WEBマスターの読書日記

「木戸さんがこんなマメだったなんて」と大方の予想を裏切って続いているブログ。本、映画、感じたことなどをメモしています。

『失われた時を求めて〈13〉 第七篇 Ⅱ』(著者:マルセル・プルースト 訳:鈴木 道彦)

2014-09-14 16:42:52 | 本と雑誌
失われた時を求めて〈13〉第七篇 見出された時(2) (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて〈13〉第七篇 見出された時(2) (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
価格:¥ 977(税込)
発売日:2007-03


今年は、あっという間に秋がやってきた。梅雨明けが早く、10月まで残暑が続いた去年に比べて、ひどく夏が短かったようだ。青い空が高く、空気が透明になり、早朝出社した先週など、駅へ歩く道で一瞬、キンモクセイの芳醇な香りのしたように思ってはっと驚いた。まさか、まだ咲く季節じゃないよね。午後の日もつるべ落とし、ふと気づくと暮れて窓の外が真っ暗になっていたりする。



久しぶりにゆっくりできる週末で、朝早起きをして家の掃除と洗濯をし、買い物に行って冷蔵庫を充実させ、フランスの家庭料理、鶏とじゃがいものトマト煮込みをことこと火にかけながら、いい匂いのする中で久しぶりに読書。平和で穏やかな秋の時間、読もうと思ってなかなか時間がとれなかったプルーストの最終巻を読了。実に4年がかりで読み終わって、人にはちょっと想像できないような達成感と、虚脱感だ。



いのちの分泌物のように過ぎ去る時間と、そのしたたり落ちていく現在の時間を一瞬過去へと戻す記憶との、交互に立ち戻り現れて、また消えていくエピソードが、印象派の絵画やサロンでの弦楽四重奏や、光あふれる海岸の美しい少女たちや、洗練されたレストランに織り込まれ、合間に激しい執着と繊細な嫉妬、形而上学的な考察、繰り返し読んでもいつも新しい表情を見せるのは、こんなふうに複雑に重ね重ねされた楼閣のような物語だからかもしれない。最終巻は、この楼閣を書こうと思って人生の残り時間があまりにも短いことに愕然とする作者の姿で幕を閉じる。それにしても、長かった。




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