徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:夢枕獏著、『陰陽師 第8・9巻 瀧夜叉姫 上・下』(文春文庫)

2017年09月30日 | 書評ー小説:作者ヤ・ラ・ワ行

『陰陽師』シリーズの長編『瀧夜叉姫』上・下は朱雀門で蘆屋堂満が百鬼夜行に行き会い、鬼たちが持っていたバラバラ死体の部位のうちの落とされていった右腕を拾って自分の肉を喰わせる(どうやって???)ところから始まります。このプロローグの謎解きは下巻のかなり最後の方に出てきます。

都では妊婦が次々と殺されていて、小野好古の屋敷には盗らずの盗賊が入り、平貞盛は瘡を患って治らないなど不穏な出来事が起こり、安倍晴明の元にもそれらの話がもたらされ、彼の兄弟子である賀茂保憲から平貞盛の瘡を見るように依頼されます。本人が治療を嫌がっているので、ただの様子見ということでした。

こうして一見関係のない出来事の裏には恐ろしい陰謀が隠されていた、というなかなかハラハラするストーリーです。

ちょっとネタをばらすと、平将門復活劇とでも言いましょうか。でもただの怨霊話ではなく、将門の生前の奇妙な逸話も語られていて、かなり興味深い展開になっています。

表題となっている瀧夜叉姫は下巻の半ば頃になってようやく登場します。確かにキーパーソンの一人であることには違いないですが、他の人がタイトルになっても違和感はなさそうな気がします。

全体的におどろおどろしくてまさしく陰陽師の物語という感じがします。その分晴明と博雅ののんびりと濡れ縁で酒を飲みながら語り合うふわりとした空気がほとんどなくなっているのがちょっと残念な気がしないでもありませんね。

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