gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

山根貞男『映画の貌』その4

2019-02-18 07:06:00 | ノンジャンル
 神奈川県厚木市長選。組織をバックにもたず、実績を上げていた小林さんが4選を果たしました。やったー!

 さて、また昨日の続きです。

・「そこで、なにかの参考になることもあろうと考え、わたしならまずこの(美空ひばり)映画を見たいというものを記しておこう。エノケンが素晴らしい『東京キッド』(斎藤寅次郎監督)。錦之助が初々しい『ひよどり草紙』(内田好吉監督)。やはり『伊豆の踊子』と『たけくらべ』。錦之助と共作した傑作『おしどり駕籠』(マキノ雅弘監督)。シリーズ第一作『ひばり捕物帖・かんざし小判』(沢島忠監督)。千恵蔵と共演した『江戸っ子判官とふり袖小僧』(沢島忠監督)。『べらんめえ芸者』シリーズ(小石栄一監督)の高倉健と共演したもの……。」

・「そんなふうに多様な作品群のなか、わたしがもっとも興奮したのは、フリッツ・ラングの『Fighting Hearts』(英語題名、1920---21、香港題名「陣陣疑雲」)である。むろんサイレントで、妻の貞操を疑った男の行動が美しいモノクロ画面で描き出され、ハラハラドキドキさせる。」

・「1970年代に、そんな神代辰巳の映画姿勢と“日活ロマン・ポルノ”路線がうまく合致して、みごとな花を咲かせた。まさに傑作秀作の連続で、どれもが素晴らしく、なかでも突出しているのが『四畳半襖の裏張り』(1973年)と『赫い髪の女』(79年)である。」



 次に、縦横無尽に映画と対決し、「ほめる」「けなす」があいまみれて書かれた「1980年代から90年代にかけての160本余の作品評を並べたくだり」の中から、この本を読んで初めて見たいという欲望にかられた映画のリストを記しておくと(★印は特に見たいと思ったもの)、
・大森一樹『すかんぴんウォーク』(105分)
・大林宣彦『少年ケニア』(110分)
・和泉聖治『魔女卵』(91分)
・サモ・ハン・キンポー『スパルタンX』(108分)
・ユルマズ・ギュネイ『路(みち)』(115分)
・澤井信一郎『早春物語』(96分)
・黒沢直輔『夢犯』/加藤文彦『オーガズム真理子』(69分、69分)
・澤井信一郎『めぞん一刻』(97分)
・★大森一樹『恋する女たち』(98分、斉藤由貴主演!)
・★須川栄三『蛍川』(115分)
・澤井信一郎『恋人たちの時刻』(99分、ただしこれは以前見たとき、見るのが恥ずかしくなるほどの“凡作”だった記憶があるのですが……)
・中原俊『メイク・アップ』(105分)
・★大森一樹『「さよなら」の女たち』(92分、これも斉藤由貴主演!!)
・伊藤俊也『花園の迷宮』(118分)
・長崎俊一『ロックよ、静かに流れよ』(100分)
・澤井信一郎『ラブ・ストーリーを君に』(104分、これも以前見たときに“気恥ずかしい”思いをした記憶があるのですが……)
・石井隆『天使のはらわた・赤い眩暈』(74分)
・榎戸耕史『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』(90分)
・村川透『行き止まりの挽歌 ブレイクアウト』(111分)
・利重剛『ZAZIE』(95分)
・★瀬川昌治『Mr.レディ・夜明けのシンデレラ』(110分)
・★瀬川昌治『瀬戸はよいとこ・花嫁観光船』(1978年、長さは分からず)
・小水一男『ほしをつぐもの』(105分)
・岡本喜八『ああ爆弾』(1964年、長さは分からず)
・大川俊道『サニー・ゲッツ・ブルー 迫撃のキーウエスト』(70分)
・深作欣二『いつかギラギラする日』(108分)
・真喜屋力・中江裕司・當間早志『パイナップル・ツアーズ』(118分)
・石井隆『死んでもいい』(117分)
・柄本明『空がこんなに青いわけがない』(94分)
・水谷俊之『ひき逃げファミリー』(100分)
・川尻善昭『獣兵衛忍風帖』(92分)
・市川準『病院で死ぬということ』(100分)
・大塚汎、セミョーン・アラノヴィッチ『アイランズ/島々』(95分)
・石井隆『ヌードの夜』(110分)
・杉田成道『ラストソング』(119分)
・ケン・ローチ『リフ・ラフ』『レイニング・ストーンズ』(94分、90分)
・★キラ・ムラートワ『長い見送り』(95分)
・大林宣彦『女ざかり』(118分)
・金子修介『ガメラ/大怪獣空中決戦』(95分)
・松岡錠司『トイレの花子さん』/平山秀幸『学校の怪談』(100分、100分)
・蔡明亮『青春神話』(106分)
・蔡明亮『愛情萬歳』(117分)
 このように書いてみてまず気づくのは、映画の長さです。長さが100分以内とそれ以上ではかなりのハードルがあり、110分とかになると、途端に見たくなくなるといったことが言えるような気がします。しかし逆の場合というのも確かに存在していて、「もっと長く見ていたい」という気持ちにならせる、例えばフレデリック・ワイズマンのドキュメンタリーのような映画もあります。(また明日へ続きます……)

山根貞男『映画の貌』その3

2019-02-18 03:17:00 | ノンジャンル
 また昨日の続きです。

・「周知のように東映はそれ以前、時代劇の王国として栄えたが、いま題名を記した“東映やくざ映画”は明らかにその転生といってよかろう。いずれも明治、大正、昭和初期を舞台に、着流し姿の主人公が義理と人情の相克のなかを悪玉と闘うドラマであり、その勧善懲悪のパターンといい、日本的情緒の強調といい、ラストの大殺陣といい、かつての時代劇がいうなれば“半時代劇”として甦ったのである。」

・「そこで、鮮烈に印象的なのは『みんな~やってるか!』を見ると、ほうぼうに過去の数々の映画作品にちなんだくだりがあり、いうなれば北野武の映画史意識が散りばめられていることである。」

・「あるときなどは、前夜、鈴木清順の『東京流れ者』を見た蓮實重彦とわたしがそのあと、イタリア人やフランス人やインド人もまじえ、映画の主題歌を合唱しつつ真夜中の石畳の道を闊歩したことを知るや、大いに悔しがった。」

・「極端な低予算とオールロケーションによる“ピンク映画”は、映像の質という点では落ちるものの、すさまじい性と暴力の迫力によって観客の欲望になまなましく訴えたのである。」

・「1968年には、映画表現それ自体の力が社会や政治の壁にぶつかる事件がいくつも起こった。日活がシネクラブ研究会による上映企画に対して鈴木清順の全作品を封鎖したばかりか鈴木清順との契約を一方的に破棄したこと、三里塚闘争を撮っていた小川プロダクションの撮影班が機動隊に襲われ大津幸四郎キャメラマンらが逮捕されたこと、『さんや’68冬』を撮影中の竹中労らが逮捕されたこと、国学院大学映研の街頭闘争ドキュメンタリー・フィルムが押収されたことなどである。」(ちなみに1986年にはフランスで五月革命が起こっています。)

・「まさしく映画ファンの心意気ではあるが、それ以上に、ある覚悟のすごさ、命がけの心意気がうかがえる。山田宏一は十数年前、脳内出血で死にかかった。そして、もっともっと映画を見るために生き返った。本書(『シネ・ブラボー』)をはじめとする多くの著書は、その気迫の成果である。」

 「いつだったか『キネマ旬報』で日本映画がはじまって以来のベストテンが選ばれた。そのときベストワンになったのが、伊藤大輔監督『忠治旅日記』三部作である。」

・「時代劇は、現代劇よりも現実から離れられる度合いが強いゆえ、想像力を自由奔放に駆使できる。また無声映画であることは、画面ですべてを語らねばならないという制約のため、逆に画面における表現を徹底的に深めることになる。この二つがあって、1920年代から30年代にかけてのサイレント時代劇群は日本映画の黄金期を築いたと思われるのである。」

・「そんな伊藤大輔の映画にとことん魅せられた後輩監督がいた。加藤泰である。そしてそんな加藤泰が心をこめて編んだのが『時代劇映画の詩と真実』である。」

・「本書は正確には『水のように夢のように 宮下順子』という本で、杉浦冨美子・山田宏一・山根貞男の編による。杉浦冨美子という女性が酒場で宮下順子と親しくなり、その意を受けて山田宏一とわたしが宮下順子にインタビューし、まとめたのだ。」

・「まず最初にわが『ロマン・ポルノ ベスト20』を記しておこう。かつて『キネマ旬報』のアンケートに応えて選んだもので、数年たってはいるが、いま選出しても、大きな変更はない(製作年度順。カッコ内は監督、主演女優、製作年度)。『団地妻・昼下がりの情事』(西村昭五郎・白川和子、1971年)『濡れた唇』(神代辰巳・会沢萌子、72年)『白い指の戯れ』(村川透・伊佐山ひろ子、72年)『一条さゆり・濡れた欲情』(神代辰巳・会沢萌子、72年)『㊙女郎責め地獄』(田中登・中川梨絵、73年)『濡れた荒野を走れ』(澤田幸弘・山科ゆり、73年)『四畳半襖の裏張り』(神代辰巳・宮下順子、73年)『四畳半襖の裏張り・しのび肌』(神代辰巳・宮下順子、74年)『㊙色情めす市場』(田中登・芹明香、74年)『生贄夫人』(小沼勝・谷ナオミ、74年)『実録阿部定』(田中登・宮下順子、75年)『わたしのSEX白書・絶頂度』(曾根中生・三井マリア、76年)『暴行切り裂きジャック』(長谷部安春・桂たまき、76年)『花芯の刺青・熟れた壺』(小沼勝・谷ナオミ、76年)『さすらいの恋人・眩暈』(小沼勝・小川恵、78年)『人妻集団暴行致死事件』(田中登・黒沢のり子、78年)『天使のはらわた・赤い教室』(曾根中生・水原ゆう紀、79年)『赫い髪の女』(神代辰巳・宮下順子、79年)『おんなの細道・濡れた海峡』(武田一成・山口美也子、80年)『妻たちの性体験・夫の眼の前で、今…』(小沼勝・風祭ゆき、80年)。」

・「歴代の名だたる美人スターは、かならず眼と歯の美しさが魅力のポイントになっている。」

(また明日へ続きます……)