Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

The Group

2006-06-10 | Soft Rock
■The Group featuring Vangie Carmichael / The Warm & Groovy Sound■

 正式なタイトルで表記すると、「The Warm & Groovy Sound by The Group featuring Vangie Carmichael」となるこの作品。 そのおしゃれなセンスから、この作品が 1960 年代に発表されたとはとても思えません。 今から 40 年近く前に、featuring という表記が堂々と使用されているのには驚きますね。 ジャケットのセンスも抜群です。
 このグループは、正式名称は「The Group」としたほうがいいと思いますので、ブログタイトルのほうは、単に「The Group」だけにしておきました。 これだけでは、正体不明ですよね。 でも「The Band」もいるわけですしね。 あ、関係ないか。
 で、どうして「The Group」だけにしたかというと、全曲に渡って Vangie Carmichael が featuring されているわけではないからなのです。 半分くらいの曲が男性ボーカル、残りの半分くらいが女性もしくは混声ということで、この「The Group」は固定したメンバーがいたものではなく、アレンジャーの Clark Gassman 主導によるプロジェクト的な集まりだったようです。

A面は Jimmy Webb 作曲の「The Worst That Could Happen」から始まります。 この曲は「Brooklyn Bridge」のバージョンが有名なようですが、僕は「Fifth Dimension」バージョンしか聴いたことがありません。 ゆったりしたメロウ・バラードなのですが、ここでは男性コーラスのリードに女性コーラスがかぶってくるアレンジで、「Association」に近いサウンドとなっています。 つづくは Joni Mitchell の「Both Side Now」。 邦題「青春の光と影」としても有名なこの曲、女性ボーカルがリードをとる予想通りの展開ですが、後半の展開とコーラスワークには脱帽。 素晴らしいカバーとなっています。 女性ボーカルによる「If You Don’t Love Me」もソフトロックのエッセンスがつまりまくった名曲。 男性ボーカルによるアップな「For Once In My Life」はハーモニカ・ソロなどが入り、ソフトロック色は薄めです。 つづく「If’s A Mighty Big Word」は、これぞソフトロックの王道というべきスローナンバー。 メインは男性ボーカルですが、中盤から女性コーラスやビブラフォンが薄く彩りを添えてきます。 このビブラフォンは、おそらく名手 Victor Feldman によるものでしょう。 A 面ラストの「Son Of Preacher Man」は、女性ボーカルがメインですが、アップな曲調とホーンセクションのせいでブラスロック的なサウンドとなっています。
 B面に入ると、このアルバムのハイライトともいえる「Hey Jude」で幕を開けます。 アルバムにも「contains the hit single」とステッカーが貼られているとおり、この曲が押し曲だったのでしょう。 おそらく、シングルカットでもされていたのでしょう。 さて、この超名曲のカバーですが、この声がきっと Vangie Carmichael だと思われる女性のリードに見事なアレンジが施されて、まさにため息の出るような完成度となっています。 つづく、「I Met Her In Church」は、Dan Penn と Spooner Oldham による共作。 初めて聴きましたが、ハンドクラッピングや「ハレルヤ」の繰り返しなど、男性ボーカルによるゴスペル調の曲です。 Alex Chilton が在籍した「The Box Tops」というグループがオリジナルのようです。 「Love Child」は、テンション高めの女性ボーカルの曲。 おおげさなイントロから一転しメロウに流れる「Falling In Love」、Fifth Dimensionに近いサウンドの「Shake Loose」でドラムスを叩いているのは、Hal Braine かも知れません。 ラストの「Don’t Mention My Name」は、やや憂いを帯びたミディアム・ナンバー。 大げさなティンパニの音色がほどよい余韻を残してくれます。

 さて、そんな感じでアルバムを振り返ってみましたが、このアルバムはソフトロックとしての完成度が高い名盤ですね。 是非とも CD 化してほしいものです。 できれば、このジャケットのデザインや字体などを忠実に再現した紙ジャケで。
 最後にこのアルバムの鍵を握る重要人物、Clark Gassman について調べてみました。彼は、Lee Hazelwood や Nancy Sinatra などのプロデューサーとして活躍し、その後はクリスチャン音楽(CCM)の世界に入っていったようです。 彼のアレンジ才能は、かなりのものだと思いますので、もっと知名度があがってもよさそうなものなのですが、本人がスピリチャルな方向に行ってしまったために、ポピュラー作品を多く残さないままになってしまいました。 もし、見知らぬレコードに、Clark Gassman のクレジットを見つけたら、要注意ですね。



■The Group featuring Vangie Carmichael / The Warm & Groovy Sound■

Side-1
The Worst That Could Happen
Both Side Now
If You Don’t Love Me
For Once In My Life
If’s A Mighty Big Word
Son Of Preacher Man

Side-2
Hey Jude
I Met Her In Church
Love Child
Falling In Love
Shake Loose
Don’t Mention My Name

Produced by Joseph Walter for Pomegrante
Arranged and Conducted by Clark Gassman

We Wish To Express Our Deepest Appreciation To The Following :

Clark Gassman
Victor Feldman
John Guerin
Hal Braine
Sid Sharp
Vangie Carmichael
以下省略

Pete Records S1108