だいぶ間が空いてしまいましたが、前回「筆界資料の蓄積」ということを書きました。
前にも述べたように、ここで言う「筆界資料」には二つのものがあります。
一つは、分筆を行うことによって創設(設定)された筆界や、区画整理によって設定された筆界などの「筆界の設定」にかかる資料です。これが本来の「筆界資料」です。
もう一つは、それに準ずるようなものとしての、分筆などに当たって「確認」された筆界です。これには、分筆登記の際に、新たに創設された筆界とは別に既存の筆界を「確認」したものもありますし、国土調査などで「確認」されたものもあります。この手のものには、いわゆる「原始筆界」に関するものもあります。明治前期に定められた地番同士の境で、それ以降何の変更も加えられてこなかったものについて、国土調査の際に確認されて表示されたり、分筆する土地の外周の境として「確認」され地積測量図に「点と線」の形で表示されることによって公示されることになったものがある、ということです。
さて、ではいわゆる「原始筆界」で、このような「確認」を経ていないものについては、どのようなことになるのか?ということが、今日の課題です。
この「原始筆界」に関しては、点と線の形で筆界が「設定」された経過がないわけですから、上に述べたものと同じような意味での「筆界資料」はありません。
だから「原始筆界」を「点と線」で表示しようとするときには、筆界に接する両土地所有者の認識の一致を「確認」する形で行うことが必要になっていた、のだということが言えます。そして今、その土地所有者の「筆界認識」が失われてしまったり、極めて希薄なものになってしまっているときに、このようなものをどう扱うのか、ということが問題になります。
この「原始筆界」は今言ったような意味で設定されておらず、したがって「点と線」の形では存在しないものではあるものの、そのおよその位置を示唆する広い意味での「筆界資料」は存在します(公図等)し、同じように「原始筆界」の中でも「確認」を経て「設定」に準じる公示のされているものもあることは、今述べたとおりです。
このことによって、これまで「確認」の経過のない「原始筆界」についても、その位置を「広義の筆界資料」(その中には、これまでの「確認」の経験の蓄積を含みます)から推定して「特定」することができるし、そのような「特定」を行うことを基本に考えた方が、なんらの筆界認識も持たない土地所有者に「確認」させるよりも、よほど確度が高いものになる、と言うべきでしょう。
これまでの登記実務における「筆界認定」が、「相隣接する土地の双方の所有者の確認が得られた旨の資料の提供がなければ、筆界の認定が困難であると処理していたのが実情であった」 (「平成17年不動産登記法の改正と筆界特定の実務」)こと、いやむしろ「相隣接する土地の双方の所有者の確認が得られた旨の資料の提供」があれば、それをもって「筆界認定」してしまっていた実情であったことから脱け出して、「広義の筆界資料」によって筆界の位置を特定することを基本にしていくべきなのだと、ということです。
具体的には、分筆登記などにおいて行う既存の筆界についての「認定」をはっきりと位置付けてオフィシャルなものにする、ということが必要なのだと思います。(すべてのばあいに「筆界特定」がひつようになる、ということでもいいかとおもいます。)
現状においては、「当事者が作成した筆界確認書は、これについての登記官の筆界に関する評価が加えられ、登記官が筆界を確認するまでは、当事者間の筆界に関する合意を示すに過ぎない」だとか、「登記官の最も重要な権限の一つである土地の筆界の認定」 (「表示に関する登記における実地調査に関する指針の改定について」H23.5)というような大仰なことが言われているにもかかわらず、その「重要な権限」を行使して行う「筆界認定」には、オフィシャルな位置づけは何もなされておらずきわめてお粗末なものになっているのが「実情」です。
この実情を超えて、分筆登記などの登記実務の中で行う「筆界認定」も、「筆界特定」と同様のものとして位置付ける必要があるのだと思います。
そのためには、「相隣接する土地の双方の所有者の確認が得られた旨の資料」もさまざまな筆界資料の中の一つにすぎないものとしての位置づけを明らかにして、あくまでもそれらの総合的な判断によって筆界の位置を特定する、という「筆界特定手続」の中で行われているのと同様の「審査」を行うようにするべきなのです。
そして、これは逆に「筆界特定」の側から言えば、この10年間の「一方の当事者の同意がない場合であっても筆界についての公的な判断を示」(同上)してきた経験の蓄積の上に立って、「双方の相違のある場合」「一方の同意のない場合」などのタイプ別の処理の迅速化を図っていく、ということが必要になっている、ということなのだと思います。
思えば、分筆等の登記実務の中での筆界資料の蓄積が図られるようになって40年、その30年後から客観的な資料にもとづく筆界の「特定」を始めてから10年が経過しているわけであって、「十分な準備期間」を踏んできているのだと言えるのでしょう。
全国の、特に地方の土地について「所有者不明」「管理水準の低下」という現象の表れている今、「隣接地所有者の同意が得られないので分筆できない(6か月以上かかる)」というようなことをいつまでもしているべきではないのだと思います。もしも、そんなことをいつまでも続けていると、「不要な規制」としてまるごとゴミ箱にほうり投げられてしまうのではないか、とも。
前にも述べたように、ここで言う「筆界資料」には二つのものがあります。
一つは、分筆を行うことによって創設(設定)された筆界や、区画整理によって設定された筆界などの「筆界の設定」にかかる資料です。これが本来の「筆界資料」です。
もう一つは、それに準ずるようなものとしての、分筆などに当たって「確認」された筆界です。これには、分筆登記の際に、新たに創設された筆界とは別に既存の筆界を「確認」したものもありますし、国土調査などで「確認」されたものもあります。この手のものには、いわゆる「原始筆界」に関するものもあります。明治前期に定められた地番同士の境で、それ以降何の変更も加えられてこなかったものについて、国土調査の際に確認されて表示されたり、分筆する土地の外周の境として「確認」され地積測量図に「点と線」の形で表示されることによって公示されることになったものがある、ということです。
さて、ではいわゆる「原始筆界」で、このような「確認」を経ていないものについては、どのようなことになるのか?ということが、今日の課題です。
この「原始筆界」に関しては、点と線の形で筆界が「設定」された経過がないわけですから、上に述べたものと同じような意味での「筆界資料」はありません。
だから「原始筆界」を「点と線」で表示しようとするときには、筆界に接する両土地所有者の認識の一致を「確認」する形で行うことが必要になっていた、のだということが言えます。そして今、その土地所有者の「筆界認識」が失われてしまったり、極めて希薄なものになってしまっているときに、このようなものをどう扱うのか、ということが問題になります。
この「原始筆界」は今言ったような意味で設定されておらず、したがって「点と線」の形では存在しないものではあるものの、そのおよその位置を示唆する広い意味での「筆界資料」は存在します(公図等)し、同じように「原始筆界」の中でも「確認」を経て「設定」に準じる公示のされているものもあることは、今述べたとおりです。
このことによって、これまで「確認」の経過のない「原始筆界」についても、その位置を「広義の筆界資料」(その中には、これまでの「確認」の経験の蓄積を含みます)から推定して「特定」することができるし、そのような「特定」を行うことを基本に考えた方が、なんらの筆界認識も持たない土地所有者に「確認」させるよりも、よほど確度が高いものになる、と言うべきでしょう。
これまでの登記実務における「筆界認定」が、「相隣接する土地の双方の所有者の確認が得られた旨の資料の提供がなければ、筆界の認定が困難であると処理していたのが実情であった」 (「平成17年不動産登記法の改正と筆界特定の実務」)こと、いやむしろ「相隣接する土地の双方の所有者の確認が得られた旨の資料の提供」があれば、それをもって「筆界認定」してしまっていた実情であったことから脱け出して、「広義の筆界資料」によって筆界の位置を特定することを基本にしていくべきなのだと、ということです。
具体的には、分筆登記などにおいて行う既存の筆界についての「認定」をはっきりと位置付けてオフィシャルなものにする、ということが必要なのだと思います。(すべてのばあいに「筆界特定」がひつようになる、ということでもいいかとおもいます。)
現状においては、「当事者が作成した筆界確認書は、これについての登記官の筆界に関する評価が加えられ、登記官が筆界を確認するまでは、当事者間の筆界に関する合意を示すに過ぎない」だとか、「登記官の最も重要な権限の一つである土地の筆界の認定」 (「表示に関する登記における実地調査に関する指針の改定について」H23.5)というような大仰なことが言われているにもかかわらず、その「重要な権限」を行使して行う「筆界認定」には、オフィシャルな位置づけは何もなされておらずきわめてお粗末なものになっているのが「実情」です。
この実情を超えて、分筆登記などの登記実務の中で行う「筆界認定」も、「筆界特定」と同様のものとして位置付ける必要があるのだと思います。
そのためには、「相隣接する土地の双方の所有者の確認が得られた旨の資料」もさまざまな筆界資料の中の一つにすぎないものとしての位置づけを明らかにして、あくまでもそれらの総合的な判断によって筆界の位置を特定する、という「筆界特定手続」の中で行われているのと同様の「審査」を行うようにするべきなのです。
そして、これは逆に「筆界特定」の側から言えば、この10年間の「一方の当事者の同意がない場合であっても筆界についての公的な判断を示」(同上)してきた経験の蓄積の上に立って、「双方の相違のある場合」「一方の同意のない場合」などのタイプ別の処理の迅速化を図っていく、ということが必要になっている、ということなのだと思います。
思えば、分筆等の登記実務の中での筆界資料の蓄積が図られるようになって40年、その30年後から客観的な資料にもとづく筆界の「特定」を始めてから10年が経過しているわけであって、「十分な準備期間」を踏んできているのだと言えるのでしょう。
全国の、特に地方の土地について「所有者不明」「管理水準の低下」という現象の表れている今、「隣接地所有者の同意が得られないので分筆できない(6か月以上かかる)」というようなことをいつまでもしているべきではないのだと思います。もしも、そんなことをいつまでも続けていると、「不要な規制」としてまるごとゴミ箱にほうり投げられてしまうのではないか、とも。