みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1458「不死身」

2024-05-18 18:07:43 | ブログ短編

 この男、不死身(ふじみ)の身体(からだ)を持っていた。見た目は若造(わかぞう)だが、もう千年以上(いじょう)生きている。彼は転々(てんてん)としながら暮(く)らしていた。歳(とし)を取らないので同じ場所(ばしょ)に落ち着いてしまうと、まずいことになるからだ。ここ数年は都会(とかい)にいて占(うらな)いの仕事(しごと)をしていた。人間(にんげん)の悩(なや)みは何百年たっても同じみたいだ。
 そんな彼の前に一人の若(わか)い女が現れた。彼女は人を捜(さが)していると…。彼は、人捜しなら他(ほか)をあたった方がいいと断(ことわ)った。しかし彼女はどうしても引き下がらない。彼女は、
「これは、あたしの感(かん)なんです。あなたなら見つけられるはずです」
 彼は困(こま)った顔で女を見つめた。ふと、この顔…どこかで見たような…。彼女は続(つづ)けた。
「名前(なまえ)は真之助(しんのすけ)といいます。歳は、あなたぐらいかなぁ。それと…顔は分からないんです」
 彼は驚(おどろ)いた。真之助は昔(むかし)の自分(じぶん)の名(な)だ。この女は…何者(なにもの)なんだ? 彼は探(さぐ)るように、
「そんなざっくりでは捜しようがないですね。だから占いで…ということですか?」
「まぁ…。その人は京都(きょうと)に住(す)んでいたんです。もうずいぶん前に…。これは先祖(せんぞ)から託(たく)されたことなんです。祖母(そぼ)も母(はは)もずっと捜していました。今度は、私の番(ばん)なんです」
 彼ははっきりと思い出した。平安(へいあん)の頃(ころ)、京の都(みやこ)で恋(こい)に落(お)ちた女に似(に)ている。
 彼女は続けた。「私、その人と添(そ)いとげて…赤ちゃんを授(さず)からないといけないんです」
「バカなことを…。そいつはとっくに死(し)んでる。そんなことは止(や)めるべきだ」
「いやです。私の身体がそれを求(もと)めているんです。これは我(わ)が一族(いちぞく)の使命(しめい)なんです」
<つぶやき>もし先祖からこんなことを託されたら…。どうしたらいいんだ? 困るよね。
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