韓国で「世界水フォーラム」が行われたそうな。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/society/2015/04/12/0800000000AJP20150412000700882.HTML
168カ国4万人が参加したそうで、この問題の世界における関心の高さがうかがえる。
水がこれだけ不足し、安全な水にアクセスできる人口が現在のように非常に少ない状況が生じているのは、構造的な原因があるように思われる。
というわけで、今回は「水商売」について書いてみる。
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この話題に関する、『「水」戦争の世紀』(モード・バーロウ & トニー・クラーク,集英社新書)という書籍について端的にまとめておられるHPを見つけた。
石岡第一病院の「傷の治療センター」長である夏井 睦(なつい まこと)氏のHPから紹介したい。
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今から10年以上前,「第三世界ではミルクを溶く水が手に入らないために,コカ・コーラを母乳代わりに飲ませられている赤ん坊が多く存在する」と公式に報告されている事実を,あなたはご存知だろうか?
なぜ,水が手に入らないかというと,水の値段が高すぎるからだ。なぜ,コカ・コーラを飲ませているかというと,水よりコーラの方が安いからだ。もちろん,赤ん坊の時からミルク代わりにコーラを飲ませられれば,重大な栄養失調と蛋白質不足をきたす事は,医療関係者なら誰にもわかるだろう。
だがこれは,第三世界だけの問題ではないのである。水を単なる商品と考え,水で大儲けを企むグローバル企業があり,水道事業を民間会社に委託して財政負担を軽くしようと政府が考えれば,これはいつか,私たちにも降りかかってくる可能性があるのだ。
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コーラなどの清涼飲料水は実はまったく「清涼」なんかではなく、なんと10%もの糖分を含んでいる。飲んだら余計のどが渇くと感じるのはそのためである。
「ペットボトル症候群」
実は、糖分が過剰な飲料を脳が「快」と感じるので(しかも飲むと余計にのどが渇くので)、清涼飲料水はハマると止められなくなる。メーカーはこれを見越して製造販売しているのである。
こんなものを母乳の代わりに飲んで育つ赤ん坊って…
引き続き夏井睦氏のHPより~
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食料の自給自足を目指して灌漑農業を始めたサウジアラビアで,穀物1トン生産するのに3000トンの地下水を汲み上げてしまい,地下水(帯水層)があと50年で枯渇することは避けられそうにもない。
世界最大の淡水,アメリカの五大湖の水量は毎年低化を続け,ついにセント・ローレンス川が大西洋に注がなくなった。
中国の黄河は1972年以降,海に注がない日が増え,1997年の断流日数は226日に達している。
かつて世界4番目の湖だったアラル海は輸出用綿花の生産のための使われ,そのため現在では,総水量の80%を失い,残りの水も昔の10倍の塩分を含むようになった。結果として,漁業は壊滅し,周辺地域の気温の変動も大きくなり農業も壊滅した。
これが,世界の淡水の現状である。(中略)
さて,物が足りなくなれば,それをビジネスの対象にする人間,会社が現れるのは世の常である。足りなければ足りないほど,その商品価値はうなぎ昇りだ。
世界的に不足している淡水は石油より貴重な「資源」だと気がついたのが,グローバル企業であり,世界銀行であり,IMFであり,またたく間に,水という資源は投機の対象になり,独占された。全ての地下水を買占め,商品化しようとして彼らは世界中を飛び回っている。
ここで彼らが拠り所にしているのは,「全世界にとって自由市場経済以外の選択肢はなく,この経済モデルに従うべきだ」とする「ワシントン・コンセンサス」である。まさに,淡水危機はワシントン・コンセンサスに基づけばビジネスチャンスであり,水の私有化と商品化の方向が決まってしまった。
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世界銀行もIMFもグルになって、途上国の資源が徹底的に搾取される構造ができあがっている。
これについては「アメリカが世界から収奪する仕掛けはこうして構築された」というエントリーでも扱ったが、「水」さえも例外ではないようである。
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2000年にハーグで開かれた「世界水フォーラム」ではなんと,【水は人間にとって必需品であるが,権利(人権)ではない】と採択した。採択したのは国連と世界銀行である。もちろん後押ししたのは,グローバル企業と営利目的の水道企業。
「必需品であるが権利でない」のだから,金のある者,金を出す者は水を手に入れられるが,貧乏人は手に入らなくなる。それが経済の原則だ。
ある,世界規模の水道会社のCEOは次のように言っているらしい。
「水ほど効率のよい商品はない。何しろ,この製品は生命にとってなくてはならないものだからだ。普通はただで手に入るが,わが社はそれを売っている。」
おそらく彼はこう続けたかったはずだ。
「水がただで手に入らなくなれば,わが社の水を買うしかなくなる。死にたくなければ,わが社に金を払わなければいけない。どんな貧乏人でも死にたくはないだろう」と・・・。
一方,財政的に裕福でない政府は,財政問題の解決策として金のかかる水道事業を民営化しようと考えた。事実,多くの国で本来なら「非営利的公共事業」であるべき水道事業が,営利目的の外資系企業に乗っ取られてしまったのである。(中略)
その結果,どうなったか。
ある国では,国営で行っている水道は裕福な国民にだけ廉価で供給され,貧乏人の住む地域には水道が敷設されず,彼らは100倍の値段の水を水売り商人から買わざるをなくなった。
インドネシアの旱魃で住民の井戸が涸れた時でも,首都ジャカルタの観光客向けゴルフ場では大量の水が芝生に水が撒かれ芝生は青々としていた。
フランスでは水道事業民営化後,水道料金が150%高騰した。
ボリビアでは水道料金が月収の1/5まで跳ね上がり,食費より高くつくものとなった。
そしてこれに,ボトル入りの水,清涼飲料水を売るメーカーが絡んでくる。水が高くて買えない層がいることは,彼らのとってビッグ・ビジネスチャンスだ。彼らは「そんなに高価な水道水を飲まなくても,わが社のミネラルウォーターを飲みましょう。わが社の清涼飲料水を飲みましょう」と宣伝し,水より安い値段で貧乏人たちに売りつけた。かくして,貧しい家庭の赤ん坊達は水でなくコーラを飲んで渇きを癒すしかなくなる。もう,健康になどに構っていられない。(中略)
「水は必需品であるが権利でない」というのはつまり,こう言うことである。
この本では,このようなグローバル企業とそれに追随する政府・自治体を徹底的に糾弾している。人類共通の遺産,そして共通の権利を「コモンズ(共有財産)」として考え,それら(水や空気などの天然資源,遺伝子,健康,教育,文化,伝統など)を売り物にすべきでないと主張している。これらを次世代に受け継ぐのが自分達の世代の義務だと宣言している。淡水は人間だけの独占物ではなく,あらゆる生物が共有する財産だと提案している。そして,「ワシントン・コンセンサス」はこの「コモンズ」の商品化であり,根本的に間違っていると糾弾している。その上で,この,世界規模の淡水供給の不平等を正すために,まず何をすべきかを提案している。
何年か前,解析した人間の遺伝子コードに特許を申請したメーカーがあった。そのニュースを見て,非常な違和感を感じたが,この本を読んでその違和感の原因が初めてわかった。遺伝子を読み取る技術や機械には特許をかけてもいいだろうが,遺伝子コードそのものに特許を与えるのは基本的に間違っているのだ。
この違和感を放っておくと,次は空気の番だぞ。淡水がいよいよ少なくなってあまりに高価になりすぎて売り物にならなくなった時,やつらは「空気」を売り物にするはずだ。これぞ,究極の商品だ。
「空気なんてどこにだってあるから売り物になるわけないよ」と考えている人がいたら,あなたは甘いと思う。売れるものを売るのが商売でなく,売り物でないもので商売するところに「銭の花」が咲くのだ。世界銀行がいきなり「空気は生存にとって必需品であるが,人間の権利ではない」と宣言してからでは遅いのである。
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20世紀は【石油】の世紀。次の21世紀は【水】、その次は【空気】の世紀か…
「CO2排出権」なるものが商品になってしまう時代である。
連中は、何でもかんでも「商品化」する。そしてそれを売りつける。
イギリスでは、自分にかけた生命保険を債権化して販売する…なんて事までやっているそうではないか。
グローバル企業が「呼吸がしたかったら我々にカネを払うことだね」なんて言い出す日も…?
実にぞっとする未来である。「遺伝子の特許」もそうだがこういう事を平気でやる連中の専横を許さない新しい仕組みを創る必要があるだろう。でないと「ワシントン・コンセンサス」が地球を破滅させてしまう。
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