Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Andy Pratt

2006-06-04 | SSW
■Andy Pratt / Records Are Like Life■

 レコードは人生のようなもの。
 いいタイトルですね。 このアルバムは、1970 年代、ピアノ系 SSW として風変わりな曲調やアレンジで異彩を放っていた Andy Pratt のファーストです。 今のところ、オフィシャルに CD 化されているオリジナルアルバムは、セカンドの「Andy Pratt」のみのようですが、これは国内盤も出ていますので興味のある方はどうぞ。

 セカンドアルバムのほうは、「Bee Gees と Yes が合体したようなサウンド」と形容されたこともあるほどの作品ですが、個人的にはあまり好きではありません。 代表曲の Avenging Annie もちょっと忙しすぎて疲れてしまいます。 セカンド以降に残した「Resolutions」、「Shiver In The Night」、「Motives」のなかでは、「Motives」が最も好きな作品なのですが、このファーストがもしかして最高傑作なのではないかと思ったりもします。

 話は本題のファーストに戻ります。 このアルバムを聴くたびに思うのですが、このアルバムはとても 1970 年に発表されたとは思えないほど、時代性を感じさません。 アレンジやメロディーから感じ取ることのできる卓越したインテリジェンスには、異才とか奇才という言葉はぴったりです。

 アルバム「Resolutions」のジャケットでピアノを弾いていることもあり、Andy Pratt はピアノしか演奏しないものと思っていましたが、1曲目の「Wet Daddy」はアコースティックギターとドラムスが独特のグルーヴ感を創出するシンプルでクールな楽曲です。 誰かから「実験的な SSW による最近の作品ですよ」と言われたら信じてしまうでしょう。続く「Oliver」は、ピアノやオルガンによるジャズっぽいアレンジの曲です。 アヴァングアルドな SSW、プログレ風 SSW と評される浮遊感まさに固有のものです。 アルバムのなかで最もチャッチーな作品だと思える「Shiny Susie」は名曲です。 アップのメロからスローなサビに転換するあたりは何度聴いてもいいですね。 奥のほうで遠慮がちに聴こえるピアノのセンスも最高です。 「Little Boy Hound Dog」は、ギターの弾き語りによる小曲ですが、曲が始まったかと思ったら途中で急にフェードアウト。 こうした楽曲の破壊行為みたいなところも潔いですね。
 B面は男女の会話風の「Bella Bella」、つかみどころのない偏屈な曲「Mindy」、浮遊感のあるギター系のサウンドにストリングスが乗ってくる後半が印象的な「Low Tide Island」と続きます。 そして、ラストの「Records + Records (Records Are Like Life)」ですが、予想とは裏腹にアップな曲調に驚きます。 レコードを買いに行こう、という歌詞が繰り返され、Records Are Like Life というメッセージがあまり哲学的なものではないことが判明してしまいます。 そして、リフレインの果てにはノイジーなギターのインプロヴィゼイションが短めに挿入されて、ジ・エンド。 アルバムの余韻をあえて払拭するかのような効果をもたらしています。

 しかし、このアルバムに閉じ込められた独特の世界観をどう表現すればいいのでしょう。ふと、思うのが、Andy Pratt がこのアルバムだけしか残さなかったら、どのような評価を得たのだろうかということです。 
 さて、そんなAndy Pratt の近況を調べようとして見つけたのがこのページです。

 ここには、今まで知らなかった彼のアルバムのダウンロード販売や CD 通販などがありました。 この「Records Are Like Life」もどうやら CD で買えるようです。 また、驚いたのが 2003 年にニューヨークで行われたライブの映像です。 かなり老いたものの、Andy Pratt がキーボードを弾きながら熱唱している動画をみることができました。 インターネットの恩恵を感じざるを得ませんね。



■Andy Pratt / Records Are Like Life■

Side-1
Wet Daddy
Oliver
Shiny Susie
Little Boy Hound Dog

Side-2
Bella Bella
Mindy
Low Tide Island
Records + Records (Records Are Like Life)

Produced by Andy Pratt
All Songs by Andy Pratt

Rick Shlosser : drums and percussion

Bill Elliott : bass and vocal on ‘Mindy’
Steve Crump : guitar on ‘Bella Bella’
Bill Elliott : strings arrangement on ‘Low Tide Island’

Polydor 24-4015