大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

今週の予定 と 読んだ本―「賢者の戦略―生き残るためのインテリジェンス」(手嶋龍一・佐藤優。新潮新書)

2015-02-16 08:27:49 | 本と雑誌
今週の予定
2.17-18 日調連の今年度最後の理事会です。

次に、「読んだ本」
手嶋龍一と佐藤優の「インテリジェンス対論3部作」の3冊目です。
タイトルがどこまで内容に合っているのかは、よくわからないところですが、「ウクライナ」「イスラム国」という、今の世界における大問題についての基礎的な知識を与えてくれるところが、まずは役に立ち、ありがたいところです。

「インテリジェンス」ということについては3冊目になるので、1冊目・2冊目と違う目新しいものがそう示されるわけではありませんが、たとえば「ウクライナ問題」をとらえるときに、ここ数年の動きだけを見ていたのではけっしてわからず、少なくともヨーロッパの近現代史におけるウクライナの位置などの知識の上で今の問題を見るのでなければ皮相な分析に終わってしまう、ということをあらためて思わされました。

そういう中で、たいしたことではないのですが、私が面白いと思ったエピソード。

(佐藤)「僕がイスラエルで案内されたのが、テルアビブ郊外のヘルツェリアにある「カウンターテロリズム・センター」でした。ここは大学院レベルの規模の研究機関なのですが、なんとたった一人の中年男性が運営しているのです。」「で、彼がひとりでどうやって肝心の情報を入手しているのか。驚いたことに、情報源は「インターネット」。あとは、「自然に教えてくれる人が出てくる」のだそうです。」


というものです。「現下の国際情勢を読むには、諜報活動によって得られる秘密情報と、社会に散らばっているオープンソースの情報双方を総合的に分析しないといけない」とも言われていますが、先のエピソードからすると、前者よりも後者の比重の方が重い、ということであるように思えます。

逆に言うと、「諜報活動によって得られる秘密情報」というのは、あくまでもオープンソースの情報・知識の層の厚い蓄積の上ではじめて役に立つものであり、それなしに「秘密情報」だけを追い求めることによってわかること、というのはほとんどなく、逆に正しい分析を阻害することにさえなってしまう、ということが言えるのでしょう。

そのためには「基礎学力」です。いきなりインターネット上にある砂漠の砂のように膨大な情報を手当たり次第に仕入れても有用な情報が得られる、というわけではなく、公開されている情報の中から、それらを結び付けて「宝石」を手に入れるためには、背景にある情勢、その歴史的経緯等に関する「基礎学力」と、それ相応の「インテリジェンスの文法」が必要になる、ということなのだと思います。

素人の「情勢分析」には、どこから仕入れたのかよくわからない「極秘情報」を根拠としているだけ、というものがよくあります。素人が株を買うのにあたって偽の「インサイダー情報」に騙されて損する、みたいなことです。オープンソース情報によってある程度の分析ができるようになっていないと「秘密情報」に頼ることになってしまう、ということでしょうし、真贋を見極めることができないと「秘密情報」「内部情報」と称するものに踊らされ騙されてしまうことになるわけです。
デマにコロッと騙されないように、とにかくまずは「基礎学力」! 肝に銘じておかなければならないことです。