河野美砂子の「モーツァルト練習日記」+短歌+京都の日々の暮らし

7/27(土)13時30分 NHK文化センター京都 ショパン「マズルカ」Op.59全曲、「バラード第3番」等

怪しい場所が好きな犬

2007-09-26 23:04:28 | 
講演会「ショパンを知りたい」のあと、
複数の原稿締切や歌会、歌集批評会、生徒のレッスン等
疾風怒涛とまでは行かないにしても
けっこうじたばたする日々だった。

わが黒犬ろくの散歩は毎日かかせないけど
時間のない時は
私の都合に合わせてさっさと帰ることも。

その罪滅ぼしとして
久しぶりに時間の余裕ある今日は
ろくちゃんの行きたいとこへ
私がお供しました。

まず船岡山。
萩や芒、蓼など、もう秋草の季節です。

でもグラウンドなどは
午前中なので幼稚園児の集団が多く
小さい子がどうも苦手なろくちゃん、
昼でも薄暗く茸がよく生えてる道を通って
そそくさと下山。

それからが長かった。

ふらふらあっち行ったりこっち行ったり
そこここの匂いを嗅ぎながら
西陣の街なかを
おおむね南東に進む。

西陣は、
一時よりも機(はた)の音が聞こえるようになってきました。

一軒一軒、小さなお家がほとんどですが
植木鉢をたくさん並べているお家がけっこう多く
歩いてて飽きません。

出たところが
安居院(あぐい)=西法寺。

紫式部の亡霊を供養するという
能「源氏供養」で有名らしい。
毎年4月には法要があるとか。

先日、源氏物語の講演を聞く機会があって
この安居院のお話がでてきたのでびっくりしました。

それからまたぶらぶら
ろくに任せて歩いてたら、

うらぶれたお社、
紫野斎院の跡である
櫟谷(いちいだに)七野神社に出ました。

ここは神社といっても神主さんがいるわけでなく
ただお社と
大きな樹の2,3本がある程度で
まわりは住宅密集地。

すぐそばが駐車場になってたり
廃屋がなだれかかってたりする、
ちょっと怪しい感じの場所ですが。

木札の解説によると、
代々賀茂の斎宮が居住されていた場所で
歌会なども盛んに行われていたとか。

以下はこのあたりの解説抜粋。

この地域は、平安遷都以前は賀茂の神領だったが、
平安時代に紫野斎院(跡地が七野社)が移され、
大宮通は雲林院を経て賀茂の社に通じる幹線道路として
貴族の往来で賑わった。
 
後期には、今宮御旅所や水火天満宮も見られ、
大宮寺之内辺に比叡山の東塔竹林院の里坊として
安居院が建立されて修行僧や僧兵で賑わい、
安居院流の唱導が一世を風靡した。(以下略)


実は、
ろくは散歩するとき
好き勝手に歩かせると
すぐにこのお社に来たがるのです。

いつもは、西の方から歩いてきて
この斎院跡に来るのですが、

今日はまず安居院に行って
そこから歩いてきたので
普段とは違う道を
反対の方角から歩いてました。

このあたりの道は知ってるはずやけど
ここは初めてやなぁ、と思って歩いてたら
とても意外な感じで
はらり、と斎院跡に出てしまいました。

知らなかったものが
つながったみたいな。

ろく、
よう知ってるんやねー。

この場所って
なんか土地のオーラみたいなものが
やっぱりあるんでしょか?

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京都本

2007-09-21 23:36:02 | 京都の暮らし
森見登美彦「太陽の塔」、一気に読了。

たぶん作者と重なることの多い
京大農学部5回生が主人公。

百万遍や、御影通りや、叡電(なぜか作中では叡山電鉄と必ず書いてある)、
あるいは四条河原町や鴨川や
まなみ号と名付けた自転車など
要するに
私達の日常の京都、
あるいは、学生にとっての京都の街を背景に
学生特有の理屈っぽい文体が妙な味をだしていて
読ませます。

私も高校大学の7年間
百万遍(京大)の近くに通っていたので(自転車で!)、
けっこう甘酸っぱい気持ちにもなるのですねー。

前回の日記のカレー屋さん「ビィヤント」もお近くです。

やたら植木鉢の多い路地裏の道とか
寒いのに大文字山に登って宴会やるとか
(授業中抜け出して大文字登って琵琶湖に出る、というのは
けっこう学生間では人気があるらしく、まじめなピアノ科の
私はやりませんでしたが、声楽科の何人かがやったのを後で
聞いて、秘かにうらやんだり…)

雪がほんのちょっと降る場面とか
叡電が、銀河鉄道みたいになるところとか

印象的なシーンがいくつも。

こういう本、書いてて楽しいやろなぁ。




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ビィヤントのカレー

2007-09-19 23:05:31 | おいしいもの
熊野神社(京都・東大路通り丸太町)近くの
カレー専門のお店。

カウンター10席程度のみの
おばちゃんがやってる小さな小さなお店。

今日はほんとに久しぶりに行ってきました。

私の学生時代(×十年前)、
つまり堀川高校音楽科ならびに
京都市立芸大音楽学部が
この地にあった頃からのお店で、
芸大時代に初めて食べました。

そのときは
いきなり「辛口」を食べて、
それまで
母の作ったお子様用的カレーしか知らなかった私は
食べたことない辛さに
カルチャーショックを受けました。

でも食べ慣れると
なんかまた食べたくなるんやわー。

芸大時代より長い間ご無沙汰していて、
2000年前後から
また通うようになりました。

というのは、
同じ地にある
京大医療技術短期大学部(医短)で
芸術学の講座を持つようになったから。

毎週講義のあと
ここのカレー+サラダを食べるのが
ほんとにたのしみでした。

×十年も、
おんなじ場所で
おんなじ店で
おんなじ味で
おんなじおばちゃんが
相変わらず、というのが
いいです。

おかしいのは、
何十年も「ビィヤント」とお店に書いてあるとおり
「ビィ」にアクセントを置いて
発音していたのですが、

実は
フランス語の「bientot」(まもなく)で
「ビヤン・トー」、
つまり、「トー」にアクセントがある、
という噂が。


ここでクイズ。

ここでは
お客さん全員でなく
あるカテゴリーの人にのみ
おしぼりが提供されます。

いったいどんな人に
おしぼりは配られるのでしょう?

……
今日は、カレーはもちろんですが
サラダが絶妙においしいこと
再確認。

キャベツの
繊細ともいえる細切りが中心で
シンプルなフレンチドレッシングで和えてあるだけのもの。

塩味がまろやかで
ちょっと冷えていて
ドレッシングの混ぜ具合が抜群なの。

カツカレー食べたかったけど
カロリーその他を考えて断念。


あー、やば。

だんだん
カツカレーが食べとなってきたぞー。
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男に忘られて

2007-09-16 23:50:44 | 京都の暮らし
先日の講演会「ショパンを知りたい」が
けっこう好評だったみたい(?)。

次回「ブラームスはお好き?」11月14日(水)の参加を
その場で係りの人が募集したところ、
半数以上の方(約40人!)の申し込みがあったとか。

私としては、
また今度はブラームスを勉強し直せるので
とてもうれしいです。

ブラームスの音楽に関して
今までももちろんさまざまな「気づき」がありますが、
また「発見」が必ずやあるでしょう。

「古典」というのは
それだからこそ残るのですよね。

ブラームスが優柔不断でメメしかったこと、
これが音楽にどう現れているか、

あるいは
いわゆるドイツ音楽とフランスのものと
なんであんなに違って
何がどう具体的に違うのか、とか。

……
今日は、京都の北、貴船に行ってきました。
叡電に乗って。

名残の鮎、というから
どんな痩せ細ったのが出てくるかと思ったら
子持ちの鮎。

川床でお食事したのですが、
川の水音にかこまれて
ときおり吹く涼しい風のなか
昼真っから飲むビールって
やっぱ贅沢でした。

貴船といえば和泉式部の歌

  もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる
  魂(たま)かとぞ見る

ですが、
これに詞書が付いたの(後拾遺和歌集)を
今まで読んだことありませんでした。

「男に忘られて侍りける頃、貴船に参りて……」云々。

この詞書、なんかめっちゃいいです。
何度も声だして読んでしまいましたー。
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神楽岡歌会9月

2007-09-15 00:57:14 | 短歌
歌会から帰ってきたところ。
出席者、今日は少なくて10人。
出詠歌は12首。

  眼は皮膚のなかに浮かべる島にして〈政治的死者〉語りはじめつ

というY川さんの歌、
私も票を入れましたが
6票で最高得点歌でした。

もちろんこれは安倍首相のことです。

あの辞任会見の時の眼。

「政治的死者」というのも
鋭い+冷静(非情)。

上句「眼は皮膚のなかに浮かべる島」というのも
なるほど、その通り。


歌会後の飲み会で盛り上がったのは、
その続きみたいな話。

T短歌会の「小池百合子」はK木さんだとか、
「田中真紀子」は××だとか……。

××として言わせていただくと、
それはちょっとあんまりじゃない?

ま、いいんだけどね。

それはあんまり、
と言ってくれた人も
もちろんおります。

T木くん、
ありがとう。

今度おごるからね。
ココロゆくまで飲みましょうね。




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「ショパンを知りたい」

2007-09-12 23:52:46 | ショパン
今日は講演会「ショパンを知りたい」本番。

椅子が65席しかない所、
満席のうえ
キャンセル待ちの方もいらっしゃった
とのこと。

今回の講演会を機会に
ショパンの生涯や関連書籍を読み
7歳のものから残されているその作品を
いろいろ弾いてみて、
とっても面白かった。

今日の講演会では
話すことがいっぱいあり過ぎて
予想通り
時間が足りなかったけれど

とにかく
ショパンの作品の
どこが素晴らしいか、ということを
具体的に
楽器で音を出しながら説明するのって
ほんとに楽しい。

私が今日講演会で言ったことは、
すごく大雑把に言って

ショパンの曲の魅力は
①メロディの装飾
②ハーモニーの陰影
のふたつ。

①の初期の例として
7歳の時の「ポロネーズト短調」、
②の初期の例として
14歳の時の「マズルカOp.7-4 変イ長調」。

①の晩年(といっても39歳で亡くなるのですが)の例として
「子守唄」
②の晩年の例として
「マズルカOp.68-4」。

あと、
ノクターンを比較する
という主旨で
ノクターンの創始者フィールドのものと
ショパンのものが
どこが違うか、
とか

シューマンの「謝肉祭」の中の
「ショパン」(ショパン風ノクターン)
を弾いて
どこが本物と違うか、とか。

もちろんその他に
社会的な背景(フランス革命とポーランドの独立)や
ジョルジュ・サンドなどの女性関係、
社交界のことなども。

次回は、11月14日(水)
「ブラームスはお好き?」。

ブラームスをまた勉強できるの、
たのしみです。
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ソロモンのショパン

2007-09-09 20:29:31 | ショパン
昨日8日土曜日は
たくさんの買物をしてしまいました。

三条、四条あたりで
CD、楽譜、本(以上3つはすべて複数です)、お財布、ツーピース、シャツブラウス、口紅2本…。

昨日の目玉は
なんといってもこれ↓。

十字屋さんで
「ショパン全作品集」CD30枚が
なんと7000円!!

30枚で7000円ということは、
CD一枚が200円あまり?!

中身もあんまり確かめず買ったのですが、
全作品のほかに
「歴史的演奏」というのが別に何枚も入っていて
フリードマン、プニョ、パハマン、ゴドウスキー、ソロモン、ローゼンタール、ブライロフスキー、コルトー、ラフマニノフ、ホロヴィッツ、リパッティ、その他たくさん。

今日はそのうち4、5人を聞いたのですが、
みんなめっちゃ面白い!

特に、ソロモン、すばらしい!!

ソロモンのベートーヴェンのソナタが素晴らしいと
杉本秀太郎先生が前からおっしゃってたの思い出しました。

このショパンも、
特に、「エチュード」Op.10-9ヘ短調、25-2ヘ短調、25-3ヘ長調の3曲を
組にして演奏しているのと、
それから「子守唄」には
ほんと、まいりました。

昔の録音なので
却って演奏の全体像がつかめるのですが、

ソロモンの音楽を見る視点が
ものすごく高いというか、遠いというか、
神様みたいな所から
音楽を一掴みで捕らえているような。

エチュードOp.10-9のハーモニーの色の推移。
この曲って、こういう曲だったのね。

25-2では、繊細極まりない右手のタッチ。

それをさらに極めたのが「子守唄」で、
もうこの世とは思われない右手の装飾が延々とつづき、

左手は、最初から最後までまったく同じ音型を
寄せては返すおだやかな海辺の波のように
何度もくりかえす。

右手のタッチと左手のタッチが
当たり前ですが
天と地ほど違う。

左手が地上の海辺の波なら

右手は
空中の、
風に乗って運ばれてくるかぐわしい匂い、
光にきらめくこまかな粒子の雨、
次々と形を変える雲、
天上から降ってくる恩寵のような金色の光。

要するにこの曲は
ハーモニーでいえば
Ⅰ(主和音)とⅤ(属和音)の交代のみでできている
タグイ稀な単純な曲なのです。

元来は、
半音階的なハーモニー推移の陰影が身上のショパン。

それが、この曲では
これ以上考えられない単純なハーモニーを敢えて繰り返し
それで1曲を仕上げてしまうのだから
これはすごい。

ショパンの好みの陰影は、
この曲に限ってはハーモニーでなく、
右手のタッチのみで付ける。

その曲のすごさを本当に伝える演奏、
というのが、この
ソロモンの演奏だと思います。
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文藝春秋の八首

2007-09-07 23:59:34 | 悼・河合隼雄先生
8月10日発売だった「文藝春秋」9月号に
八首「笛をかかげて―悼・河合隼雄さん」を
発表したところ、
見ず知らずの方や
日頃は疎遠になっている知人などから
メールや手紙などをいただき、
その反応にちょっとびっくり。

原稿依頼はずいぶん前に受けていたのですが、
締切3日前に河合先生が亡くなられ
急遽その八首となりました。

また、その中の一首を取り上げ
吉川宏志さんが
「短歌現代」9月号に
「身を合わせる〈読み〉」を
書かれました。

河合先生が亡くなられた翌日に
歌会が開かれたのですが
そこに出した一首についての文章です。

いずれも
私にとっては
河合先生とのご縁を感じるものでした。
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夢をみる犬

2007-09-05 23:33:46 | 
私の黒犬、ろく。

家の中で飼っているので
ほぼ一日中生活をともにしていますが
ときどき
どう考えても夢をみている
としか思えない時があります。

ろくは
夜に限らずやたら眠るのですが
さっきも眠りながら

クヒン、クヒン、クヒン、クヒン……

と、悲鳴ともなんと言いようのない
けっこう切羽詰った声をあげて
悶えるのです。

あせりまくる夢みてるんやなぁ……。

私は夢ってあんまり覚えてない方ですが
見るときは
けっこういつもあせってることが多いような。

本番直前なのに暗譜できてないとか
練習全然できてないとか。

ろくの場合は何でしょう?

でもあの声は、
覚醒してるときには出したことない声なんですよね~。

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早熟の人ショパン

2007-09-03 23:42:05 | ショパン
ショパン全作品の中で、
最もよくできている曲と
長いあいだ私が秘かに思っていたのは
実は24曲のエチュード(Op.10、Op.25)ですが、
「ショパン」の著者遠山一行さんも
同じ考えだそうです。

講演会「ショパンを知りたい」を前に
今回あらためて感じたのは、
ショパンのその異常な早熟性。

エチュードOp.10は
なんと、20歳をはさむ2、3年の間に
完成されているのです。

7歳ころのポロネーズが残っていて
それは、もちろん並みのデキではないのですが
まぁわからんでもない、という感じ
(パッセージは華やかだけどハーモニーが割りに単純)。

ところが、
14歳の「マズルカ変イ長調」(Op.7-4)は
びっくり。

ハーモニーの微妙な揺れ。
光と影の交錯。

14歳といえば中学生ですが、
これはすごい。

そしてその数年後に
あのエチュードを書くのだから。

ショパンのエチュードを弾くのは
難しいというえば難しいのだけど、

楽器を弾くコツというか
手の正しい形や使い方、
あるいは
手と楽器との関係をうまく体得できれば
つまり、
楽器を鳴らすコツをつかめば

弾いていて
手が気持ちいい、
というふうになるんです。

ピアノ弾くことが
温泉に入ってるというか
リハビリになるというか。

私自身は
その感覚をつかめるようになったのは
けっこう最近(10年近く前?)ですが、

その弾くコツ+ピアノという楽器独自の音の響きを
20歳前の若者が
誰に教えられるでもなく

自分の耳と手をたよりに
発見していたとは!!

ベートーヴェンはもちろん
モーツァルトも
作曲において、その生涯の最後に
独特の高い境地に到達しますが

ショパンは
境地というより
音自体の響きでそれを
20歳で果たしてしまった。

これはどういうことなのでしょう。
古典派とロマン派の違い?

確かに、
シューマンも
初期の作品が魅力的ですが。

いや、シューベルトを見よ。
ブラームスを見よ。

もう少しいろいろと
考えてみることにします。

それにしても
Op.7-4のマズルカは
ほんとに小さい曲ですが、
音が少なくて
ショパンの天才を説明するのに
ちょうど良いようなので

今度の講演会で
弾きながら解説、
というのをこれでやろうかしら
と思ってます。
コメント (1)
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