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ワシーリー・グロスマン『人生と運命 3』その2

2012-07-26 09:04:00 | ノンジャンル
 オタール・イオセリアーニ監督・脚本・共同編集の'10年作品『汽車はふたたび故郷へ』を川崎アートシアターで見ました。旧ソ連体制下のグルジアでの映画の検閲に嫌気がさした映画監督が海外に居を移して映画製作を行いますが、そこではプロデューサーとの軋轢が生まれ、結局故郷に帰るという映画でした。年老いたビュル・オジェが出演していて驚きましたが、映画自体は最後は川の人魚に主人公が連れていかれるというファンタジックな作品となっていました。

 さて、昨日の続きです。
 エヴゲーニヤはついにクルイモフへの差し入れを監獄に受け取ってもらえます。そしてノヴィコフの名がラジオから流れるのを聞きます。そしてエヴゲーニヤはヴィクトルらの家から去っていきます。
 やがてヴィクトルの元へスターリンから電話がかかり、研究に支障がないかどうか聞いてきます。それからヴィクトルを取り巻く環境は一変し、皆が彼に親切になり、人事も彼の希望通りとなります。一方、マリヤは夫のソコロフにヴィクトルへの愛を告白し、夫からヴィクトルに二度と会わないようにと言われます。クルイモフはルビャンカでの拷問に耐え、敵のスパイであったという署名をしようとはしませんが、エヴゲーニヤに密告されたという疑念に悩まされます。ノヴィコフは五昼夜寝ていない部下たちに休養を与えようとしますが、ウクライナへの先陣を切ろうとするゲートマノフと衝突します。
 車の出迎えを受けるようになり生活が一変したヴィクトルでしたが、彼自身は変わりませんでした。リュドミーラとマリヤの関係は復活しましたが、マリヤはヴィクトルと会おうとはしません。ある日、シシャコフはヴィクトルを呼び出し、無実のユダヤ人医師を糾弾する書面にサインするように求め、ヴィクトルは躊躇しながらもそれに署名してしまい、後悔の念に打たれます。そんな折り、マリヤから電話があり、明日公園で会いたいと言ってきます。ヴィクトルは考えます。とるに足らない人間は素晴らしいことをすると、生涯それを鼻にかける。一方、心正しい人間は、素晴らしいことをしてもそれを心にとどめないが、自分の犯した罪は何年でも覚えていると。一方、クルイモフは心身ともに破壊され、無条件降伏への道を辿っていました。同じ房のカツェネレンボーゲンは、これまでに監獄にいた人々が辿った道をクルイモフに教え、いずれはラーゲリのシステムが進化して外界との境がなくなり、個人的自由の原理に理性が勝る世界が現出するだとうと予言し、クルイモフの怒りを買います。そこへエヴゲーニヤからの差し入れが届き、クルイモフは神に祈り、涙します。
 スピリドーノフはウラルに移り、泥炭焚きの小さな発電所の所長になるように命じられ、ヴェーニャとともに旅立ちます。彼らの後を追ってきていたアレクサンドラは彼らと別れ、エヴゲーニヤのところでしばらく暮らすことにします。スターリングラードの自分の家の廃墟を見て絶望するアレクサンドラ。最後に希望を持って森の中を歩くペリョースキンとその妻の姿で、この小説は終わります。

 訳者あとがきから引用すると「この作品の大きな特徴の一つは、政治家、軍人など多くの実在の人物が実名で登場し、政治的・軍事的な意志決定や出来事の進行という歴史的事実を踏まえながら話が展開されていること」であり、「従軍記者としてこの人類史上稀に見る(スターリングラードの戦いという)激戦の現場に自ら望んで立ったグロスマンは、そこで見聞きした出来事をプロットの中心にすえるとともに、それを経験した者でなくては伝えようのない迫真性をもってこの小説の中に再現した」のでした。また「『人生と運命』を書くことでグロスマンは、ドイツのナチズムとソヴィエトのスターリン主義は同じ全体主義のカテゴリーにくくられるという結論にたどり着」いたのでした。そういった点からも、読みごたえ十分な小説だったと思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

ワシーリー・グロスマン『人生と運命 3』その1

2012-07-25 08:33:00 | ノンジャンル
 ジョン・スタージェス監督・製作の'60年作品『荒野の七人』をWOWOWシネマで見ました。ユル・ブリナー、イーライ・ウォラック、スティーヴ・マックイーンが主役級の扱いで、チャールズ・ブロンソン、ロバート・ヴォーン、ジェイムズ・コバーン、そしてこの作品がデビュー作になるホルスト・ブックホルツが助演級の扱いとなっていました。生き残るのはユル・ブリナー、スティーヴ・マックイーン、ホルスト・ブックホルツで、作品の全体的な印象は若い頃に見たのと同じく、それなりに面白く見させてもらいました。

 さて、ワシーリ・グロスマンの'80年に刊行された『人生と運命 3』を読みました。
 スターリングラード攻勢が始まる数日前に、クルイモフは第六四軍の地下戦闘指揮所に到着しますが、そこで逮捕され、ルビャンカの監獄に入れられてしまいます。正面と横から写真を撮られ、ズボンのボタンとベルトが奪われた後、監房に入れられます。彼はリュドミーラの最初の夫のアバルチュークも同じ廊下を通ったと思います。
 一方、パウルス将軍率いるドイツ軍は、レニングラード近くでソ連軍に包囲されます。1942年11月19日午前7時30分にソ連軍の攻撃は開始され、100時間で包囲は完了しました。スターリングラードのドイツ軍が壊滅したことにより、カルムイク人とクリミヤのタタール人、バルカル人とチェチェン人はスターリンの意志によりシベリアとカザフスタンに送られ、自分たちの歴史を記憶したり自分の子どもたちに母語で教育する権利を失うことになりました。ユダヤ人たちもその10年後にヒトラーから受けたのと同じ運命を辿ることになりました。ノヴィコフもその攻撃の一翼を担っていまいた。パウルスは、ヒトラーから自分の軍が占める地域を《スターリングラード要塞》と名づけるという命令を受けます。東プロシアとリトアニアの境にあるゲルリッツの森にいたヒトラーは、その時、初めての恐怖を感じていました。
 モスクワの物理学研究所の玄関ホールに貼ってある壁新聞には、ヴィクトルを糾弾する論文が掲載されていました。それ以降、ヴィクトルの家の電話は鳴ることがなくなり、知人も道で会っても挨拶をしなくなります。そんな折り、彼らのところへリュドミーラの妹であるエブゲーニヤが訪ねてきます。彼女は前夫のクルイモフが逮捕されたことにより、モスクワに当局により呼ばれたことをヴィクトルらに知らせます。また、スピリドーノフとヴェーラを襲った運命についても彼らに語ります。エヴゲーニヤはクルイモフに関することをノヴィコフに手紙で知らせてありました。エヴゲーニヤはルビャンカを訪ねて、クルイモフの消息を尋ねますが、有益な情報は何一つ得られません。
 ヴィクトルはチェプイジンの元を訪ね、妻と友人たちから懺悔しろと忠告されていることを話します。そしてチェプイジンの意見に賛成できない自分を発見し、彼の元を去ります。彼の運命を決する教授会が開かれますが、彼は最後まで迷った上で、その教授会を欠席することにします。後で教授会のことを知ると、そこでは満場一致に近い形で、ヴィクトルを糾弾する決議が採択されたとのことでした。ヴィクトルはクルイモフでさえ逮捕されたのだから、自分も逮捕されるだろうと腹をくくります。
 その頃、ダーレンスキーは攻勢へと向かう道を急いでいました。道沿いの雪原には、ドイツ軍の戦車や兵器、イタリア製のトラックが焼かれたり破壊されたりして放置され、殺されたドイツ兵やルーマニア兵の死体が転がっていました。ソ連軍は西へと進み、捕虜の集団は東へと移動していました。彼はノヴィコフと出会います。またアレサンドラはリュドミーラとエヴゲーニヤの二人の娘と孫娘のヴェーラから手紙をもらいますが、皆が彼女に自分のところへ来てほしいと書いていました。彼女はスターリングラードに戻ろうと決心します。(明日へ続きます‥‥)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

ワシーリー・グロスマン『人生と運命 2』その2

2012-07-24 08:37:00 | ノンジャンル
 ミケランジェロ・アントニオーニ監督・共同脚本の'62年作品『太陽はひとりぼっち』をWOWOWシネマで見ました。長年付き合ってきた男と別れた女性(モニカ・ヴィティ)が、証券取引所で働く若い男性(アラン・ドロン)と付き合うようになるまでを淡々を描いた作品で、ラスト、昼間から夜にかけての町の風景が、現代音楽をバックに無声映画風に描かれた部分が印象に残る映画でした。

 さて、昨日の続きです。
 スターリングラード南部のベケトフカ村にある造船所で行われた大十月革命の祝賀会に出たクルイモフは、党第一書記の空疎な演説を聞いた後、スターリングラード地区国営発電所の所長スピリドーノフを訪ね、自分の先妻・エヴゲーニヤが無事でいることを知ります。スピリドーノフは自分の娘ヴェーラがやっと説得を受け入れヴォルガ川を渡ったと言い、彼女の夫の戦闘機乗りの消息は不明であることも述べます。グレーコフは古参のボリシェヴィキだったモストフスコイに対するこれまでの自分の態度を顧みます。そのモストフスコイはリース大佐との会見の後、不安な日々を過ごしていましたが、風呂場で働くオーシポフと再会し、武器の集積が進んでいること、エルショフが他の収容所に送られてしまったことを知らされ、自作のビラをオーシポフに渡し、それは収容所の各ブロックに貼り出されましたが、まもなくモストフスコイは処刑されてしまいます。
 絶滅収容所で働くローゼは恵まれた報酬を得て、ガス室とその階下での歯科医たちの監視を行っていました。ガス室の扉の開け閉めを担当するロシア兵捕虜のフメリコフは、変質者の同僚が発する笑い声に背筋を寒くさせていましたが、囚人の女性の中から1人を選び、処刑の前に半時間ほど楽しむこともありました。そしてこのような仕事をしているのは、単に生きるためだと割り切って考えていました。施設長のカフトルフト少佐は忠実に仕事を果たしていました。絶滅収容所へ着く移送列車は、東方からのものが圧倒的に死人や病人が多く、貨車の中はシラミだらけで、たまらないほどの悪臭がしました。ソフィヤらの乗った貨車も到着し、広場では音楽隊が演奏を開始しました。外科医を選抜している将校に対し、ソフィヤは敢えて応えず、ダヴィドの手を放しませんでした。彼女らは風呂に入ると言われて脱衣場で服を脱がされ、髪を切られ、廊下を通ってガス室に押し込まれると、そこで死を迎えました。
 モストフスコイらと一緒に捕虜になった運転手のセミョーノフは飢餓収容所で十週間を過ごした後、解放され、農家の老婆に助けられます。一方、ヴィクトルの論文は物理学者だけでなく、数学者や化学者からも評価されますが、ヴィクトルの研究所のスタッフが勝手に解雇され、彼の希望するスタッフが採用されない件をきっかけとして、ヴィクトルはシシャコフと決定的に対立します。新たな身上調書に記入するヴィクトル。
 カルムイクのステップで数週間のうんざりする時間を過ごしたダーレンスキーは、ある日ドイツ軍の一斉射撃を受けますが、その夜、スターリンの指示により、三人の方面軍司令官は、百時間のうちにスターリングラードの戦いの運命とパウルスの三十三万人の軍の運命を決し、戦争の流れにおける転換点を画した攻勢開始命令を各部隊に発します。一方、十月革命記念日後まもなく、ドイツ空軍は再びスターリングラード地区国営発電所に対する集中攻撃を行い、発電所所長のスピリドーノフはモスクワの指令を待つことなく発電所を離れ、艀の上で出産を終えたヴェーラと再会します。そこへスターリングラード近郊に配置されたソ連軍が数日前にドイツ軍に対する攻勢に移ったとの知らせが入り、皆涙にくれますが、攻勢に出たその日、ヴェーラの夫ヴィークトロフが乗る飛行機は撃墜され、彼は戦死していたのでした。

 この2巻では、ソフィヤらがユダヤ人絶滅収容所で殺される場面が描かれています。そこで働くドイツ兵やロシア人捕虜、そしてドイツ人施設長のことも描かれていますが、彼らが時代に流されて行動せざるをえなかったという論法は、著者によって明確に退けられています。第3巻では、いよいよスターリングラード戦でのソ連軍進撃とドイツ軍敗走が描かれていくはずです。また党官僚を代表するシシャコフと対立するヴィクトルの気になるその後も、描かれることになります。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/

ワシーリー・グロスマン『人生と運命 2』その1

2012-07-23 07:01:00 | ノンジャンル
 トッド・ヘインズ監督・原案・共同脚本の'07年作品『アイム・ノット・ゼア』をDVDで見ました。“ボブ・ディランの音楽と彼の多様な人生に触発されて”と題されたこの映画は、ディランの音楽が中心に流れる中、'60年代から'70年代を生きたカントリー・シンガーら数人の人生をコラージュ風にまとめたもので、ケイト・ブランシェット、リチャード・ギア、シャルロット・ゲインズブール、ジュリアン・ムーアら豪華な俳優陣が見られる映画でした。

 さて、ワシーリー・グロスマンの'80年に刊行された『人生と運命 2』を読みました。
 ノヴィコフの戦車軍団は前線へと向かっていました。彼らは戦争の帰趨を決する作戦に参加していることをまだ知りませんでした。ノヴィコフは途中で滞在した町からエヴゲーニヤを訪ねます。元の夫のクルイモフの消息を心配するエヴゲーニヤでしたが、ノヴィコフのプロポーズに対して心が動くのでした。隊に戻ったノヴィコフには目的地がスターリングラードであることが知らされます。
 ドイツ軍のバッハ中尉は銃傷で軍の病院に入れられていましたが、これまでの考えを一変させ、入党を考えていました。ドイツ軍第六軍司令官のパウルスは、否応無しに攻撃命令に署名させられます。
 ソ連軍のダーレンスキーは、スターリングラード方面軍の南東翼に当たる部隊に到着していました。彼は連隊参謀長のボヴァ中尉と官僚主義を批判し合います。一方、ドイツの収容所にいたモストフスコイは警備隊長のリース少佐にざっくばらんに話しかけられ、とまどいます。ドイツ軍に包囲されながらも踏みとどまっていた《第六号棟第一号フラット》では、セリョージャと女性通信士のカーチャが愛を確かめ合っていましたが、カーチャに思いを寄せる上司のグレーコフはそれを知ると、彼らをそこから脱出させてやります。クルイモフは軍コミサールとして、《第六号棟》でのグレーコフの反ボリシェヴィキ的行動を正すため、そこへ派遣されることになります。
 クルイモフはグレーコフがセリョージャらを立ち去らせた翌日に《第六号棟》に到着しますが、グレーコフの非ソヴィエト的な考え方に対し、彼の解任を決心します。しかし、クルイモフは眠っている間に敵の弾が頭をかすり、担架でそこを運びだされますが、後で自分をグレーコフが撃ったと信じるようになります。その後、パウルス将軍はスターリングラードのトラクター工場地区への攻撃命令を下し、とくに強力な攻撃が加えられた《第六号棟》の兵士は全滅します。
 ヴィクトルの一家は妻リュドミーラの母アレクサンドラをカザンに残し、1年ぶりにモスクワに戻ってきますが、ヴィクトルの理解者であったチェプイジンはアカデミーの指導的立場を解任され、ヴィクトルを目の敵にするシシャコフが後任となります。
 ドイツ収容所のリース大佐は機械工場と化学工場、そして絶滅収容所の建設現場を視察し、親衛隊のアイヒマン中佐に状況報告をします。ソ連の新編成部隊のスターリングラード前線への移動は極秘に進められ、ドイツ軍の右肩に位置する南への兵力集中がなされていました。パウルスの諸師団を包囲する準備がなされ、ノヴィコフの戦車軍団もスターリングラードより南のヴォルガ川右岸に渡河されていました。病院から出されたクルイモフは自分の部屋に戻り、《第六号棟》に関する報告書を書こうとしますが、なかなかうまく書けません。そこへまた右岸への出張が命ぜられ、グレーコフら《第六号棟》の兵士が全滅したことを知らされるのでした。(明日へ続きます‥‥)

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ワシーリー・グロスマン『人生と運命 1』その2

2012-07-22 09:32:00 | ノンジャンル
 小谷承靖監督の'70年作品『俺の空だぜ!若大将』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。マンションを建設する建設会社の平社員を辞めてスカイダイビングクラブで働くようになる若大将を加山雄三、その建設会社の専務の青大将を田中邦衛、マドンナ役を酒井和歌子という絵に描いたようなご都合主義の映画で、風呂屋の親父の伴淳三郎とのシーンや、上田吉二郎や左ト全のベタなギャグなど結構笑わせてもらいました。

 さて、昨日の続きです。
 ソフィヤは今まで32年間医師として働いてきましたが、今は移送列車の貨車の中にいます。40才のナウムはドイツ軍の命令のもとでユダヤ人の遺体を掘り起こして焼く仕事をしていましたが、ある日自分が殺される番となって逃げ出し、1週間後には捕まって、今はこ同じ貨車に乗っています。女性司書のムーシャはある夜、ゲットーにナチ親衛隊とナチ親衛隊保安部らが到着するのに気付きます。'37年に逮捕されて死んだ老医者カラーシクの娘のナターシャは、時々貨車の中で歌おうとしていました。ゲットーで隠れ部屋に隠れていたダヴィドは、捜索中に泣き出した娘を殺した母親を目の前で見ました。
 これまでもウクライナとベラルーシのユダヤ人虐殺があり、階級としての富農撲滅キャンペーン、トロツキー、ブハーリン派の根絶キャンペーンがソ連では行われてきました。しかし自由に対する人間の自然な希求は根強く、弾圧はできますが、根絶はできないのです。この結論にわれわれの時代の光、未来の光があります。しかし、ファシズムは数千万の人々を殲滅しました。
 ゲートマノフは戦車軍団指揮官のノヴィコフと出撃の前夜を過ごしていました。クルイモフは師団指揮官バチューク中佐のもとを訪れてます。前線で砦となっている《第六号棟第一号フラット》に、女性無線通信士のカーチャが送られます。ドイツ軍に包囲されたそこからは地下トンネルが掘られ、それを通って兵士たちは脱出し、人民戦線の様相を見せていた《第一フラット》の責任を追及されます。一方、スターリングラード地区国営発電所で守衛として働いている老いたアンドレーエフには、妻が死んだという手紙が届いていました。そこに住むヴェーラは妊娠している子の父親ヴィークトロフの消息が気になっていました。
 ヴィクトルの仕事はうまくいっていませんでしたが、ある日、突然それまでの問題を解決できるアイディアを思いつきます。カルムイク自治区に派遣されたダーレンスキーは、異世界に来たように感じます。ドイツの収容所のモストフスコイは、メンシェビキのチェルネツォフと論争した後、エルショフ大佐から捕虜による闘争同盟《統一自由ヨーロッパ》を作ることを提案され、革命の熱気を取り戻します。エルショフは親衛隊の中尉から殺人を依頼されることの多い室長のカイゼを殴っておきながら、命を長らえた経歴を持つ、反骨の士でした。エルショフはオーシポフに話をつけてくれるように、モストフスコイに頼みます。エルショフは計画を着々と進め、モストフスコイもオーシポフに接触しますが、オーシポフは既に軍事組織はできつつあると言います。そしてその日の夜、ナチ親衛隊員がやって来て、6人を連行していきました。その中にはモストフスコイも入っていました。

 全3巻のうちの1巻、約500ページです。ゲットーで最後を迎えようとする母からの手紙が特に心を打ちました。この後、2巻の中でユダヤ人の虐殺が描かれていくことになります。しっかり読んでいこうと思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/