minga日記

minga、東京ミュージックシーンで活動する女サックス吹きの日記

ジレンマと闘いながら

2008年11月06日 | 家族の日常
考えてみれば、国技館はまだ一度も足を踏み入れた事がなかった。大江戸線の両国駅も初めて。この歳でまだまだ初めての体験が一杯だな。しかしこのおかしな銅像は一体何?知らない事もいっぱい・・・(汗)。



ダライ・ラマ法王は一言もチベットの現状についても中国について非難するようなことも話さなかった。最初から最後まで優しい笑顔で茶目っ気たっぷりな瞳をくるくるさせながら、あくびをし、頭をかき、鼻をこする。どこにでもいそうな優しいおじさんだった(失礼)。つらい事や苦しい事を経験してきている人ほど、笑顔が美しい。先日観た「ウォー・ダンス」の子供たちの笑顔と重なった・・・。

「最初にお断りしておきますが、私の話で奇跡が起こったり、癒される・・・などと期待されても困ります。私自身、ミステリアスな現象に対してはいつも懐疑心を持っています。」そんな挨拶から始まった。

それにしても、英語を聴き取る能力のなさにほとほとがっかり。法王は解り易くゆっくりと話しているのだろうけど、発音も単語も難しくってさっぱり。長い話のあとに、同じ長さで通訳が語るというのをじっと聴いていなくてはいけない。あああ、時間がもったいないよな~。同時通訳のイヤホンでもあればいいのに。そんなジレンマと闘いつつ一言一言に耳を傾ける。集中力がそんなに持たない。言葉の壁は大きいとつくづく感じた・・・(今更?とほほ)。

どんな人たちが国技館に集まって来たんだろう?とキョロキョロと周りを見回すと仏教関係者、チベット人、インド人、文化人たち・・・年配の人たちが圧倒的に多かった。(アリーナ席だからかな?)講演の始まる前から感無量なのか、涙を浮かべている人もいる。

『法王にお会いするのだから、着飾って来ようと思ったのですが、玄関で鏡を見たとたん、清らかな法王の御前では着飾る事に何の意味ももたないな、って思い直してアクセサリーとかはずして来ました。』隣に同席した女性の言葉に、ユニクロバーゲンで買ったばかりの黒セーターを着ていた私は思い切りうなずいた。オーネットコールマンのコンサートに行った時のあの震えるような感動と同じ種類のものだろうか。

質疑応答の時間になり、一般の人たちが質問するために列を作った。柔道の石井彗選手が列の2番目に並んでいたが、体が大きいので一際目立っていた。
「自分は今、人生の岐路に立っています。それに対していろいろな人たちが自分にアドバイスをくれるのですが、自分で判断すべきなのか、長い物に巻かれろで人の意見に従ったほうが良いのか・・・法王のご意見を伺いたいです。」
「沢山のアドバイスを参考にするのはとても大事ですが、最終的に決めるのはご自分です。」

あたり前だけど、法王にそう言ってもらえれば「正しい道」に突き進めそうだね。石井、がんばれ~!と会場から拍手と応援の声が沸き上がった。

「<怒りや憎しみ>の感情を無理に抑えるのではなく、それと反対の感情(喜び、愛など)を育む努力をしなさい。それ以外に怒りや憎しみを抑える事はできないのです。壁のようなものを心に作ってしまわないように、常にいろいろな角度から物事を観察するようにしましょう。最近、私(法王)は胆石の手術をしました。2,30分ですむはずだった手術が5時間もかかってしまったのに、回復はもの凄く早く、医師たちが驚きました。病気は平和な心を持っていれば、治りがとても早いのです。ポジティブに考えて生きていけば病気にも負けない強い体と心ができていきます。」

メモをとった訳ではないので正確ではないが、以上のような感じで2時間半の講演は終了。今日のチケットの売り上げが約500万円。この売り上げは全てダライラマ法王事務局に寄付される、との報告まであった。

晴れやかな気分で外に出ると、国技館の屋根にはチベットの国旗と日本の国旗がひらひらと翻っていた。こうしてひとりひとり、法王の言葉を様々な受け止め方をしながら帰路についたのであります。


さて、明日は国立No Trunksで久しぶりに沖至(tp)さんとトリオでフリーセッションします。フランスから帰国したばかりの孤高のトランぺッターの音を堪能しにいらしてください。