WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『三国志(8)』(著者:宮城谷 昌光)

2013-01-12 14:15:44 | 本と雑誌
三国志 第八巻 (文春文庫) 三国志 第八巻 (文春文庫)
価格:¥ 630(税込)
発売日:2012-10-10

至福の9連休がとうとう終わってしまい、仕事初めの一週間。お正月明けからいきなり忙しく、仕事のメモは早くもたまっていく一方だが、今年はたくさん新しいことに挑戦したいもの。それにしても土曜日はウィークデイと違って、時間の余裕があって嬉しいなぁ。朝の紅茶も、平日はざざっとティーバッグなのに比べ、週末はちゃんとポットをお湯から温めて、フォションの茶葉が優雅にひらいていくのを新聞を読みながら眺める。今日は遅くならないうちに、近くの神社に初詣で。生活も楽しむ、今年のスローガン。


中国人の魂の大きなよりどころの一つである三国志、巨傑である劉備と曹操が没して、彼らの子の二代目の時代に入る。文庫が出るのが1年に1冊ベースなので、次を読みたいのにもどかしく、次を読むころには前の話を忘れているけれど・・・。同じ頃に日本は卑弥呼と邪馬台国だったことを思うと、風物だけでなく多くの英雄たちの自我がいきいきと息づいて感じられるような大陸のダイナミックさ、すごい。


『断腸亭日乗(下)』(著者:永井 荷風)

2013-01-05 15:27:15 | 本と雑誌
摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫) 摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)
価格:¥ 903(税込)
発売日:1987-08-17

夏に手にとったものの、二年前に読んだ上巻の、愛すべき墨東綺譚の情緒あふれる匂いとはガラリ変わり、この内容は心の準備を整え静かに端座して読むべしと(笑)いったんおいて、ようやくこの冬休みに読み始めた。後半は59歳から、太平洋戦争の時局迫る東京の風物描写がなまなましい。その上、かなり悲惨。


もともと財産家のボンで、フランスと米国に留学して以来一層味にうるさくなった美食好きなのに、空腹を忘れるため一日布団で読書という食糧難。灯火統制で原稿執筆もままならず、東京大空襲のサイレンにおびやかされる連夜のあげく、日がなむさぼるように偏愛した古今東西の貴重な本のぎっしりつまった自宅が米軍爆撃で一夜にして炎上焼失する。それでも気力おとろえず、隣席の軍人が聞こえよがしに朝寒風の海で水浴鍛錬をした話を聞いて、そもそも精神修養は日々絶えず行うもので、たまにするのは遊戯であるとバッサリ一刀両断(笑)する一方で、上野駅に出征する男子と見送りの女性が、長いあいだ見つめあったまま離れがたい様子に涙をぬぐう。


文化人情と安楽な日々の生活を愛した文豪は、当時の文化人は狂ったような一億総精神論であったはずなのに、日記にただの一度も軍国主義に迎合する記述なく、アメリカやヨーロッパと戦争するなどバカの極みと冷静に書き続けている。終戦の年67歳で「最近は書くのも楽しくないが、いっそ中止するかと思ってもなんとなく残り惜しく、命のある限りよしなき事を書き続けるとしよう」との通り、81歳で吐血して独り亡くなる前日が絶筆。続いたのは41年間。読んで震撼すること間違いない、今年のべスト・オブ・ブックスである。


『郷愁』(著者:ヘルマン・ヘッセ 訳:高橋 健二)

2013-01-02 16:29:05 | 本と雑誌
郷愁―ペーター・カーメンチント (新潮文庫) 郷愁―ペーター・カーメンチント (新潮文庫)
価格:¥ 483(税込)
発売日:1956-08

自宅で久しぶりに静かな休日を過ごしている。祖父母、両親ともに全員O型で、メンデルによれば混じりけなしの(?)純粋O型のはずだが、A型のタイプに性格が近いのか、規則正しい生活が好きである。夜更かししてお昼過ぎに起きお酒を飲みながらテレビを見つづけ、お菓子を手元から離さない・・・というグータラなお正月をいっぺん過ごしてみたいものであるが、性格とは悲しく、まめまめしく大掃除などしている分、かえっていつもよりきちんとした過ごし方をしているような気が(笑)性格というより美意識のせいか。


心身が休まってみると、目まぐるしく嫌なことのたくさんあった去年の澱が、少しずつ洗われて、生き返ってくるような感じがする。そのときは日々幸せと思っていたが、だいぶ無理してそう思おうとしていたことが、古い皮膚がはがれるようにゆっくりと落ちていく。掃除も同様で、9連休で時間があるを幸い、服や靴など、買ったときは買った分だけ捨てるポリシーなのに、それでもいつの間にか色々たまってしまったものを整理し、処分。あー、すっきり。


本もだいぶ捨てたが、中に小さいころに読んだヘッセの本、車輪の下、青春は美わし、デミアンが収録されたものが残っていて、掃除の合間になつかしくて拾い読み。続けて、だいぶ前に買っておいたヘッセの処女作「郷愁」を手にとったら、思わず一気に読んでしまった。銀色のもやのかかる山脈に湖、蒼い空と高い樹々、清々しい澄んだ空気を求めて高地に行きたくなるような、すてきに美しい一冊である。