徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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ドイツ・グントレミンゲン原発のシステム、コンピューターワーム2種に感染

2016年04月28日 | 社会

ドイツ・バイエルン州にあるグントレミンゲン原発のブロックBで使用されている燃料棒制御システムに属するコンピューターが2種類のコンピューターワームに感染していることが2016年4月25日、システム点検の際に発覚しました。燃料棒制御システムは例えば使用済み燃料棒を炉心から取り出し、冷却プールへ運搬したりしますが、感染したコンピュータは燃料棒制御に影響を与えるものではなく、制御記録を編集・ビジュアル化するのためのもののようです。このシステムは2008年に追加装備されたとのことです。ブロックBは4月7日に定期点検のため、運転停止しました。

発見されたワームはConficker 及びW32.Ramnitの2種類。Confickerは2008年から2009年初頭まで世界中に広がったものですが、現在のコンピュータシステムには何の脅威でもなく、ごく普通のアンチウィルスプログラムで撃退できる類のものです。W32.Ramnitのコマンドサーバーは2015年にユーロポールによって無害化されました。どちらのワームも有名なものであり、本来個人用コンピュータを目標としているため、事業者であるRWEは原発を目標とした攻撃ではない、と見ています。また原発のシステムはインターネットに接続していないため、ネット接続することで効力を発揮するコンピューターワームは危険とならないとのこと。またオフィスITと制御システムは相互に影響することはあり得ないし、本当に原子炉保護のセキュリティーに重要な機能はハードで繋がっており、ITを必要としないとRWEは明言しています。

既述のコンピュータの他に計18個のデータキャリア(主にUSBスティック)が同じワームに感染していたそうです。

RWEは今回の発見後、原因究明と共にマルウェア防御措置を強化するそうです。この件は連邦情報技術局(BSI)にも報告され、同局は捜査を開始しました。当局は2015年度の報告書で産業設備へのサイバー攻撃の警告を発したばかり。譬え重大なシステムがインターネットから隔離されていたとしても、USBスティックや通常のオフィスITを通じて生産システムにまでマルウェアが阻害されることなく侵入してしまうことが比較的頻繁にあるとの指摘です。

 

グントレミンゲン原発はドイツ最後の沸騰水型軽水炉で、原子炉3基、ブロックA、B、Cからなり、うち最も古いブロックAは既に1977年1月に稼働停止。1985年に解体作業が開始され、現在ほぼ完了しています。この解体で約1万トンの放射性廃棄物が出ました。解体費用は2.3億ユーロで、うち500万ユーロはEUの助成金で賄われたとのこと。

ブロックBとCは共に1984年に運転開始しましたが、ブロックBは2017年末、Cは2021年末に稼働終了予定です。コンピューターワーム発見に先立つ週末には反原発派約750人が残り2基の早急な廃炉を求めてデモしました。

緑の党議員団長マルティナ・ヴィルトは、「グントレミンゲン原発のブロックB、Cは沸騰水型軽水炉としてドイツ最古の原子炉に属します。私たち緑の党ばかりでなく、専門家たちもこの2基の原子炉が非常に古く、老朽化しており、安全基準を完全には満たしていない、と批判しています。グントレミンゲン原発では去年だけで5件の報告義務のある事象がありました。今またブロックBでコンピューターウィルスが見つかりました。グントレミンゲン原発ブロックB・Cはドイツにおいて最大とまではいかないまでも大きなリスクとなっています。この原子炉は今こそすぐに稼働停止すべきです」と発言しています。

マルティナ・ヴィルト(マルティナ・ヴィルト、バイエルン州緑の党議員団長)

バイエルン州議会緑の党の調査で、グントレミンゲン原発がバイエルン州の電力供給及び送電網安定性にとって現在すでに無用の長物となっていることを証明しました。風力及び太陽光による安全なエネルギー生産は期待よりも早く記録的レベルに達しました。チューリンゲンの電力ブリッジが今年の夏に運転開始すれば更なる供給安定性が得られるため、「グントレミンゲン原発の2021年までの稼働期間は危険なばかりでなく、電力市場的観点からも根本的な間違い」とヴィルト氏は指摘しています。

 

参考記事:

独紙フランクフルター・アルゲマイネ、2016.04.25、「ドイツの原発でコンピュータウイルス発見
バイエルン放送、2016.04.26、「グントレミンゲン原発にマルウェア:専門家はデータセキュリティーに疑問」 
独誌ハイゼ、2016.04.26(最終アップデート:2016.04.27)、「グントレミンゲン原発:大昔のマルウェアに感染」 
独紙ツァイト・オンライン、2016.04.26、「バイエルンの原発にコンピューターウィルス発見
ロイター通信(アメリカ版)、2016.04.27、「ドイツの原発、コンピューターウイルスに感染、事業者談」 
独紙アウグスブルガー・アルゲマイネ、2016.04.28、「誰がグントレミンゲン原発等の解体のために払うのか?」 
独紙アウグスブルク新聞、2016.04.28、「緑の党はグントレミンゲン原発の早急な停止を要求」