実務家弁護士の法解釈のギモン

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理解不能な欠損填補責任(5)

2018-08-08 10:17:05 | 会社法
 しかし、もっとよく考えてみると、この括弧書きの考えは、理論的におかしいのではないかという気がしてならない。
 なぜなら、たとえ4月1日から6月末日頃までの前期の計算書類が確定するまでの間に、前々期の確定した計算書類を根拠に分配可能額を計算して配当等としたとしても、既に前期は終了し当期に突入した時期に配当をしている以上、その配当が計算書類に反映されるのは、当期末の計算書類においてであって、前期の計算書類にこの配当等が反映されることはないからである。
 そのため、仮に前期の計算書類上、欠損が生じたとしても、当期の4月1日以降前期の計算書類を確定させるまでに配当等をしようがしまいが、前期の欠損の額に変化を生じさせず、配当が原因で欠損を生じさせたとはいえないのである。
 したがって、たとえ前期の計算書類が事後に確定されるとしても、前期の欠損により当期の配当等による欠損填補責任を負わせるのは、論理的におかしいとしか思えないのである。

 最近、分厚い会社法の教科書を読んで、ようやく第一括弧書きの意味が分かったのだが、一方で、以上のような疑問が生じたのである。その教科書には、私の疑問に対する答えは何も書いてない。いったい、どういうことなのだろう。何かを知っている人がいれば、是非教えてほしい。

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