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山田宏一『映画 果てしないベスト・テン』

2013-09-07 05:30:00 | ノンジャンル
 一昨日、東京の展覧会を3つはしごしてきました。1つ目が東京藝術大学大学美術館での「国宝 興福寺仏頭展」、二つ目が日本橋タカシマヤでの「安野光雅が描いた『御所の花展』」、3つ目が東京都現代美術館ででの「手塚治虫×石ノ森章太郎 マンガのちから」展でした。1つ目では白鳳時代に作成された巨大で穏やかな表情の銅造仏頭と、鎌倉時代に作られた木造十二神将の迫力に圧倒され、3つ目では手塚さんや石ノ森さんの精密な原画(特に手塚さんの字の綺麗さに驚きました)が見られたのですが、『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』、『サイボーグ009』などのテレビシリーズのオープニングタイトルが映写されていたので、『ビッグX』と『ワンダースリー』のオープニングタイトルも是非見せてほしかったと思いました。(ちなみに安野光雅さんの絵は期待外れでした。)

 また、'74年作品『海ゆかば』をWOWOWシネマで見ました。アメリカ海兵隊に依頼され太平洋戦争を撮ったジョン・フォードのフィルムを日本の会社が編集してできた映画です。真珠湾攻撃。銃後の兵士たち。大平洋の地元民。日本軍による空爆。反撃の開始としてのミッドウェイ海戦。爆撃機から艦船への機銃掃射。空中戦。4つの空母を失い、帰るところを失った日本の飛行機からの攻撃。消火。負傷兵と従軍牧師。輸送船への爆撃機の機銃掃射。陸の施設への爆撃。サイパン奪回の開始。空中戦。空爆。陸への機銃掃射。上陸作戦と陸上での戦闘。手榴弾と火炎放射機。累々たる日本人の死体。日本兵の捕虜。レイテ島攻略での空中戦。特攻攻撃を受けるアメリカの艦船。傷ついた爆撃機の空母への帰還。死者の水葬。そして北上する無数の艦船が映されて映画は終わります。爆撃機からの機銃掃射の映像は、現在テレビのニュースなどで見られる映像と大差ありませんでしたが、モクモクと煙を放つ空母の映像は見ごたえがありました。

 さて、山田宏一さんの'13年作品『映画 果てしないベスト・テン』を読みました。1985年に出版された淀川長治、蓮實重彦両氏との映画座談会「映画となると話はどこからでも始まる」(勁文社)に付け加えた「おすすめの映画百本」(百本には当然ながら収まらなかったのですが!)をさらにふくらませて、ガイドとエッセイをからめた映画読本のようなものを、という草思社編集部の木谷東男氏からの注文が企画のもとになってできた本です。内容は書き下ろしの文もいくつかありますが、多くは今まで様々な場所で山田さんが書いてこられた文章を再録してあるようでした。
 本文から引用させていただくと、「おもしろい映画を見ておもしろがる、あるいはつまらない映画を見てつまらながるというのは、映画ファンでなくてもできることだ。映画ファンは――真の映画ファンは――映画をおもしろく見なければならない、映画をおもしろくしなければならないという、すばらしい快楽的義務を負っているのである。『土曜日のジャズ 日曜日のシネマ』(松尾書房)の中山信一郎の口ぐせではないが、道楽とみなされるもけっこう、極道よばわりされるもけっこう。それは死に物狂いで道を解して楽しむこと、道を極めることだ。それは、たとえば、あの一杯の冷えたビールのうまさを味わうために死線を越えて灼熱の砂漠を敵中突破するJ・リー=トンプソン監督の戦争冒険映画『恐怖の砂』(1958)の特攻隊の心意気なのだ」ということで、山田さんがこうした心意気からベスト・テンとして挙げる映画の数はとてつもなく多く、ここで挙げられている映画を全て見ようと思ったら、とんでもない出費と時間がかかることになると感じ、絶望的になりました。
 特にショックだったのは、山田さんが2001年以降に選んだベストの映画32本のうち、私が見ていたのはたった3本だけだったということです。とりあえず、今後映画を見る指標として、この本を身近に置いておきたいと思った次第です。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto