4)「エ」について
この「エ」の内容については異論がありません。他の「ア」「イ」「ウ」「オ」については内容的に疑問だらけであるのに対して、この「エ」については、ここで実質的に言われていることについて異論がないわけです。しかし、細かいことにこだわるように思われるかもしれませんが、このような表現がなされることには疑問があります。、その背景にある基本的な考え方が問題であると思う(ですのでけっして「細かいこと」ではない、と思う)からです。
なぜ「筆界」として認定すべきものを「筆界特定書及び筆界特定図面に記録された特定点」と単純に言わずに、「特定点を当該図面等の情報に基づき復元した復元点」というのだろうか?・・・という疑問です。
このような言い方をする背景には、「筆界というのは現地で認定するものだ」という考え方があるように思えます。しかしそう考えるべきなのでしょうか?私はそうではなく「情報として認定するものだ」と考えるべきだと思います。その「情報」を「現地」において確認するとしても、あくまでも確認すべきものは「情報」として考えるべきだ、と思うのです。
前回述べた「現地」と「情報」との関係の問題です。「現地」において設定されたり確認された筆界は、それを示す「情報」とされることによって「認定」され、その「情報」が公示されます。これにより「筆界が明らか」な状態が作られるわけです。この「情報」がいつでも「現地」に戻すことができるものである場合には、単に観念的な「情報」であるだけでなく、「現地」性をも持つものとして「情報=現地」ととらえられます。その意味で「筆界は情報として認定されるもの」だと考えていいのであり、「現地で認定する」ということにこだわる必要はない、ということです。
今述べた「情報を現地に戻すことのできる」ということについて、一般に「現地復元性」という言葉が使われます。「現地に戻す」ことのできる性格ですから「現地復元性」と呼ぶことに何の間違いもないのですが、それが「何のためのものなのか」ということを考えると「現地指示性」「現地特定性」というような用語の方がいいのかもしれないと思います。この点について、「現地復元性」ということが言われるようになった頃、たとえば次のようなことが言われています。
「何のためか」と言うと「ここが筆界点なんだと認識することができる」ようにすることだ、ということが示されています。期待されているものは「現地特定機能」であるわけです。
このことから、「現地特定機能」を持つ情報は(少なくとも「筆界」を管理する公的機関(登記官)や「筆界を明らかにする業務の専門家」たる土地家屋調査士においては)それ自体として「現地」と同一視してもいい、と考えるべきです。法的にもそのように設定されていると言えます。
たとえば、と言うかこの項のテーマであるわけですが、「筆界特定」については、前回述べたように「筆界の現地における位置を特定すること」であるという定義規定がなされているわけですが、にもかかわらず「筆界特定」の内容としては、現地に標識を設置することは含まれておらず、「筆界特定書を作成」すること(不登法143条)のみで終わっている、というのが不動産登記法での規定です。このことについて土地家屋調査士の間では、「境界標を設置すべきであり不十分ではないか?」という疑問や批判が広くありますが、私はそのようには考えません。もちろん、筆界特定手続によって現地に標識を設置した方が、申請人・関係人等にとってわかりやすいものになる、とは言えるでしょう。できるものなら設置しておいた方が「より良い」と言えます。しかし、それをしないからといって「筆界の現地における位置を特定」できないわけではないのです。「筆界特定書」「図面」(不登法143条2項、不登規則231条5項)において「基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値」として筆界特定する、ということを明らかにしたことによって「現地特定機能」は十分にあるのであり「筆界の現地における位置を特定」したことになる、というように法的に設定されているわけです。
このことからすると「筆界が明らかであると認められる」のは、ストレートに「筆界特定点」と言えばいい、ということになります。これがごく単純な普通の理解だと思います。ところが、「検討報告書(資料)」ではそのようになっておらず、「筆界特定点を当該図面等の情報に基づき復元した復元点」というようにあくまでも「現地」に戻して、「現地」においてでなければ「筆界が明らかであると認」めることができない、と考えているわけで、ここがおかしいのです。
5)「カ」について
再掲します
これについては異論がありません。
その上で、この項は重要なことを示していると思いますので、そのことについて書きたいと思います。
この「カ」は、「判決書図面」に関する二つの要件のうちの一つです。」もう一つの「オ」では「判決書図面に復元基礎情報といい得る図面情報が記録されている場合」についてのことが言われていました。それに対して、この「カ」は、判決書図面に「復元基礎情報」は記録されていない場合のことが言われているわけですが、そのような場合であっても、図面に記載されている内容(①)と現地の状況(②)とを合わせることによって「筆界が明らかであると認められる」場合もある、ということが、ここでは言われているわけです(「合わせ技一本」)。
図面には「復元基礎情報」がないわけですから「囲障、側溝等の工作物の描画」があってもそれだけで「筆界復元」ができるわけではありません。しかしそれらに沿って「境界(筆界)」があるものと判示されており、現地に図示された工作物そのものが残っている場合には、その「工作物に沿った位置」をもって「筆界が明らかであると認められる」ということです。
これは、ごく当たり前のことだと思われるものですが、「現地復元」だとか「復元基礎情報」ということについて、もう一度考え直させられる問題だと言えるのではないでしょうか。
先に見たように(連載②冒頭)、「検討報告書(資料)」では「現地復元性について」ということで次のように言われていました。
この「理論上図面に図示された筆界を現地に復元することが可能である」情報のことを「復元基礎情報」と言っているのです。しかし、今「カ」について見たように「復元基礎情報」がなくても「筆界が明らかであると認められる」場合があるわけです。それは「図面情報」と「現地情報」を合わせてみることによって可能になる、ということです。そういう観点から見てみると、この「復元基礎情報」についても、(2)及び(3)の場合は「近傍の恒久的地物又は測量の基点となる点が現地に現存していることが条件とな」っていたのでした。ここでも「現地情報」が条件として前提にされていたわけです。これは、「カ」のように「囲障、側溝等の工作物」という「現地情報」の存在を前提としていることとは、「程度の違い」があるだけで、本質的には違わないものだと言えます。
そして、このことは「判決書図面」だけに限られるものではありません。古い時期の三斜の地積測量図であってもブロック塀や側溝の描画があり、それに沿って分筆をしたことの示されているようなものは数多くあります。このような場合にも「筆界が明らかであると認められ」て然るべきなのではないか、と考えられます。
ですから、「現地復元」ということを、あまり狭く考えてはいけないのだと思います。「現地復元」と言うと、どうも先の有馬氏著書のように「当該土地の形質が、たとえば開発行為等の人為的原因や水害等の自然的原因によってまったく変更されるに至ったような場合でも」筆界は正しく復元されうる、ことを指すかのように捉えられがちなのですが、問題は筆界に関する図面情報によって筆界の現地における位置を指示・特定することができるかどうか、ということにこそある、ととらえるべきです。それが「ある一定の資料によって、ここが筆界点なんだと認識することができる」機能であり、「法の期待する現地特定機能」であるわけです。ですから、用語としては「現地復元性」という用語よりも「現地指示性」とか「現地特定性」という用語を使用した方がいいように思えます。
そして(繰り返しになりますが)、「現地指示性」「現地特定性」として考えるときには、この性格(この機能を持つ性格)というのは、どんな図面であっても多かれ少なかれ持っている、ということになります。問題はそれがどれだけ高いものかどうか、ということとしてあることになります。公共座標値であれば、理論的にはそれだけがあれば現地の位置を特定することができるので、「現地指示性」「現地特定性」は非常に高い、ということになります。三斜の地積測量図で底辺と高さの数値しか書いてないようなものは、それだけでは非常に低いものと言わざるを得ませんが、工作物が描画されていて、それらが現地に現存するものと一致しているのであれば、その工作物の位置が筆界だと判断しうるわけですから現地特定機能を果たしうる、ということになります。基準点や恒久的地物の存在如何によって左右される任意座標などは、その中間にあるもの、と言えるわけです。
このように、「カ」は、「復元基礎情報」がないけれど「筆界が明らかであると認められる」ケースもあるのだ、ということを示しているものとして、大きな意義を持つ項目だと言えます。その上で、「判決書図面」の場合には、それの作成された時点で存在した工作物が現存することが条件となるが、地積測量図の場合はどうなのか?地積測量図の中の原始筆界と創設筆界での要件の違いはどうなるのか?というようなことに、さらに広げて考える必要があるのだと思います。
以上、「検討報告書(資料)」において、「筆界が明確であると認められる要件」として挙げられているものについて批判的に考えてきました。
次回は、それを踏まえて「筆界が明確であると認められる要件」として私はどのようなものを考えるのか、ということを書いて終わるようにしたいと思っています。
(「筆界の調査・認定の在り方に関する検討報告書」について、「登記情報」誌715号所載の「概要」を素材に以上の検討を行っていますが、「解説」の書籍が6月22日に発売された、とのことです。明後日入手予定なので、その後もう少し正確な読取ができるかもしれません。)
エ 筆界特定登記官による筆界特定がされている場合において、当該筆界特定に係る筆界特定書及び筆界特定図面に記録された特定点を当該図面等の情報に基づき復元した復元点
この「エ」の内容については異論がありません。他の「ア」「イ」「ウ」「オ」については内容的に疑問だらけであるのに対して、この「エ」については、ここで実質的に言われていることについて異論がないわけです。しかし、細かいことにこだわるように思われるかもしれませんが、このような表現がなされることには疑問があります。、その背景にある基本的な考え方が問題であると思う(ですのでけっして「細かいこと」ではない、と思う)からです。
なぜ「筆界」として認定すべきものを「筆界特定書及び筆界特定図面に記録された特定点」と単純に言わずに、「特定点を当該図面等の情報に基づき復元した復元点」というのだろうか?・・・という疑問です。
このような言い方をする背景には、「筆界というのは現地で認定するものだ」という考え方があるように思えます。しかしそう考えるべきなのでしょうか?私はそうではなく「情報として認定するものだ」と考えるべきだと思います。その「情報」を「現地」において確認するとしても、あくまでも確認すべきものは「情報」として考えるべきだ、と思うのです。
前回述べた「現地」と「情報」との関係の問題です。「現地」において設定されたり確認された筆界は、それを示す「情報」とされることによって「認定」され、その「情報」が公示されます。これにより「筆界が明らか」な状態が作られるわけです。この「情報」がいつでも「現地」に戻すことができるものである場合には、単に観念的な「情報」であるだけでなく、「現地」性をも持つものとして「情報=現地」ととらえられます。その意味で「筆界は情報として認定されるもの」だと考えていいのであり、「現地で認定する」ということにこだわる必要はない、ということです。
今述べた「情報を現地に戻すことのできる」ということについて、一般に「現地復元性」という言葉が使われます。「現地に戻す」ことのできる性格ですから「現地復元性」と呼ぶことに何の間違いもないのですが、それが「何のためのものなのか」ということを考えると「現地指示性」「現地特定性」というような用語の方がいいのかもしれないと思います。この点について、「現地復元性」ということが言われるようになった頃、たとえば次のようなことが言われています。
「ある一定の資料によって、ここが筆界点なんだと認識することができる場合に、その資料には現地復元性又は現地指示性があるといってます」(有馬厚彦「詳論不動産表示登記総論」866で引用されている枇杷田泰介「地図のはなし」)
「地図の機能が十分に発揮される限り、現地において、当該土地の形質が、たとえば開発行為等の人為的原因や水害等の自然的原因によってまったく変更されるに至ったような場合でも、地図によって、その土地の筆界は正しく復元されうるはずである、ということができる。地図に、このような能力までを期待した場合、それを一般に、現地復元能力と呼んでいる。逆に言えば、現地復元能力を有する地図であって、初めて、法の期待する現地特定機能を果たすことができるということになる。」(同書P865)
「何のためか」と言うと「ここが筆界点なんだと認識することができる」ようにすることだ、ということが示されています。期待されているものは「現地特定機能」であるわけです。
このことから、「現地特定機能」を持つ情報は(少なくとも「筆界」を管理する公的機関(登記官)や「筆界を明らかにする業務の専門家」たる土地家屋調査士においては)それ自体として「現地」と同一視してもいい、と考えるべきです。法的にもそのように設定されていると言えます。
たとえば、と言うかこの項のテーマであるわけですが、「筆界特定」については、前回述べたように「筆界の現地における位置を特定すること」であるという定義規定がなされているわけですが、にもかかわらず「筆界特定」の内容としては、現地に標識を設置することは含まれておらず、「筆界特定書を作成」すること(不登法143条)のみで終わっている、というのが不動産登記法での規定です。このことについて土地家屋調査士の間では、「境界標を設置すべきであり不十分ではないか?」という疑問や批判が広くありますが、私はそのようには考えません。もちろん、筆界特定手続によって現地に標識を設置した方が、申請人・関係人等にとってわかりやすいものになる、とは言えるでしょう。できるものなら設置しておいた方が「より良い」と言えます。しかし、それをしないからといって「筆界の現地における位置を特定」できないわけではないのです。「筆界特定書」「図面」(不登法143条2項、不登規則231条5項)において「基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値」として筆界特定する、ということを明らかにしたことによって「現地特定機能」は十分にあるのであり「筆界の現地における位置を特定」したことになる、というように法的に設定されているわけです。
このことからすると「筆界が明らかであると認められる」のは、ストレートに「筆界特定点」と言えばいい、ということになります。これがごく単純な普通の理解だと思います。ところが、「検討報告書(資料)」ではそのようになっておらず、「筆界特定点を当該図面等の情報に基づき復元した復元点」というようにあくまでも「現地」に戻して、「現地」においてでなければ「筆界が明らかであると認」めることができない、と考えているわけで、ここがおかしいのです。
5)「カ」について
再掲します
カ 判決書図面に囲障、側溝等の工作物の描画があり、それら囲障等に沿って筆界点が存するなど図面上において筆界点の位置が図示されている場合において、当該図面の作成当時の工作物が現況と同一であると認められ、現地において図面に図示された筆界点の位置を確認することができるときにおける当該位置の点
これについては異論がありません。
その上で、この項は重要なことを示していると思いますので、そのことについて書きたいと思います。
この「カ」は、「判決書図面」に関する二つの要件のうちの一つです。」もう一つの「オ」では「判決書図面に復元基礎情報といい得る図面情報が記録されている場合」についてのことが言われていました。それに対して、この「カ」は、判決書図面に「復元基礎情報」は記録されていない場合のことが言われているわけですが、そのような場合であっても、図面に記載されている内容(①)と現地の状況(②)とを合わせることによって「筆界が明らかであると認められる」場合もある、ということが、ここでは言われているわけです(「合わせ技一本」)。
図面には「復元基礎情報」がないわけですから「囲障、側溝等の工作物の描画」があってもそれだけで「筆界復元」ができるわけではありません。しかしそれらに沿って「境界(筆界)」があるものと判示されており、現地に図示された工作物そのものが残っている場合には、その「工作物に沿った位置」をもって「筆界が明らかであると認められる」ということです。
これは、ごく当たり前のことだと思われるものですが、「現地復元」だとか「復元基礎情報」ということについて、もう一度考え直させられる問題だと言えるのではないでしょうか。
先に見たように(連載②冒頭)、「検討報告書(資料)」では「現地復元性について」ということで次のように言われていました。
1 現地復元性について
「以下の(1)から(3)までに掲げるいずれかの情報が図面に記録されている場合には、理論上図面に図示された筆界を現地に復元することが可能であると考えられる。ただし、(2)及び(3)に掲げる場合には、近傍の恒久的地物又は測量の基点となる点が現地に現存していることが条件となる。
(1)筆界を構成する各筆界点についての測量成果による世界測地系の座標値
(2)筆界を構成する各筆界点についての測量成果による任意座標系の座標値及び当該座標値を得るために行った測量の基点の情報又は2点以上の各筆界点に対する複数の近傍に存する恒久的な地物との位置関係の情報
(3)筆界を構成する各筆界点についての座標値の情報が記録されていない場合における、各筆界点に対する複数の近傍に存する恒久的な地物との位置関係の情報」
「以下の(1)から(3)までに掲げるいずれかの情報が図面に記録されている場合には、理論上図面に図示された筆界を現地に復元することが可能であると考えられる。ただし、(2)及び(3)に掲げる場合には、近傍の恒久的地物又は測量の基点となる点が現地に現存していることが条件となる。
(1)筆界を構成する各筆界点についての測量成果による世界測地系の座標値
(2)筆界を構成する各筆界点についての測量成果による任意座標系の座標値及び当該座標値を得るために行った測量の基点の情報又は2点以上の各筆界点に対する複数の近傍に存する恒久的な地物との位置関係の情報
(3)筆界を構成する各筆界点についての座標値の情報が記録されていない場合における、各筆界点に対する複数の近傍に存する恒久的な地物との位置関係の情報」
この「理論上図面に図示された筆界を現地に復元することが可能である」情報のことを「復元基礎情報」と言っているのです。しかし、今「カ」について見たように「復元基礎情報」がなくても「筆界が明らかであると認められる」場合があるわけです。それは「図面情報」と「現地情報」を合わせてみることによって可能になる、ということです。そういう観点から見てみると、この「復元基礎情報」についても、(2)及び(3)の場合は「近傍の恒久的地物又は測量の基点となる点が現地に現存していることが条件とな」っていたのでした。ここでも「現地情報」が条件として前提にされていたわけです。これは、「カ」のように「囲障、側溝等の工作物」という「現地情報」の存在を前提としていることとは、「程度の違い」があるだけで、本質的には違わないものだと言えます。
そして、このことは「判決書図面」だけに限られるものではありません。古い時期の三斜の地積測量図であってもブロック塀や側溝の描画があり、それに沿って分筆をしたことの示されているようなものは数多くあります。このような場合にも「筆界が明らかであると認められ」て然るべきなのではないか、と考えられます。
ですから、「現地復元」ということを、あまり狭く考えてはいけないのだと思います。「現地復元」と言うと、どうも先の有馬氏著書のように「当該土地の形質が、たとえば開発行為等の人為的原因や水害等の自然的原因によってまったく変更されるに至ったような場合でも」筆界は正しく復元されうる、ことを指すかのように捉えられがちなのですが、問題は筆界に関する図面情報によって筆界の現地における位置を指示・特定することができるかどうか、ということにこそある、ととらえるべきです。それが「ある一定の資料によって、ここが筆界点なんだと認識することができる」機能であり、「法の期待する現地特定機能」であるわけです。ですから、用語としては「現地復元性」という用語よりも「現地指示性」とか「現地特定性」という用語を使用した方がいいように思えます。
そして(繰り返しになりますが)、「現地指示性」「現地特定性」として考えるときには、この性格(この機能を持つ性格)というのは、どんな図面であっても多かれ少なかれ持っている、ということになります。問題はそれがどれだけ高いものかどうか、ということとしてあることになります。公共座標値であれば、理論的にはそれだけがあれば現地の位置を特定することができるので、「現地指示性」「現地特定性」は非常に高い、ということになります。三斜の地積測量図で底辺と高さの数値しか書いてないようなものは、それだけでは非常に低いものと言わざるを得ませんが、工作物が描画されていて、それらが現地に現存するものと一致しているのであれば、その工作物の位置が筆界だと判断しうるわけですから現地特定機能を果たしうる、ということになります。基準点や恒久的地物の存在如何によって左右される任意座標などは、その中間にあるもの、と言えるわけです。
このように、「カ」は、「復元基礎情報」がないけれど「筆界が明らかであると認められる」ケースもあるのだ、ということを示しているものとして、大きな意義を持つ項目だと言えます。その上で、「判決書図面」の場合には、それの作成された時点で存在した工作物が現存することが条件となるが、地積測量図の場合はどうなのか?地積測量図の中の原始筆界と創設筆界での要件の違いはどうなるのか?というようなことに、さらに広げて考える必要があるのだと思います。
以上、「検討報告書(資料)」において、「筆界が明確であると認められる要件」として挙げられているものについて批判的に考えてきました。
次回は、それを踏まえて「筆界が明確であると認められる要件」として私はどのようなものを考えるのか、ということを書いて終わるようにしたいと思っています。
(「筆界の調査・認定の在り方に関する検討報告書」について、「登記情報」誌715号所載の「概要」を素材に以上の検討を行っていますが、「解説」の書籍が6月22日に発売された、とのことです。明後日入手予定なので、その後もう少し正確な読取ができるかもしれません。)