【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

メダルの皮算用

2014-02-03 07:06:23 | Weblog

 オリンピックが近づくと恒例の「メダルの皮算用」が始まります。たとえ最近の世界選手権で連勝していても一発勝負のオリンピックで勝てる保証などない、と私は思うのですが、テレビに登場する人はお気軽に“計算”してくれますねえ。そんなに簡単にメダルが取れるのだったら、自分で取ってきたら?と言いたくなります。
 昨夜はNHKで男子フィギュアスケートの“予想”をしていましたが、「4回転ジャンプを成功させれば金メダルは確実」と。あのう、それって(まだ満塁にもなっていないのに)「ここで満塁ホームランが出たら逆転サヨナラ勝ちです」といった低レベルの野球“解説”とどこが違うんです? 外国の選手で誰が成功させそうなのか、日本の選手での最近の確率はどうなのか、どこか体に不調を抱えていないのか、そんなことを“取材”をもとに述べてもらえないものでしょうか。「頑張って欲しい」「期待しています」と言うだけだったら、ど素人の私にだってできますよ。
 まあ、どうしても“皮算用”をしたいのでしたら、どうぞ。ただ、オリンピック後に“決算”をしてください。それと、最近10回くらいののオリンピックでどのくらい「メダルの皮算用」が当たったかの“成績発表”も。世界でどこの放送局が予想を当てる“金メダル”が取れるのかな?

【ただいま読書中】『地図にかかわる仕事』協力:国土地理院・昭文社、ほるぷ出版、2007年、2200円(税別)

 まずは「地形図製作者」。すべての地図の素になる「基本地形図」を製作(修正)する仕事です。1983年に日本全土の2万5000分の1地形図が整備され、「基本地形図製作」は終了していました。しかし「地図作り」は終了しません。地形の変化、人工物の変化によって「地形」はどんどん変わります。合併によって市町村名や境界も変わります。それらをすべて地形図に反映させなければなりません。時代の変化によって地図記号も変化します(たとえば、私が子供の頃にはあった「塩田」は地図記号から外され、前はなかった「老人ホーム」「風車」が登場しています)。この仕事を担当しているのは、国土地理院です。
 これまで各国は緯度経度に関してそれぞれの座標の基準を用いて地図作りをしていました。日本では明治から「ベッセル楕円形」をもとに定められた「日本測地系」が基準となっています。ところが2002年に「世界測地系」が採用され、新しい規格の地形図が発行され始めました。この「日本測地系」と「世界測地系」では座標に数百メートルのずれが生じます(東京では南東に450m)。
 地形図修正のために、空中写真が用いられます。高度3000~6000mで定められたコースを飛行して、モノクロ・カラー・赤外線のフィルムで撮影をします。国土地理院では、日本の平野部(約19万平方キロメートル)を5年の周期で撮影し続けています。以前は「コースに乗る」ことが大変でしたが、最近はGPSによってその手間は楽になって撮影に集中できるようになったそうです。ただ、空中撮影ができるからといって、地表での測量が不要になったわけではありません。文字通り地道な作業が続けられています。また、雲の影が一つあっても写真は不合格となり再撮影だそうです。その地域で一点の曇りもない天気って、なかなか厳しい条件です。
 私たちが「地図」という場合、それは「地形図」ではありません。道路地図や住宅地図など生活に役立つものが「地図」ですが、それは「地形図」を元に「地図編集」が行われています。「編集」の前に「取材」があります。地形図には載っていない情報を現地で調べるのです。道路建設の情報があれば役所に行って計画を調べ、銀行合併の噂があれば確認して新しい名称を地図に載せる。「必要な情報を地図に載せる」作業は、大変です。さらに、アナログからデジタルになって、地図に載せることができる情報は飛躍的に増えました。ところが一度載せた情報は変化します。それに対応するのは大変です。「地図を作ること」は「社会に興味を持つこと」だったんですね。さらにデザイナーの感覚も必要なのですが、これは今のデジタル時代では、人に何かを届ける商売の人では必須の感覚ということになりそうです。
 パソコンで気軽に地図が使えるようになったときは嬉しかったけれど、今はスマホでも使いやすくて、良い時代になったものだ、と感じています。その「地図」を支えていてくれる人たちに、感謝。



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