お義母さんの調子が悪くなり、入院するまでの間の1ヶ月。
私がした事と言えば、週末に訪問して、掃除と洗濯と、好みのものを調理する事と。
最後の最後で、お風呂の介助とトイレの介助を2回しただけだった。
食事も一口二口。トイレもやっと。
当初は、脱水のための入院で、数日・・・という話だったので。
義父や義弟夫婦を説得し、介護保険の申請に同行し。退院までに体制を整えようとしたのだけれど。
そのまま、お義母さんは、戻ってはこられなかった。
だから、私には、「介護をした」という経験はないし。
長く支え続けている御家族や。
介護される事を、受け止め続けなくてはならない御本人の、本当の苦労はわからない。
誰だって、いつまでも元気で。自分の事は自分でやれて。自分の選んだ人生を歩いていたいにきまってる。
病気・事故・加齢で、それが「ままならなく」なること。
大切な人の介護で、今までの自分の生活と、折り合いがつかず、悩んでしまう家族。
そんな方に。読んでいただいたら、少し、気持ちが楽になるかな・・・と思う本がこちら。
「寝たきり婆ぁの笑える家族 門野晴子 著 講談社文庫 680円+税」
NHK連続テレビ小説「天うらら」の原案となった本です。
著者の門野さんはノンフィクション作家で。
常に、日常の生活の中の問題に、真摯に関わってこられた方。
そんな門野さん。旧家に嫁ぎ、イエ制度の疑問を感じながら嫁を務めてきたが。
姑が急逝されたあと舅(元気なのだが、何もしない)の世話に愛想がつき。
離婚して、舅やダンナの世話から逃れた・・・と思ったら。
元舅が転がり込んできた・・・
「元舅」との、初めは、不自然な。不思議な家族が。だんだんと、お互いに分かち合える存在になっていく。
そして、今度は、自分の「実の母」の介護をする事になった。←ここから、話は始まる。
この前作の「寝たきり婆ぁ猛語録」もあわせて読んでいただくと、「実母」の「猛者」ぶりがわかります。
身体が動かない・・・けれど、口だけは達者で、「親が子を見るのはあたりまえ!」と豪語する母との、介護生活。
大喧嘩をくりかえしつつも、賑やかに、家族の絆を深めていきます。
よく、「実の母だから、そんな風に看れる」と言われるそうですが。
肉親だからこそ、許せない事や、感情のモツレがある。
・・・どちらが「楽」という事は、こと介護には、ないのだと思います・・・
門野さんの介護生活のスゴイ所は、虚弱の母を抱えながらも、他の兄弟姉妹や子ども達を楽しく巻き込み。ヘルパーさんにも頼む所は頼み。時には、近隣の子どもさんを預かったりしながら、賑やかな生活を作り上げた事。
その中で。家族に年寄りがいる風景・・・というのは、孫やひ孫・・・子ども達にとっても、とても情緒的で緩やかな居場所になる・・・という事にも、気づかれています。
もっとも。美しい話の方は、ほんのわずか。
介護は美談ではありません。美談にしてもいけないと思う。
イエ制度にも一家言。「扶養義務」があるのは「血族」なので。
「嫁」が看てあたりまえ・・・の常識には、「ちょっとまったぁ!」
今の、日本の国の。「自己責任」と、エライ人が決めてしまった貧しい介護保険制度の問題も、よくわかります。
いずれ、だれもが、いく道です。
今、介護されている方は、気持ちの整理をつけるのに、参考になると思いますし。
先々、介護しなくてはいけない方にも、一つのモデルになると思います。
門野さん。豪快な文章で、「この婆ぁ!」とか毒つきながらも。根っこに深い愛情があるのが感じられて、清々しい感じもしました。