぜマッドサイエンティストになったかについても、今回は語られており、

映画「シャイン」を彷彿とさせます。

結局のところ、

愛なんだよ、愛。

というわけで、面白そうだと思ったら見てみてくださいまし。

 

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