紫草(日本ムラサキ)の記

日本ムラサキの紫根は輸入品に頼っています。薬用また、染料として国産紫根の生産普及、流通を期待しています。

日本ムラサキと西洋ムラサキの見分け方

2015-01-11 10:57:55 | 植物

「西洋ムラサキと日本ムラサキの見分け方」

最近、何気なくWikipediaでムラサキについての項目を開いてみた。

文面を読む前に、気になったことがある。ムラサキの紹介写真である。花の部分が判然としない写真であるが、花の色が黄色味を帯びているのである。

一般的に、ムラサキの花を珍重するのは小さいとは言え純白な色ゆえでこそと思っていた。また自分自身も初めて咲いたムラサキの花の純白さに感動した覚えがある。また草全体の姿がすっきりしない。

薮状で、分枝が多くしかも真っ直ぐに伸びていないのである。一瞥した様子では、この写真は西洋ムラサキと思われる。日本ムラサキとの区別が出来ないで掲載されているようである。

西洋ムラサキを栽培したことも実際に観察したことも無いので、文献上でしか紹介出来ないが古い資料に西洋種2種と邦産種のムラサキについて随分と心配をしている記事があるので文面を抜粋して紹介してみたい。

ちなみに、学名は次の様に表記される。



L.erythrorhizon 日本ムラサキ(肥大化する赤紫の根が大きな特徴、草丈30~60cm)

L.arvense イヌムラサキ(日本ムラサキに似ているが紫根が無く草丈は30cmほど)

latifolium 西洋ムラサキ・・・・洋種(根は肥大化するが白く、染料成分はない)

officinale 亜種イヌムラサキ・・・・洋種(  同 上  ) 



「植物と自然」 2 1978 Vol.12 No.2 2月増大号 ムラサキ特集

p35  「武蔵野とムラサキ」    菱山忠三郎(八王子自然友の会幹亊)

はじめに 
(29行 略)
しかし、この紫根栽培も明治維新後、西欧からのアニリン染料の輸入によってまったく武蔵野から姿を消してしまった。

そして、最近になって昭和44年から45年にかけて、突如として武蔵野市を中心に、都下三多摩地方に大変なムラサキ栽培ブームが起こった。・・・・(略)この時のムラサキは実際には邦産のムラサキでなく、染色原料としても使いもにならない、洋種ムラサキの横行だったのであるが、実際これらはよく似ていて、なかなか区別しにくいほどのものであった。・・・(略)

p36
このムラサキはアメリカ東部原産の L.latifolium Michx. であろう。officinaleとは別の洋種だったのである。


p37
洋種と邦産種の見分け方

officinale はヨーロッパを中心にユーラシアに広く分布するもので、アメリカには帰化植物として入り込み,今では路傍,牧草地等に生えているとうことがわかったが、この性質の強さでは日本にも近い将来,帰化してしまいそうな気がする。
 
文献に依る葉、花,堅果の特徴を記すと、

latifolium (葉)幅20~40mm  (花)帯黄色の白 径5~7mm 堅果 3.5~5mm

officinale (葉)幅6~415mm  (花)白かそれに近い 径4~5mm 堅果 3~3.5mm

erythrorhizon(葉)幅15~20mm  (花)純白 径1cm 堅果 3mm


 latifolium とofficinale については「New Britton & Brouwn illustrated Flora」による。

 erythrorhizonについては奥山春季著「原色日本野外植物図譜」による。
 根・・・邦産種の赤紫色が濃いのに比べ、西洋種2種は非常に薄く、太い部分は真白のところもある。ただし、根の細い部分はかなりの色がある。そして乾燥すると、若干赤紫色になってくるようである。なお洋種2種のうちではlatifolium の方が、根の色がいくぶん多いように思われる。

茎葉・・・邦産種には非常に毛が多い。そして葉は邦産種は厚みがあり濃緑色になる。西洋種はこれに比べ毛が少なく、毛も短い。葉の色は淡緑色で、特にofficinale は全体毛が少なく、薄い。なお茎の毛に付いては、西洋種は短い揃った毛が斜上し、邦産種の場合、長く不揃いの毛が概して茎に直角もしくはやや斜上し、て出て毛深いという感じである。

草全体的に見て、邦産種はあまり枝分かれが多くないが、洋種2種は枝分かれが非常に多く繁茂する。そして邦産種は茎が寝ることはほとんどなく、いつも直立するが、西洋種の場合、茎の太さに比べて枝分かれが多いせいか、すぐ地面に横になってしまうものが多い。ひどい場合には茎がとぐろを巻いたようになり、だらしがない。

花については文献には yellowish-white とあるが、これに若干薄い緑色が入っているような気がする。また、邦産種の場合は発芽率が極端に悪いのに、これら西洋種の場合は非常に良く、また邦産種は移植も嫌うのに、西洋種は移植もまったく平気である。
  
以上は文献上の資料であるが、下の写真はそれを裏付ける日本ムラサキの写真である。手許で数年栽培を続けている。




「日本ムラサキの花、純白な花が特徴である」



「茎は直上し、分枝も直上し株全体が上向きに生育し、清楚な姿である」



「繊毛も特徴的で、葉、茎を覆う。これによって霜等の寒さに強いのはと思われる」

1978(昭和53年)の古い文献で、現在洋種2種のムラサキの栽培がどのような現状にあるかは情報を持ち合わせてはいないが Wikipedia 上に掲載されている写真が西洋ムラサキであるとすれば、37年前に指摘されていた「洋種と邦産種の見分け方」を改めて確認する必要があるかも知れない。

特に染料として栽培を検討する場合は、日本ムラサキでなければならないからである。洋種2種のムラサキは染料成分が無いと言われている。

尚、この資料は当ブログで以前紹介した事のある文献に依る。ムラサキ特集1~5(邦産ムラサキ栽培の実際)をご覧ください。文献の写真と表以外の文面を転載したものである。


たまたま手許に資料があったのでムラサキを栽培する際には種の入手から注意をしていた。まずは発芽率が低いと言う文献通りの現実を経験して、わずかに1本のみ育ち開花、結実、採種、翌年は鉢栽培から露地栽培へ移行して多くの種を採種、その翌年には畑に栽培と年月を重ねてきたが、その間に発芽処理方法も見いだす事ができ発芽率もかなり高くなってきた。苗の移植も一般的に行われる様になっている。
コメント (2)
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