実務家弁護士の法解釈のギモン

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和解成立による訴訟終了宣言の無効主張と不利益変更(6)

2016-03-30 10:09:40 | 民事訴訟法
 そこで、第1の問題点の解決はとりあえず保留することにして、私が思う第2の問題点がある。それは、既に指摘した、訴え却下判決に対する被告のみによる控訴と控訴審での一部認容判決との類似性、ただし、この類似性を問題設定することそのものに問題がありそうだと述べた点に絡む。

 何を言いたいかというと、そもそも、訴えを却下した一審判決に対する控訴審において、原判決を取り消す場合は、原則として事件を第一審に差し戻さなければならないのである。それを規定したのが民事訴訟法307条である。必要的差し戻しとした理由は、訴えを却下した一審判決は、本案について十分な審理がなされていない可能性があるから、当事者の審級の利益を確保するために必要的差し戻し事件としたのである。
 そして、不利益変更の問題とは直接の関係はないのだが、和解成立による訴訟終了宣言判決も訴訟判決だというのであれば、本案について十分な審理がされていない可能性がある以上、控訴審が和解無効と判断して一審判決を取り消すのであれば、この必要的差し戻しの規定を類推して第一審に差し戻す必要があったというべきではないのだろうか。
 この点が、今回の最高裁判例についての私の最大の疑問点なのである。

 もし一審に差し戻すのであれば、一審において本案判決をすればよいのであり、そこでは不利益変更など全く問題とならないから、堂々と一部認容判決ができる。そうなれば、そもそも第1の問題点は、問題とはならなくなるのである。