「じゃあ、次回は課外授業もプラスするから。」とT先輩は言った。
「どういう授業ですか?」とタカシは疲れ切った表情で先輩に尋ねた。
「留学生のパーティにでる。」
タカシは一度も留学生のパーティに出たことはなかった。しかし、これまでの大学生活で何度も飲み会はやっている。つまり、留学生が来る飲み会、ということだとタカシは理解した。
「あ、飲み会じゃないから、パーティは。」
と、T先輩はタカシの心を読んだかのように言い放った。
しかし、タカシにはその意味が分からなかった。
いつものレッスンのあと、タカシは大学から離れた英国式のバーに連れて行かれた。
席があり、カウンターがあり、ダーツがあり、ビリヤードがあった。
そこにはタカシと同じ大学に通っているらしき留学生たちが集まっていたが、みんな、あちこちに散らばっていて、立って飲むものもいれば、座って飲むものもいた。
タカシは怯えていた。
タカシはこれまで留学生と英語で話したことがほとんどなかったのだ。
T先輩はそんなタカシを引っ張って、何人かの留学生たちと話を始めた。知り合いらしい。
「留学生の知り合い、たくさんいますね。」とタカシが言うと、先輩は、
「いや、全然知らないよ。まあ、このなかの3人くらいは知っているけどね。」
と言った。
タカシにはこのパーティが少し不思議に思えた。
参加者全員が共通の知り合いではないらしく、来る時間も帰る時間もすべてバラバラだった。
開始当初は、自己紹介で精いっぱいだった。
他のすべてのエネルギーをリスニングにあて、タカシはひたすら黙っていた。
しかし、T先輩はそんなタカシにも話しを振るようになった。
タカシは先輩におごってもらったギネス・ビールの力を借りて、勇気を出した。
会場に入る前にT先輩はタカシに、「ビールは飲めるかい?」と聞いてきた。
飲める、とタカシが言うと、「それは結構。じゃあ、今日はおごるから必ず飲んでね。」と言った。
その時は全く理由が分からなかったが、タカシが素面でこの場に溶け込むのは全く無理だと先輩が慮ってくれたのだろう。
最初に先輩から紹介されたのは、ロシア系イギリス人の男性だった。
端正な顔立ちで、いかにも女性にもてそうな様子だった。きれいな英語を話し、タカシのたどたどしい英語にも根気よく付き合ってくれた。
タカシは彼の青い瞳に見つめられると、なんだかそこに吸い込まれて、魔法でもかけられているような気がした。
T先輩は無理にでもタカシに話を振り続け、そして複雑な会話は一度簡単に要約してあげた。
その後も、アメリカ人やオーストラリア人などと話した。
何人かはT先輩にとっても初対面だった。
T先輩はタカシに笑いながらつぶやく。「大事なのは、勇気ね。」
タカシはこれまでのどんな瞬間よりもT先輩を心強く思い、そして尊敬した。
T先輩は女性たちとも話したが、基本的には男性と熱心に話をした。
留学生の男たちと会話しているときのT先輩は、これまで見たT先輩とは少しだけ違って見えた。
なんというか、少し「男らしい」感じだった。
タカシは上機嫌でそのパーティを後にした。
帰り際、T先輩はそんなタカシに「楽しかった?」とだけ聞いた。
はい、とっても。とタカシは答えた。嘘ではなかった。何より、英語で会話出来たことに勇気と自信がわいた。
「パーティの雰囲気が少し分かったでしょ。
もし君がイギリスに行ったら、こういうパーティに色々と出ることになる。
ただ、その時は今日よりもずっと辛い思いをするかもしれない、とだけ覚えておいてほしい。」
と、T先輩は言った。
どういうことですか?とタカシが尋ねたものの、T先輩は「まあ、その理由はイギリスに行った時に君が見つけるといい。」とだけ言った。
「どういう授業ですか?」とタカシは疲れ切った表情で先輩に尋ねた。
「留学生のパーティにでる。」
タカシは一度も留学生のパーティに出たことはなかった。しかし、これまでの大学生活で何度も飲み会はやっている。つまり、留学生が来る飲み会、ということだとタカシは理解した。
「あ、飲み会じゃないから、パーティは。」
と、T先輩はタカシの心を読んだかのように言い放った。
しかし、タカシにはその意味が分からなかった。
いつものレッスンのあと、タカシは大学から離れた英国式のバーに連れて行かれた。
席があり、カウンターがあり、ダーツがあり、ビリヤードがあった。
そこにはタカシと同じ大学に通っているらしき留学生たちが集まっていたが、みんな、あちこちに散らばっていて、立って飲むものもいれば、座って飲むものもいた。
タカシは怯えていた。
タカシはこれまで留学生と英語で話したことがほとんどなかったのだ。
T先輩はそんなタカシを引っ張って、何人かの留学生たちと話を始めた。知り合いらしい。
「留学生の知り合い、たくさんいますね。」とタカシが言うと、先輩は、
「いや、全然知らないよ。まあ、このなかの3人くらいは知っているけどね。」
と言った。
タカシにはこのパーティが少し不思議に思えた。
参加者全員が共通の知り合いではないらしく、来る時間も帰る時間もすべてバラバラだった。
開始当初は、自己紹介で精いっぱいだった。
他のすべてのエネルギーをリスニングにあて、タカシはひたすら黙っていた。
しかし、T先輩はそんなタカシにも話しを振るようになった。
タカシは先輩におごってもらったギネス・ビールの力を借りて、勇気を出した。
会場に入る前にT先輩はタカシに、「ビールは飲めるかい?」と聞いてきた。
飲める、とタカシが言うと、「それは結構。じゃあ、今日はおごるから必ず飲んでね。」と言った。
その時は全く理由が分からなかったが、タカシが素面でこの場に溶け込むのは全く無理だと先輩が慮ってくれたのだろう。
最初に先輩から紹介されたのは、ロシア系イギリス人の男性だった。
端正な顔立ちで、いかにも女性にもてそうな様子だった。きれいな英語を話し、タカシのたどたどしい英語にも根気よく付き合ってくれた。
タカシは彼の青い瞳に見つめられると、なんだかそこに吸い込まれて、魔法でもかけられているような気がした。
T先輩は無理にでもタカシに話を振り続け、そして複雑な会話は一度簡単に要約してあげた。
その後も、アメリカ人やオーストラリア人などと話した。
何人かはT先輩にとっても初対面だった。
T先輩はタカシに笑いながらつぶやく。「大事なのは、勇気ね。」
タカシはこれまでのどんな瞬間よりもT先輩を心強く思い、そして尊敬した。
T先輩は女性たちとも話したが、基本的には男性と熱心に話をした。
留学生の男たちと会話しているときのT先輩は、これまで見たT先輩とは少しだけ違って見えた。
なんというか、少し「男らしい」感じだった。
タカシは上機嫌でそのパーティを後にした。
帰り際、T先輩はそんなタカシに「楽しかった?」とだけ聞いた。
はい、とっても。とタカシは答えた。嘘ではなかった。何より、英語で会話出来たことに勇気と自信がわいた。
「パーティの雰囲気が少し分かったでしょ。
もし君がイギリスに行ったら、こういうパーティに色々と出ることになる。
ただ、その時は今日よりもずっと辛い思いをするかもしれない、とだけ覚えておいてほしい。」
と、T先輩は言った。
どういうことですか?とタカシが尋ねたものの、T先輩は「まあ、その理由はイギリスに行った時に君が見つけるといい。」とだけ言った。