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吉田喜重監督『戒厳令』

2013-09-16 04:50:00 | ノンジャンル
 吉田喜重監督、別役実脚本の'73年作品『戒厳令』をDVDで見ました。
 夏の土塀に背を向けて立つ男は、1から十まで数えると、短刀を持ち出し、老人に駆け寄り刺し殺します。夜、柩の中の弟を確認した姉は、男が老人が息をしていないのを確かめてから、カミソリで自分の首をかっ切って自殺したことを警察で聞くと、「そういえば何かやる前に十数えると落ち着けると、死んだ父から弟は教わっていた」と言います。日傘を差して帰る姉。
 一心に読経する北(三国連太郎)。妻から宮内庁の人が来ていると聞いて玄関に出た北は、以前法華経三巻きを寄贈されたので、その受領証をお持ちしたと言われますが、中身は白紙でした。呆然とする北。
 しばらくすると今度は、安田財閥の要人を殺した朝日平吾の姉が訪ねてきて、弟の遺言で遺品を皆先生のところへお持ちするように警察に言われたと言ってきます。男の文章は確かに北の文章を読んだ形跡が窺われましたが、北はそれは既に弟子の西田に譲った文章だと言います。
 路上で日章旗で叩かれ半殺しにされている男を見た北は、妻に家に連れ帰り介抱してやれと言います。北は三井財閥を訪れ、平吾が来ていた血染めの服を見せ、警戒されるように言い、礼をもらって帰ります。その帰り、北は弟子に会い、周囲が動き出して、憲兵隊も警戒し始めたので、身辺に気を付けるように助言されます。北は宮内庁が白紙を返した話をし、彼らも微笑みながら私の挑戦を受けることにしたらしいと言います。
 息子の大輝が虫を殺すのは、こわいことを憎むあなたのせいだと言われた北は、昨日天皇の夢を見たと言い、私が天皇だと言うと、自分の手首を剃刀で切ろうとし、自分で罰を与えようとしたのだと言います。大輝にも罰を与えてやらねばと言う北。
 北は大輝を散歩に誘い出し、自分の父も私も中国の革命家であって、革命家とは革命に耐えられる人間のことだと教えます。これが我々の世界だが、ちっとも正しくなく、正午に戒厳令が敷かれれば人々は秩序を見いだすころになるだろうとも語ります。一方、軍人の誓いを大声で叫ぶ兵士。
 その兵士は夕食を食べていると、急に妻に向かって、陛下がひどく危険なので、一命を投げ打って御奉公するつもりだと言います。青年将校らは情勢は緊迫し、数日後に我々は戒厳令の下、また会いまみえるとして血判を押します。兵士は妻の額の濡れタオルを替え、5日も経つのに何の命令も来ないのをいぶかり、軍曹の家へ出かけます。たまたま留守だった軍曹を2階で待った兵士は、北の日本改造法案を目にします。
 路上で乞食に出会った北は、もっと人通りの多いところでやれと助言しますが、乞食は陛下のお許しを持ってここにいると言い張り、自分たちは陛下の意思を拒むことはできないが、陛下は全てをご存じだと断言します。とんびの鳴く声。兵士に出会った北は、周囲に誰もいないのを確かめると、この塀の中の一室で海軍昇降7人陸軍将校5人民間人6人が内務大臣暗殺、新聞社占拠、発電所爆破による帝都暗黒化計画を練っている最中だと教えてやり、後は自分で考えて行動しろと言います。兵士は西田が首謀する秘密会談の場に入ることを許され、5月15日に発電所の爆破を命じられますが、結局行動を起こせません。兵士は情けなさから妻と北の許を訪ね、置いてもらうことになります。5・15に失敗した北は自分は読経に専念し、今後は思想で戦うのだと言います。そこへ西田が裏切り者として撃たれたという知らせが入り、北は見舞いに行きますが、そこにまだ西田を慕う青年将校らがいることを知ります。また自分の手首を切ろうとする北を見た妻は、北が自分との子供を作るのを怖れているのだろうと言い、次から自分が北を罰してあげると言います。読経に専念しはじめる妻。
 そんな中、2・26事件は起こり、新聞社は革命軍と呼び、北らは正義軍と呼びますが、やがて警備部隊に編入させられ、結局革命軍は帰陣を命じられ、将校らは逮捕されます。兵士と妻は北の家を去り、北は首謀者として憲兵隊に逮捕され、射殺されるのでした。

 極端な縦の構図など、ここでも画面構成の面白さが楽しめました。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto