【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

腹の裡

2013-06-16 07:48:27 | Weblog

 「幹部のツイッター暴言で復興副大臣が謝罪 福島副知事「危機意識を」」(msn/産経)
 復興庁の水野参事官がツイッターに「今日は、田舎の町議会をじっくり見て、余りのアレ具合に吹き出しそうになりつつも我慢w」「左翼のクソどもからひたすら罵声を浴びせられる集会」などと“暴言”を書き込んだことに関して、副大臣が謝りに行ったそうです。参事官としては、ストレスや不満が貯まりに貯まってネットでそのガス抜きをしたかったのでしょうが、被災者から見たら「中央の人間は腹の中でそんなことを思いながら、お仕事をしていたのか」ですね。なんだかとても不幸な“対決”に感じられます。
 ところで謝罪のために現地を訪れた副大臣、頭をさげながら腹の裡では何を思っているのでしょう? 「自分がやったのじゃないのに」「ええい、腹が立つ」くらいかな? それとも(ツイッターには書けないくらいの)もっとアブナイことを思っている? 知りたいなあ。

【ただいま読書中】『気候が文明を変える』安田喜憲 著、 岩波書店(岩波科学ライブラリー7)、1993年、971円(税別)

 シュリーマンの発掘で知られるミケーネ文明は、紀元前1200年頃突然崩壊しました。その原因については諸説ありますが、著者は遺跡の周辺にあるはげ山に注目します。環境破壊によって滅びたのではないか、と。
 著者は政府の許可を取って、あちこちでボーリング調査を行ないます。目的は「花粉」です。昔の花粉の分布状況を明らかにすることで植生を再現しようというのです。その調査から見えてきたのは予想通り「森の破壊と収奪」でした。建築・造船・燃料(金属の精錬用と生活のための薪)・農耕・放牧……古代文明の繁栄は、森の犠牲の上に成り立っていたのです。しかし、いつかそういった生活には限界が訪れます。森林の破壊は洪水の多発を招き、土壌は劣化していきます。そして今から3200年くらい前、「寒冷化(小氷期)」がミケーネを襲いました。食糧が不足し、食い詰めた人々は都市に流入しますが、そこでは疫病の流行が人々を待ちかまえていました。ちなみに同時期、北ヨーロッパでは同じ原因でゲルマン民族の小移動(とそれに伴う各民族の玉突き移動)が起きています。中国でも殷が滅亡して周が起き、やはり“玉突き移動”が起きて日本列島にも“ボートピープル”が大量に押し寄せ、それによって「縄文→弥生」の動きが生じたと考えられます。
 興味深いのは、同じ時期に「青銅器→鉄器」の変化があったことですが、著者は興味深い指摘をしています。青銅器で有名なキプロスの銅鉱石は、銅の含有量はわずか4%で、なんと40%は鉄だったのだそうです。つまりキプロスの人々が「残滓」として捨てていたものには鉄が豊富に含まれていたわけ。薪不足で困ったキプロス人は、その残滓をハンマーで叩くと鉄が鍛造で得られることを知りました。つまり、薪不足による文明破壊と廃物利用で「鉄器時代」が到来したのです。青銅器よりも強力な鉄器によって人々は新しい地を開拓していきました。
 宗教にも大きな変化があります。それまでの神は「大地母神」を中心とした“システム”を作っていました。ところが天候の大変動によって、「大地」よりも「天(気象)の神」の方が強力である、という見解を人々は持ってしまったのです。悪天候によって飢饉が生じるのですから。その典型が「一神教」です。天の神が地も人も支配する、という概念です。かくして、鉄器を手にした「天の民」は、青銅器を手にした「地の民」を次々征服していきました。
 そういえば現在の「地球温暖化」、一体どんな概念の変容を我々は強いられているのでしょう?



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