徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:恩田陸著、『ドミノ』(角川文庫)

2017年09月26日 | 書評ー小説:作者ア行

夢枕獏の『陰陽師』シリーズをちょっと休憩して、久々に恩田陸作品を読みました。『ドミノ』(角川文庫)は2004年発行のちょっと古い作品です。

1億円の契約書を待つ締め切り寸前の関東生命八重洲支社。八重洲支社からお菓子の買い出しに出た柔道女子。子役のオーディションに出る少女たちとその付き添いの母親たち。ホテルのカフェで変装して人を待つ女。推理力を競い合う大学生たち。女との別れを画策する青年実業家と別れのためのだしとして引っ張り出されたいとこ。初めて東京に来て、東京駅の待ち合わせ場所に行き着けない老人。老人の句会仲間の警察OBたち。千葉県の顧客のところから1億円の契約書を持ち帰ろうとする関東生命八重洲支社営業部長。来日中のホラー映画監督とそのペット等々。爆弾の試作品を試そうとする過激派。本来お互いに全く関係のない人たちがすれ違い、交錯する運命の一瞬に向かっていくストーリー。

最初は無関係の細切れのシーンがちょこちょこ切り替わって、何がどうなっているのかよくわからないので戸惑いますが、その細切れのカメラワークが繰り返されていくうちに段々全体像が見えてきてスピード感に溢れたストーリー展開になっていて、読み出したらダーッと一気に最後まで読まずにはいられない面白さです。『常野物語』シリーズや『夜の底は柔らかな底』シリーズのような説明なしの不思議ワールドが展開する恩田作品とはかなり違って、「こういう作品も書くんだ」と驚きながら楽しませてもらいました。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村


三月・理瀬シリーズ

書評:恩田陸著、『三月は深き紅の淵を』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『麦の海に沈む果実』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『黒と茶の幻想』上・下巻(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『黄昏の百合の骨』(講談社文庫)

関根家シリーズ

書評:恩田陸著、『Puzzle』(祥伝社文庫)

書評:恩田陸著、『六番目の小夜子』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『象と耳鳴り』(祥伝社文庫)

神原恵弥シリーズ

書評:恩田陸著、『Maze』&『クレオパトラの夢』(双葉文庫)

書評:恩田陸著、『ブラック・ベルベット』(双葉社)

連作

書評:恩田陸著、常野物語3部作『光の帝国』、『蒲公英草紙』、『エンド・ゲーム』(集英社e文庫)

書評:恩田陸著、『夜の底は柔らかな幻』上下 & 『終りなき夜に生れつく』(文春e-book)

学園もの

書評:恩田陸著、『ネバーランド』(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『夜のピクニック』(新潮文庫)~第26回吉川英治文学新人賞受賞作品

書評:恩田陸著、『雪月花黙示録』(角川文庫)

劇脚本風・演劇関連

書評:恩田陸著、『チョコレートコスモス』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『中庭の出来事』(新潮文庫)~第20回山本周五郎賞受賞作品

書評:恩田陸著、『木曜組曲』(徳間文庫)

書評:恩田陸著、『EPITAPH東京』(朝日文庫)

短編集

書評:恩田陸著、『図書室の海』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『私と踊って』(新潮文庫)

その他の小説

書評:恩田陸著、『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎単行本)~第156回直木賞受賞作品

書評:恩田陸著、『錆びた太陽』(朝日新聞出版)

書評:恩田陸著、『まひるの月を追いかけて』(文春文庫)

書評:恩田陸著、『ドミノ』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『上と外』上・下巻(幻冬舎文庫)

書評:恩田陸著、『きのうの世界』上・下巻(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『ネクロポリス』上・下巻(朝日文庫)

書評:恩田陸著、『劫尽童女』(光文社文庫)

書評:恩田陸著、『私の家では何も起こらない』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『ユージニア』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『不安な童話』(祥伝社文庫)

書評:恩田陸著、『ライオンハート』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『蛇行する川のほとり』(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『ネジの回転 FEBRUARY MOMENT』上・下(集英社文庫)

書評:恩田陸著、『ブラザー・サン シスター・ムーン』(河出書房新社)

書評:恩田陸著、『球形の季節』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『夏の名残りの薔薇』(文春文庫)

書評:恩田陸著、『月の裏側』(幻冬舎文庫)

書評:恩田陸著、『夢違』(角川文庫)

書評:恩田陸著、『七月に流れる花』(講談社タイガ)

書評:恩田陸著、『八月は冷たい城』(講談社タイガ)

エッセイ

書評:恩田陸著、『酩酊混乱紀行 『恐怖の報酬』日記』(講談社文庫)

書評:恩田陸著、『小説以外』(新潮文庫)

書評:恩田陸著、『隅の風景』(新潮文庫)


医者が満足する患者?(がん闘病記9)

2017年09月26日 | 健康

あんまり「闘病」という感じがしない日々を過ごしています。先週の3回目の抗がん剤投与の二日後くらいから脚の付け根や腰や脛などが激しく痛み出し、鎮痛剤を服用せざるを得ませんでしたが、土曜日にはもう散歩にも行けるくらい回復しました。歩く際に多少のぎこちなさを感じることはありましたけど。

それ以外の副作用といえば、睡眠障害くらいでしょうか? 平均睡眠時間は5時間くらいで、昼寝することも殆ど無くなりました。

抗がん剤の典型的な副作用といえる吐き気や食欲不振、便秘、その他感染症による発熱など一切ないので、ありがたいことです。

今日は血液検査と担当医の教授との面談でがん専門クリニックに行ってきました。

今回はCVポートの扱いのうまい看護師さんが不在で、ポートからの採血がうまくいかず、仕方なく腕の静脈からの採血となりました。担当した看護師さんはこちらには熟練しているようで、一発でうまくいきました。

血液の解析機にかけてあっという間に結果が出ました。白血球の値がやや低めですが、問題のない範囲。血小板の値も順調に下がっていました。血栓症防止のための注射をしなくなってから大分経ちますが、注射がなくなっても体は順調に手術の傷跡から回復しているということなんでしょうね。

血液検査の後しばらく待ってから担当医教授との面談がありました。私の具合や副作用について聞かれましたが、「関節痛と若干の睡眠障害以外は何もない」と答えると、うんうんと頷いて、「血液も問題ないし、私はあなたに満足してます」とおっしゃっいました。そして11月末までの治療日程を書いたメモを渡してくれました。面談時間は1・2分といったところでしょうか。

なんとなく「そうか、私は医者が満足する患者なんだ」と妙な気がしました。まあ要するに「手間がかからない」という意味合いだとは思いますが。

抗がん剤投与後の1週間弱を除けば比較的元気なので、ずっと就業不能証明書を出してもらって自宅療養しているのには若干気が引けるのですが、2週間働いて1週間休むという働き方も会社の同僚には迷惑な話だと思わなくもないです。

健康保険組合の方からは就業不能証明書に記載されている最後の日付から2日後にきっちりと傷病手当が給付されました。今日が2つ目の就業不能証明書の最終日なので、また2日後には傷病手当が振り込まれていることでしょう。

問題は、会社が出してくれるはずの補助金(固定給と傷病手当の差額)です。うちの会社は月初めの1週間くらいにその月の給与計算をして16日に給与が振り込まれるように処理します。このため、8月分は給与全額が振り込まれてしまって支払い超過となりましたが、9月分は8月分の支払い超過分が情報として記載されているのみで、固定給の支払は無しとなっているところまではよかったのですが、なぜか変額給の一部前払い分(ボーナスの一部が毎月前払いされて年間を通じての月収の安定化が図られている)だけが給付されることになっており、傷病手当への補助金についての記載は一切無しだったのです。長期病欠の社員は初めてというわけでもあるまいに、なんだかやってることが無茶苦茶です。人事サービスに問い合わせたら、「健康保険組合から傷病手当の給付額の通知が来てないので補助金の計算ができない」ということだったので、こちらに来ている通知をスキャンして人事の方にメールで送ることになりました。さてこれで10月分の給与明細で全部修正されて、かつ補助金の給付となるのかちょっと心配です。ルーチンを外れると、修正に2・3か月かかるなんていうことはざらにあるので。。。

傷病手当がもらえるだけでも日本で病気休職している多くの人たちから見たらうらやましいことなのかもしれませんが、もらえる権利があるものはやはりきっちりと回収しておかないと やはり傷病手当だけだとこれまでの月収の55%くらいしかなくて、若干赤字になってしまいます。

さっさと治療を済ませて、できるだけ早く復職したいものですね。

がん闘病記10へ。


唐突ながん宣告~ドイツの病院体験・がん患者のための社会保障(がん闘病記1)

化学療法の準備~ドイツの健康保険はかつら代も出す(がん闘病記2)

化学療法スタート(がん闘病記3)

抗がん剤の副作用(がん闘病記4)

え、緑茶は膀胱がんのもと?(がん闘病記5)

ドイツ:傷病手当と会社からの補助金(がん闘病記6)

抗がん剤投与2回目(がん闘病記7)

抗がん剤投与3回目(がん闘病記8)

書評:Kelly A. Turner著、『9 Wege in ein krebsfreies Leben(がんが自然に治る生き方)』(Irisiana)