実務家弁護士の法解釈のギモン

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和解成立による訴訟終了宣言の無効主張と不利益変更(4)

2016-03-16 10:03:28 | 民事訴訟法
 少し事案を変えて、例えば、請求の認諾の無効を争って被告が期日指定の申立があったが、結局は請求の認諾を有効だとして、請求認諾による訴訟終了宣言判決をした一審に対して被告が控訴した事案で考えた場合はどうか。状況は、和解か認諾かの違いだけで、判例の場合とよく似ているようだが、はたしてこの場合、控訴審において請求の認諾は無効として一部認容の本案判決をすることは、被告に不利益だろうか。
 仮に、今回の判例と同じ理屈を持ち出せば、請求認諾による訴訟終了宣言判決は訴訟判決でありその既判力は訴訟が終了したことだけを既判力を持って確定するに過ぎないので、一部認容判決は請求認諾による訴訟終了宣言判決よりも被告に不利益である。だから控訴審で一部認容の本案判決をすることは不利益変更禁止に抵触する、ということになる。

 しかし、以上の発想は、直感的におかしく思えることは明らかだと思う。なぜなら、請求認諾による訴訟終了が宣言されてしまえば、請求認諾の効力が残ってしまうが、その効力よりも一部認容判決のほうが被告の有利であることは明らかだからである。

 仮に、以上のように考えて請求認諾の場合は不利益変更禁止に抵触するという考え方が正しいとして、請求認諾は和解とは異なるから今回の判例と同様に考えることはできず、判例は判例、請求認諾の場合はそれとは別に考えるということでいいのだ、と言いきれるのだろうか。
 論理構造は同じような気がするのだが……。