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クロード・シャブロル監督『悪の華』

2012-07-31 08:40:00 | ノンジャンル
 クロード・シャブロル監督・脚色の'03年作品『悪の華』をWOWOWシネマで見ました。
 庭から屋敷の1階の入り口へ入っていくカメラは、キッチンで働く家政婦を見て、2階に登ると、一室に膝を抱えた若い女性がいて、奥の部屋には仰向けに倒れた中年男性がいます。
 4年ぶりにアメリカから帰ったフランソワは父のジェラールに飛行場で出迎えを受け、リーヌ叔母が待っていることを告げられ、ジェラールの妻のアンヌ(ナタリー・バイ)が再び市議選に立候補したこと、自分の薬局の事業が順調なことを知らされます。リーヌ叔母とアンヌの娘ミシェルに歓待されるフランソワ。やがてアンヌも選挙参謀で副候補であるマチューとともに帰ってきます。マチューは一旦帰りますが、問題が起こったと言ってすぐに戻ってくると、アンヌについての怪文書が出回っていることを告げます。それには「シャルパン=ヴァスール夫人が活動を再開。シャルパン家とヴァスール家は婚姻で権力を掌握。'81年に次男とその兄の妻が自動車事故で死亡した後、次男の妻アンヌは義理の兄と再婚。呪われた一族では第5共和制が誕生した'58年に、アンヌの両親が飛行機事故で死亡。当時はヴァスール姓で、シャルパン姓は隠していた。'44年まで政府要職にあった祖父ピエールは家族と絶縁した息子をレジスタンスとして射殺させ、娘によって射殺された。娘は不起訴、ピエールの妻は心労で数週間後に死亡」と書いてありました。
 アンヌはマチューとともに低家賃住宅を訪ねて支持を訴えますが、彼らの訪問後にある夫婦は、アンヌが対独協力者の孫娘で、祖父は息子をドイツに密告し、リーヌ叔母がその父を殺したことを噂します。一方、ジェラールは事務所に若い女を招き入れます。再び怪文書が出回り、車にキズをつけられるアンヌら。
 いとこ同志のフランソワとミシェルは再び愛を確かめ合います。ピラの別荘に行くことにした二人は、叔母にだけそれを伝えて、両親がいない間に出発し、ジェラールのことが好きではないことを告白し合います。小さい頃、両親がよくケンカし、人前では笑顔でいたことから偽善を学んだというフランソワは、母が自分がジェラールの子ではないと言ったことがあるとミッシェルに言います。怪文書をジェラールが書いたかも、と疑う二人。一方、アンヌはジェラールに、怪文書のおかげで立候補に踏み切れたと言います。
 ピラの別荘にやって来た叔母は、そこでの思い出にふけって涙を流し、ボードゲームで「隠す」という文字を作って勝ちます。市長の引退表明の場に臨席し、次期の市長を期待されるアンヌ。ジェラールはその場で女優をナンパします。フランソワらは怪文書のことを叔母に打ち明けますが、叔母は驚きません。帰って来た叔母はジェラールの事務所で働いている時、訪れてきた女優がジェラールに「喉の奥しか見せない」と言っているのを盗み聞いて、不潔さに激怒し、ゴミ箱を漁ります。
 投票日、アンヌの票を破って投票するジェラール。叔母もアンヌには投票しないとフランソワらに言います。それでもアンヌは大量得票で勝ち、ジェラールとフランソワを連れてパーティに出かけます。書斎で勉強していたミシェルに、酔って帰ってきたジェラールは迫り、ミシェルは思わずランプで彼を殴ると、彼は死んでしまいます。叔母に泣きつくミシェル。叔母は冷静になるようにミシェルを説得し、2階の寝室に死体を二人で運びます。父を殺したことを後悔していないと言う叔母。階段からずり落ちそうになる死体を思わず引き揚げ、急に笑い出す二人。そこへフランソワから電話があり、事件を知らされたフランソワはすぐに帰ることになります。叔母は父に殺された兄は自分の生涯の男だったと告白し、このチャンスを60年待っていたと言って、ジェラールを殺したのは自分だとミシェルに言い聞かせます。今から皆をダマすのが愉快だと言う叔母は、時間は存在せず、今が永遠に続くだけだと言います。フランソワは帰宅すると、膝を抱えるミシェルを慰めます。やがて多くの支持者とともに帰宅したアンヌを、毅然として笑顔で迎える叔母。フランソワもミシェルに涙をぬぐうように言って、二人で1階に降りてきて、支持者の群れに入っていくのでした。
 
 叔母の回想する表情、毅然としたラストでの表情が見ごたえがあり、シャブロル独特の沈んだ色調の画面も健在でした。突然挿入される不協和音の音楽も特徴的だったと思います。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/