徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『After the Funeral(葬儀を終えて)』(HarperCollins)

2018年08月08日 | 書評ー小説:作者カ行

『After the Funeral(葬儀を終えて)』は1955年の作品。名探偵ポワローシリーズの31作目です。私の読んだHarperCollinsの電子書籍版には、ポワローシリーズを書き継ぐ許可を得たSophie Hanna(ソフィー・ハナ)の書評と彼女の『モノグラム殺人事件』(2014)も収録されています(まだ読んでませんが)。

『After the Funeral(葬儀を終えて)』は、Abernethie(アバネシー)家の当主リチャードの葬儀から始まりますが、第1章は一族の紹介的な章なので読むのに少々辟易します。巻頭に家系図があるので、それをプリントアウトして誰が誰かを確認しながら読むとかなり手間がかかります。葬儀が終わって一族が一堂に会して遺言書が公開された際に、リチャードの末娘Cora Lansquenet(コーラ・ランスケネ)が「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」と唐突に発言し、みんなからにらまれて発言を引っ込めます。そしてその翌日、彼女は自宅のコッテージの寝室で斧で殺されてしまいます。彼女の死により、リチャードの死にも疑問を抱いたリチャードの旧友にして遺言執行者の弁護士Entwhistle(エントウィッスル)が、私立探偵エルキュール・ポワロに事件解明の依頼をします。依頼するまではエントウィッスルが独自捜査をするので、ポワローが登場するのは第6章になってからです。

さて、二人の死は関係あるのか偶然なのか。コーラの遺言により姪のSusan Banks(スーザン・バンクス)が家具や絵画などを相続することになり、コーラのコッテージを訪ねた際に、コーラの同居人兼家政婦Gilchrist(ギルクリスト)に正体不明のウェディングケーキが贈られ、彼女はそれを食べてヒ素中毒になり、夜中に病院に運ばれます。ギルクリストは死にはしませんでしたが、「連続殺人?」を思わせるような事件です。

リチャードの姪たちスーザンとローザムントそして彼女の夫たちも皆なぜかエントウィッスルが「コーラが殺された日にどこにいたか?」という質問に嘘の答えしか言ってなかったことが徐々に明らかになり、彼らが多かれ少なかれお金を必要としていたことから、「遺産配分を増やすための殺人?」が疑われる運びとなります。

ポワロは身分を偽り、屋敷売却前の形見分けと称して一族をリチャードの屋敷に集めます。一種の罠ですが、意外なのが引っかかります。

真犯人は結局全然違うところにいたわけですが、登場人物がみんな疑わしい感じなのが面白いです。


書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『And Then There Were None(そして誰もいなくなった)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Endless Night(終わりなき夜に生まれつく)』(HarperCollins)


ポワロシリーズ

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Murder on the Orient Express(オリエント急行殺人事件)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『The ABC Murders(ABC殺人事件)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Murder in Mesopotamia(メソポタミアの殺人)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『After the Funeral(葬儀を終えて)』(HarperCollins)

 

ミス・マープルシリーズ

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『The Mirror Crack'd From Side To Side(鏡は横にひび割れて)』(HarperCollins)

書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Sleeping Murder』(HarperCollins)