Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

The Ship

2006-06-18 | SSW
■The Ship / Tornado■

 The Ship のセカンドの存在を知ったのは、昨日のことです。 久しぶりに海外から通販で購入したアルバムが船便(コスト削減です)で忘れたころに届いたのですが、そのなかに埋もれていました。 このアルバムを選んだのは実は The Ship 名義というよりも、品番 SNR-1001 に惹かれたからなのです。 僕は、1001 番オタクなので病気ともいえる衝動買いなのですが、これが昨日紹介した The Ship のセカンドだとは思ってもみませんでした。
 このアルバムは、1976年、イリノイ州で録音され、ナッシュビルでマスタリングされた作品。 Saturday Night Records というのも彼らの自主制作レーベルのようです。
 前作からはメンバーが 3 人交代し残っているのは、Mark Hamby と Steve Reinwandの2人だけです。 ここで不安が高まりました。 というのも「A Contemporary Folk Music Journey」の作詞・作曲は、脱退してしまった Steve Melshenker と Steve Cowan によるものだったのです。 メインのソングライターが不在でサウンドはどのように変化したのでしょうか?

 新生 The Ship は、新加入の James Barton と Mark Hamby の2人がほぼ半分ずつの曲を書いています。 まずは、Barton の「Midnight Madness」で幕開けしますが、この曲はファーストにはなかった骨太のアメリカンロックでした。 途中でMark Hamby の特色のある clavinet ソロが出てきたりと聴きどころも多い、ダサカッコイイ曲です。 ミネソタの夜明け「Minnesota Dawn」はミディアムナンバー。 ピアノのイントロで始まる「Gwin」は、女性の名前のようで、その彼女に捧げられたバラードです。 なかなかの佳作なのですが、歌詞がちょっと陳腐な感じです。 軽めのポップソング「Hold On To Love」はリフレインが多いからかかもしれませんが、アルバムのなかでも最もキャッチーな出来。 「Lost Weekend Farewell」は、ペダルスティールも入ってくる雄大なカントリー・バラードです。
 B面に入ると、ややルーズなナンバー「Three Days」に続き、地味な印象の「Balboa」へと流れます。 サビで転調し、やや悲壮感のあるボーカルが印象的です。 つづく 2 曲は、予想以上のアップ・チューン。 ライブでは盛り上がりそうな「Tornado」、フィドルやバンジョーの掛け合いが楽しい「Mile After Mile」と続くあたりは、「A Contemporary Folk Music Journey」の The Ship と同じバンドとは思えません。 一転してピアノを基調としたバラード「Over My Love」は、アルバムのハイライト。 同時代の日本のニューミュージックにも通じるメロディが聴かせてくれます。 ラストの「Your Backyard」は、サザンロック調の曲。 中盤でメロウに展開しコーラスとクラリネットのソロが入るところなど、かなり工夫した展開です。

 このアルバムを初めて聴きましたが、1972 年の「A Contemporary Folk Music Journey」とはメンバーもソングライターも異なるために、サウンドも大きく変容していました。 どちらが好みになるかは微妙ですが、一貫性ではファースト、バラエティさではセカンドという対比にはなります。 もちろん、そんな単純な言葉での比較は意味がありませんが、時代的な意味合いとしては、やはりファーストのほうが意義深い作品かもしれません。 この「Tornado」のサウンドは、どこにでもありそうなサウンドですし、ファーストのようなコーラスワークもあまり聴かれなくなっています。 
 1976 年春に実際にトルネードの被害にあった現場で撮影されたというアルバム・ジャケットに写る 5 人の男たち。 彼らの表情とたたずまいからは、B 級作品ならではの哀愁を感じてしまいます。



■The Ship / Tornado■

Side-1
Midnight Madness *
Minnesota Dawn
Gwin *
Hold On To Love *
Lost Weekend Farewell

Side-2
Three Days *
Balboa
Tornado
Mile After Mile
Over My Love *
Your Backyard

All Songs written by James Barton
Except * written by Mark Hamby

Produced by The Ship

The Ship are
James Barton : 6&12 strings guitars , lead and harmony vocals
Rick Frank : bass, harmony vocals
Mark Hamby : piano, clavinet , flute , mandlin , string synthesizer , lead and harmony vocals
Jeff James : drums , percussion
Steve Reinwand : lead guitar , pedal steel , banjo , string synthesizer ,string arrangements , percussion , harmony vocals

Guest Appearances
Ron Dewar : clarinet solo on ‘Your Bancyard’
Randy Sabien : fiddle on ‘Mile After Mile’ , violin and cell on ‘Lost Weekend Farewell’

Recorded at Sunday Studios , Urbana, Ill.
Mixed by The Ship
Mastered an Nashville Records Productions , Nashville , Tenn.

Saturday Night Records SNR-1001


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