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ワシーリー・グロスマン『人生と運命 2』その2

2012-07-24 08:37:00 | ノンジャンル
 ミケランジェロ・アントニオーニ監督・共同脚本の'62年作品『太陽はひとりぼっち』をWOWOWシネマで見ました。長年付き合ってきた男と別れた女性(モニカ・ヴィティ)が、証券取引所で働く若い男性(アラン・ドロン)と付き合うようになるまでを淡々を描いた作品で、ラスト、昼間から夜にかけての町の風景が、現代音楽をバックに無声映画風に描かれた部分が印象に残る映画でした。

 さて、昨日の続きです。
 スターリングラード南部のベケトフカ村にある造船所で行われた大十月革命の祝賀会に出たクルイモフは、党第一書記の空疎な演説を聞いた後、スターリングラード地区国営発電所の所長スピリドーノフを訪ね、自分の先妻・エヴゲーニヤが無事でいることを知ります。スピリドーノフは自分の娘ヴェーラがやっと説得を受け入れヴォルガ川を渡ったと言い、彼女の夫の戦闘機乗りの消息は不明であることも述べます。グレーコフは古参のボリシェヴィキだったモストフスコイに対するこれまでの自分の態度を顧みます。そのモストフスコイはリース大佐との会見の後、不安な日々を過ごしていましたが、風呂場で働くオーシポフと再会し、武器の集積が進んでいること、エルショフが他の収容所に送られてしまったことを知らされ、自作のビラをオーシポフに渡し、それは収容所の各ブロックに貼り出されましたが、まもなくモストフスコイは処刑されてしまいます。
 絶滅収容所で働くローゼは恵まれた報酬を得て、ガス室とその階下での歯科医たちの監視を行っていました。ガス室の扉の開け閉めを担当するロシア兵捕虜のフメリコフは、変質者の同僚が発する笑い声に背筋を寒くさせていましたが、囚人の女性の中から1人を選び、処刑の前に半時間ほど楽しむこともありました。そしてこのような仕事をしているのは、単に生きるためだと割り切って考えていました。施設長のカフトルフト少佐は忠実に仕事を果たしていました。絶滅収容所へ着く移送列車は、東方からのものが圧倒的に死人や病人が多く、貨車の中はシラミだらけで、たまらないほどの悪臭がしました。ソフィヤらの乗った貨車も到着し、広場では音楽隊が演奏を開始しました。外科医を選抜している将校に対し、ソフィヤは敢えて応えず、ダヴィドの手を放しませんでした。彼女らは風呂に入ると言われて脱衣場で服を脱がされ、髪を切られ、廊下を通ってガス室に押し込まれると、そこで死を迎えました。
 モストフスコイらと一緒に捕虜になった運転手のセミョーノフは飢餓収容所で十週間を過ごした後、解放され、農家の老婆に助けられます。一方、ヴィクトルの論文は物理学者だけでなく、数学者や化学者からも評価されますが、ヴィクトルの研究所のスタッフが勝手に解雇され、彼の希望するスタッフが採用されない件をきっかけとして、ヴィクトルはシシャコフと決定的に対立します。新たな身上調書に記入するヴィクトル。
 カルムイクのステップで数週間のうんざりする時間を過ごしたダーレンスキーは、ある日ドイツ軍の一斉射撃を受けますが、その夜、スターリンの指示により、三人の方面軍司令官は、百時間のうちにスターリングラードの戦いの運命とパウルスの三十三万人の軍の運命を決し、戦争の流れにおける転換点を画した攻勢開始命令を各部隊に発します。一方、十月革命記念日後まもなく、ドイツ空軍は再びスターリングラード地区国営発電所に対する集中攻撃を行い、発電所所長のスピリドーノフはモスクワの指令を待つことなく発電所を離れ、艀の上で出産を終えたヴェーラと再会します。そこへスターリングラード近郊に配置されたソ連軍が数日前にドイツ軍に対する攻勢に移ったとの知らせが入り、皆涙にくれますが、攻勢に出たその日、ヴェーラの夫ヴィークトロフが乗る飛行機は撃墜され、彼は戦死していたのでした。

 この2巻では、ソフィヤらがユダヤ人絶滅収容所で殺される場面が描かれています。そこで働くドイツ兵やロシア人捕虜、そしてドイツ人施設長のことも描かれていますが、彼らが時代に流されて行動せざるをえなかったという論法は、著者によって明確に退けられています。第3巻では、いよいよスターリングラード戦でのソ連軍進撃とドイツ軍敗走が描かれていくはずです。また党官僚を代表するシシャコフと対立するヴィクトルの気になるその後も、描かれることになります。

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/